デフレの市民権を復活させたNHK報道 - 政府のデフレ解禁のメッセージ

c0315619_1759655.jpg昨日(2/15)のNHKの7時のニュースを見ていると、10-12月のGDPがマイナスになったことがトップで伝えられていた。これまでのNHKの報道姿勢だと、株価が1000円以上値上がりして1万6000円台を回復したニュースに重点的に注目が当てられたものだ。株価下落の懸念を払拭する動きだとして、歓迎の口調で「朗報」を国民に知らしめ、アベノミクスの盤石ぶりを宣伝していた。ところが、今回はその種の大本営報道がなく、逆にGDP値における個人消費の落ち込みを強調し、日本経済の先行きの暗さを印象づけるニュースになっていた。夜7時のニュースでは、西友で販売する1着上下6000円の低価格スーツが紹介され、夜9時のNW9では、人気を集めている1皿200円の激安カレーをレポーターがワイドショー的に取材していた。驚かされたのは、その説明が積極的な意味づけだったことである。3年前にアベノミクスが始まって以来、広告塔の役目をずっと果たしてきたNHKは、とにかく市場マインドをインフレ方向に導引するべく、高いものが売れていると言い、消費が贅沢志向に変わったと言い、高いものを買えと視聴者に呼びかける報道に徹していた。安倍政権の経済政策に沿って、脱デフレにシフトした絵ばかり並べていた。



c0315619_17591874.jpg丸の内のイタリア料理店で1万円のコースが売れるようになったとか、輸入高級外車に注文が殺到して納車まで半年かかるとか、1万円の豪華な花見弁当だとか、大越健介と井上あさひが嬉しそうな顔をして、東京の株長者の優雅なバブル生活の断面を見せていた。アベノミクスが成功して、時間差でトリクルダウンが庶民や地方まで届きますからどうぞお楽しみにと、毎晩毎晩、アベノミクスへの期待と願望を視聴者に掻き立てて刷り込んでいた。インフレ誘導の旗振りをNHKがやっていた。今回の報道はそれとは正反対の方向づけのものだ。200円でもこんなに美味しいカレーだとNHKが推薦し、その会社の経営努力を積極評価すれば、当然、それじゃうちもやろうという動きが市場で起こる。トレンドになる。世間で日陰者にされていたデフレ系の商品と企業が、プラスイメージとなって市民権を得る。200円カレーの原価低減企業は、本来、アベノミクスの思想からは反体制企業である。NHKの報道は、デフレを容認し肯定する方向に政府が転換する姿勢を示したものだ。デフレ商品やデフレ系ライフスタイルの拡散は、2000年代を通じて民放の報道が繰り返しやっていたもので、貧乏になった日本人のニーズに応え、また精神的な満足と安定を与える情報提供だった。

c0315619_17592949.jpgアベノミクスが始まった3年前から、NHKはそうしたデフレ志向を根絶する経済教育の取り組みを懸命に続けてきた。だから、デフレビジネスは需要がありながらも社会でマイナスイメージの存在になっていた。節約は御法度だった。NHKが昨日(2/15)のようなデフレ志向と節約主義の映像を肯定的に見せたのは、きっと意味があって、おそらく1-3月のGDPもマイナスが決定的なのだ。個人消費がさらに落ち込み、10-12月期よりも悪化した数字が出るのが確実なのだろう。賃上げが難しい環境になることを先に告知し、企業が賃上げをしなくてもいい空気を作り出すことが思惑にある。大企業が下請け中小企業の単価を切り下げて窮状を凌ぐ数ヶ月先の想定があり、国民は生活防衛に励む心構えをしろとNHKがアナウンスしている。そうでなければ、200円の原価低減カレーをNHKが宣伝するなどあり得ない。これから円高になるから、海外から原材料を安く仕入れられるようになるから、デフレビジネスを全開せいと、そう政府がデフレ解禁のメッセージを発しているように聞こえる。だとすれば、政府・日銀は2%の物価上昇という政策目標をどうするのだろう。アベノミクスの看板をどうするのだろう。デフレ復活を告げるNHKのニュースは少なからず衝撃だった。

c0315619_17593960.jpg日経平均は、年初から1ヶ月半の間に3000円下落した。このペースで株価が落ちると、3月末に1万3000円になる。これは、3年前にアベノミクスが始まって、大越健介が1万円の花見弁当を宣伝していた当時の水準だ。さらに、そこから1ヶ月半後に3000円下がると、5月中旬に1万円の線を割るということになる。異端の浜規子が予測した驚愕の株価だが、現時点では、十分に説得力のあるエコノミクスの診断と言えるだろう。アベノミクス以前の民主党政権時代の線に戻る。アベノミクスのバブルが吹っ飛ぶ。今後6週間で株価が3000円下がるという見通しは、特に非常識なものとは思わない。中国バブルが崩壊し、原油バブルが崩壊した。世界の金融市場のバブルを増殖維持する二つの原動力が不全となり、他に新しいバブルを生成する根拠や要因がなく、金融市場全体がバブル崩壊に向かわざるを得ない。現在のNYSEの下落トレンド、すなわち金融市場の縮小の動きは、原油市場のバブル崩壊に伴ったもので、原油価格が元に戻らないかぎり、ダウンスロープを前に進み続けるだろう。米国では原油ビジネスで破綻が発生する可能性があり、ブラジルの国営企業が危ないという情報もある。欧州では低金利のために銀行が経営危機に陥る観測が強い。

c0315619_17595126.jpg東証で株を売買する7割が外国人投資家だから、当然、NYSEの値動きがそのまま東証に反映する。東証はNYSEのサブセットで、その意味でいえば、株安は確かに「海外要因」によるものだと言っても誤りではないだろう。だが、アベノミクスを政権の金看板にし、株価でアベノミクスを正当化する安倍晋三の手法は、株のバブルが崩壊すれば、そのまま正当性の根拠が失われる結果にならざるを得ない。(1)原油安、(2)中国経済の低迷、(3)FRBの金利政策の迷いとマイナス金利の可能性、これらは全てアベノミクスにとって深刻なリスク要因であり、円高株安へ引っ張る環境条件となる。黒田東彦の立場に立って考えたとき、有効な打つ手は特になく、GPIFやゆうちょや共済のクジラマネーを株にもっと追加投入してくれと安倍晋三に頼むぐらいしかない。安倍晋三の立場に立って考えたとき、何があるだろうと考えると、第一の矢の金融緩和はもう使えないから、第二の矢の財政出動でジタバタするしか思いつかない。株価対策にはならないが、マスコミ向け・世論向け・選挙向けに「経済対策」のポーズを見せる演出努力だ。NHKのGDPマイナスの報道を見ながら、これは政府が大型補正を組む前触れかなと想像していたら、果たして、今日(2/16)の朝日の2面に記事があった。

c0315619_180979.jpg記事を引用すると、「内閣支持率の生命線ともいえる経済運営を誤れば、一気に世論の反発を招きかねない。(略)首相の経済ブレーンをつとめる本田悦朗内閣官房参与は朝日新聞の取材に対し、『来年4月の消費税率10%再引き上げを凍結すべきだ。これこそ、最大の景気対策となる』と語った。当初予算案の成立後に追加の経済対策を求める声が高まる可能性もある」とある。おそらく、この記事は、本田悦朗か菅義偉が番記者に書かせたもので、官僚や議員や財界に読ませて要求リスト(事業と金額)を作成するよう示唆したものだ。公明党は選挙対策として乗るだろう。安倍晋三は3年間に3回の国政選挙に連勝してきた。2012年衆院選、2013年参院選、2014年衆院選、これらの選挙では常にアベノミクスの是非が争点になってきた。アベノミクスを争点にして選挙に勝ってきた。必勝パターン、勝利の方程式である。NHKの毎月の世論調査は、常に「ほかの内閣よりよさそう」、「経済政策を支持するから」の理由で高支持率を与え、国民のアベノミクスへの信認が途切れたことはなかった。政権は、秘密保護法の制定やら、集団的自衛権の憲法解釈変更の閣議決定やら、安保法の強行採決やら、きわどい暴政を続けてきたが、アベノミクスへの国民の支持がそれを帳消しにしてきた。

去年、中国ショックがあった夏の一時期を除いて、NYSEの株価はずっと1万8000ドルの線で推移してきたが、それが、年初からの原油安の影響を受けて下降カーブを描いている。NYSEが簡単に1万8000ドルの線に戻るとは思えない。そのまま下降を続けるだろう。そして、何らかのショック(事件)を惹き起こして、8年前のような激動が始まるだろう。


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by yoniumuhibi | 2016-02-16 23:30 | Comments(1)
Commented at 2016-02-16 22:27 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。


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