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甘利明の辞任と内閣支持率の関係の一考察 - ボディブローのように効く

甘利明の辞任と内閣支持率の関係の一考察 - ボディブローのように効く_c0315619_17403853.jpg安倍晋三の支持率が上がり、マスコミ各社の調査で50%を超える数字が出ていることについて、一部から、大きな衝撃を受けたというような感想が出ている。私の場合は、昨年から、年明けには50%を超えると予想を述べていたので、そのとおりに事態が進行しているだけで、何も驚くには当たらない。報ステの古館伊知郎、NEWS23の岸井成格、クロ現の国谷裕子の3人が降板させられるだろうという予想も、昨年9月には論じていた。そのとおりになった。的中した。支持率の問題については、共同のグラフ資料を見て欲しい。2013年1月から3年間の支持率の推移が出ているが、このように安倍内閣の支持率はずっと50%超の水準で続いていて、例外的に2015年の6月から9月までが低い谷間なのである。この事実は、毎日のグラフ図でも確認することができる。左翼リベラルは、昨年夏からの半年間の政治経験が強く脳裏に残っていて、その政治空間での言説と思考が固定観念化しているため、安倍内閣の支持率が50%を超える状況を異常だと意識してしまう。私の見方を言えば、この支持率は元に戻っただけなのだ。原状に復したということだ。つまり、逆に言えば、昨年6月から9月まで、反安倍の勢力がよく奮闘して安倍晋三を追い詰めていたということになる。



甘利明の辞任と内閣支持率の関係の一考察 - ボディブローのように効く_c0315619_17434222.jpg異常だと言うのなら、物価が上がり、負担が増え、国民生活がどんどん窮乏化しているのに、さらにそんな中で、秘密保護法を強行採決したり、集団的自衛権の行使容認の閣議決定をしたり、暴挙に次ぐ暴挙を重ねた安倍晋三が、2013年から2014年にかけて、ずっと50%の高い支持率のまま推移していたことが不思議なことだと言わなくてはならないだろう。昨年の安保法制のとき、ようやくわれわれは支持率の谷間を作ることができ、一瞬だったが、30%に落ち込ませる局面を現出させたのである。今はリバウンドの時期なのだ。「支持率が上昇している」という単線的で近視眼的な捉え方は正しくない。支持率について言えば、小泉政権のときも同じような現象と過程があった。構造改革の名の新自由主義政策の遂行により、格差が開き、負担が増え、国民の大半は生活が苦しくなり、地域経済が目に見えて疲弊しているのに、何年も何年も小泉人気が続いて支持率は高止まりのままだった。一般に日本の政治では、保守のタカ派が政権に就いたとき、高い人気の長期政権となるパターンがある。中曽根政権と小泉政権がそうだ。右翼でネオリベの政権となると、左翼リベラルにとっては憎悪の感情が入る仇敵であるため、高い支持率が異常に映り、理解しがたく受け入れがたいのである。

甘利明の辞任と内閣支持率の関係の一考察 - ボディブローのように効く_c0315619_17435356.jpg今、甘利明の辞任が支持率に何も影響をもたらさなかったという、そういう言説が横行し、左翼リベラルもそれに頷いている。私の分析は少し異なる。今回の内閣支持率の数字には、甘利明の口利き問題は特に大きく作用していない。電撃辞任と世論調査が同時であり、テレビで問題が全く議論されておらず、安倍晋三がこの問題の対処で何か立ち回りをしたということもない。甘利明の口利き疑惑の事件は、週刊文春の記事から辞任までが一週間の電光石火で、どういう問題なのか国民が中身を知る前に辞任が訪れ、そのタイミングに合わせて世論調査が行われた。本来なら、甘利明が辞めずに粘り抜き、予算委の集中審議で火だるまになり、安倍晋三が答弁で妄言を連発し、マスコミが騒ぐ。野党が予算案の日程を人質に取り、辞任やむなしの空気が与党内に流れ、そこで世論調査が打たれて支持率低下となる、というのが通常の進行だ。今回は、その不都合な進行を阻止すべく、甘利明が先制して辞任発表の挙に出、内閣支持率低下の流れを堰き止めた。だから、結果的に、この問題が支持率に影響がなかったかのような表象が成立している。それは、一面では、甘利明・安倍晋三の電撃作戦の奏功と言えるだろう。だが、問題の追及はこれからで、野党が真相解明に乗り出すのはこれからである。

甘利明の辞任と内閣支持率の関係の一考察 - ボディブローのように効く_c0315619_1744373.jpg一色武も未だ顔を表に出しておらず、雲隠れした秘書の証言も取られていない。どこかで一色武と清島健一がカメラのライトを浴びるだろうということは、誰もが予想する図で、そうなればこの疑惑事件は第二幕を迎え、国民の注目と関心はさらに高まる。甘利明の辞任会見での釈明も、真っ赤なウソだったことが判明する。昨夜(2/1)の報ステを見ていると、岩井奉信が登場し、甘利事務所によるURへの圧力はあっせん利得処罰法の適用が可能だと言い出した。先週より、テレビに出る度に、「ハードルは高い、立件は困難、前例がない」と言い続け、諦めろと幕引きのプロパガンダをしてきた岩井奉信が、態度を豹変させ、処罰法の適用可を言い始めた。これまで無理だと一蹴してきたのに、どうして急に可能だという判断に変わったのか、その理由説明は何もされていない。学者の風上にも置けない無節操で出鱈目な男だ。だが、政治的な意味としては、国民にとってこの一事は朗報で、検察の今後の動きに期待を持たせる展開となった。現時点で言えば、甘利事務所の家宅捜索と秘書の立件逮捕はかなり可能性が高まったと言える。昨日(2/1)公開されて報道されたところの、秘書とURとの間のやり取りの報告は、誰が見ても口利きの現場の記録で、有力政治家が業者の利益のために独行(公団)に圧力をかけていた事実の証拠だ。

甘利明の辞任と内閣支持率の関係の一考察 - ボディブローのように効く_c0315619_17442748.jpg東京地検が、URに続いて秘書を事情聴取するのは確実で、おそらく、逮捕(あっせん収賄容疑)も同時だろう。国会に目を転じれば、国交大臣は公明党の石井啓一である。「政治とカネ」とは無縁の、潔癖でクリーンな党が売りの公明党の大臣は、質疑に立つ野党にとっては攻略しやすい相手だ。ズバリ、直球で質問すればいいのだ。甘利明に法的責任はあるのかないのかと。あっせん利得処罰法の制定に最も深く関わったのは公明党で、郷原信郎が紹介していたとおり、法案上程時の逐条解説を漆原良夫(弁護士)が担当している。言わば、この法律の製造責任者であり、法律の趣旨と目的は他の誰より心得ていて、解釈についてもオーソリティの立場にあると言える。立法趣旨というタームは、昨年6月に憲法学者が何度もテレビで語ったところで、国民もよく教育されて言葉の意味を掴んでいる。野党の議員は、あっせん利得処罰法がどうして制定されたのか、立法趣旨はどう法案提出者から説明されたのか、ぜひ委員会審議の中継時に国民の前でおさらいをして欲しい。法律論をやって欲しい。URが薩摩興業に支払った2億2千万円は、補償金の相場として常軌を逸した法外な額だと批判されている。石井啓一と官僚(局長)がどう言い逃げるか興味深いが、官僚は、URの2億2000万円の見積根拠と契約の決定過程について答弁できないだろう。

甘利明の辞任と内閣支持率の関係の一考察 - ボディブローのように効く_c0315619_17443899.jpg野党に国会戦略として提案したいのは、この件の追及で、安倍晋三と石井啓一の間で閣内不一致を起こさせることだ。あっせん利得処罰法の解釈と甘利口利き問題の事件認識において、二人の間で意見不一致を起こさせる図は簡単に導けるように思われる。安倍晋三は、1/27の参院代表質問での答弁において、疑惑の渦中にある甘利明を続投させると表明した。辞任の前日の発言である。辞任の会見において、甘利明は50万円x2の現金授受を認め、一色武が大和の事務所で50万円を渡す際、URとの産廃トラブルの相談に来て資料を説明していた経緯も認めた。これらについて安倍晋三は甘利明から説明を聞き、事実関係を承知した上で、1/27の続投発言に踏み切っていたのだろうか。すなわち、当然、1/27に続投発言を行った安倍晋三の判断が問題になるのであり、問い質して釈明させなくてはいけない。1/28の辞任会見の説明があった後も、今でも本人辞任の必要はなく、続投するべきだったと考えているのだろうか。こうして質疑応答を詰めてゆけば、おのずと安倍晋三のあっせん利得処罰法への認識と立場が明らかになるはずで、石井啓一のそれとの相違がくっきり際立つ構図が浮かび上がるだろう。安倍晋三にも尋ねればいい。甘利明の行為は処罰法に抵触するのかしないのかと。石井啓一の初当選は1993年で、公明党が野党だった時代に議員期間が6年ほどある。

甘利明の辞任と内閣支持率の関係の一考察 - ボディブローのように効く_c0315619_17444939.jpg当時の議事録を精査すれば、石井啓一が閣僚の疑惑を委員会で追及した発言が見つかるだろうし、演説や集会で「政治とカネ」について正論を語った証拠も掘り出せるだろう。あっせん利得処罰法の制定において本人が関与していれば、きわめて重要な国会攻勢の武器になり得る。さて、最初の内閣支持率の問題に戻って、私の率直な見解を述べると、甘利明が辞任したことは、安倍政権にとって決して小さな衝撃ではないと考える。つまり、巧妙に今回の世論調査は打撃を回避したが、安倍政権の支持率において、甘利明の存在は決して小さなものではなく、この損失はボディブローのように効いてくるものだ。だから、世論調査の結果に落胆している左翼リベラルには、それほど深刻に悲観視する必要はないと慰めを言いたい。安倍内閣の閣僚の中で、最も信頼感と安定感が高く、政策通の印象を一般に与えていたのが甘利明だった。麻生太郎や菅義偉と比較すれば一目瞭然。コアの支持層である右翼を超えて、無党派保守やエリート層に説得力を浸透させていたのが、甘利明の経済政策とその言葉だった。TPP交渉で果たした役割も非常に大きい。口利き疑惑が発覚したとき、関口宏が「まさかこの人がと思った」と言ったが、その感想は言い得ていて納得できる。片腕の甘利明を失ったことは、安倍政権の求心力を損なう痛手で、特に霞ヶ関の官僚や財界の面々はそう憂慮しているだろう。代わる人間がいない。

少し長い目で見れば、甘利明の辞任・離脱は、間違いなく安倍晋三の支持率を下げる方向に響いてくる。今回の支持率の報道に一喜一憂する必要はない。何より、もし安倍晋三の支持率を落としたいと望むなら、受け皿を作らなくてはいけないというのが基本ではないか。受け皿がないから、参院選が近づくほどに、無党派が自民に流れ、安倍政権の支持率が自然に上がるのである。受け皿を作れば、その瞬間、安倍内閣の支持率は落ちる。


甘利明の辞任と内閣支持率の関係の一考察 - ボディブローのように効く_c0315619_1745471.jpg

by yoniumuhibi | 2016-02-02 23:30 | Comments(2)
Commented by 愛知 at 2016-02-03 00:29 x
2月1日、東京で「後藤健二さんを忘れない」という集いがあったと知りました。それ自体は政権批判という意味において何ら問題はないのですが。多くのリベラルがSNSで賞賛されておられました。ところで後藤健二さんと協力関係(協力会社)だった湯川遥菜さんの記憶はどうなったのでしょう。貴下ご提案の市民連合まで野党勝利へのオブストラクションだと仰る方々は、すっかり湯川遥菜さんのことは、お忘れなのでしょうか。イラク人質事件での高遠菜穂子さんへのバッシングが思い起こされます。

伊勢﨑賢治という方は、1月末、札幌で、加藤朗桜美林大教授、柳澤協二氏と自衛隊を活かす会を開かれ。その後、安保法制廃止のための野党共闘の集いに参加されたに参加、SEALEsに続いて演説をされたそうです。現政権への感情的な反論は、おかしいと説かれ。

先日、NHK徳島制作の九軍神に孫がおられたという番組を見ました。独身であったはずの軍神に実の32歳の孫娘さんがおられたという内容に驚かされました。番組はdailymotionにアップされています。木口小平を今もなお崇めるSNSよりもNHKローカルの方がまともだと思います。生意気な物言いをお詫びいたします。間もなく戦争法は施行を迎えます。昨夜、戦争など何年も先の話だとSEALEsフリークのアカデミーの方からSNSで注意を賜り、悶絶。甘利問題は最後のカードだと思います。貴下ご教授のアップに感謝申し上げます。
Commented by 長坂 at 2016-02-03 11:55 x
強い倫理観や正義感に裏打ちされない甘利は、まさに日本版「職業としての政治家」のロールモデル。一色側が文春に持ち込まなければ、何食わぬ顔でTPPの署名式に出席、功労者づらするわけだ。全員で口裏合わせ黙っていればいい。業者も役人も政治家も良心というものを持ち合わせず、税金だから、1千万が2億になっても痛くも痒くもない。URが提出した黒塗りの書類やバカにした答弁。ふざけやがってとしか言いようがない。で、今度は法務省。「(資金提供後)たった17日くらいで(ビザ)がでた」だって。ビザが更新されず、親子で離れ離れになったり、強制送還されたりしているのに。数日前の朝日にあったが、規模や額は違うがいまだ日常茶飯事。私大の入学や就職の斡旋は政治家の大事なお仕事。今回立件されなかったら、本当に「(日本の)民主主義ってこれだぁ」、中国共産党だって、汚職議員や役人は粛清だぁ。


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