甘利明を東京地検に刑事告発を、野党は秘書の国会参考人招致を

c0315619_15403570.jpg甘利明の会見を聞いて、強い違和感を覚えさせられたのは、50万円の現金授受の場面をよく覚えていて、リアルに記者団の前で語ったことだった。例えば、「内ポケットにしまうはずがない。本当だとしたら政治家以前に人間としての品格を疑われる。そんなことはするはずがない」と断言している。それから、「紙袋を手渡されたと記憶している」と言い、「大きい袋で重かった」とも言っていて、中にのし袋が入っていることも確認した上で、「適正に処理しとけと指示した」と言っている。記憶がきわめて鮮明だ。1/21以降の記者会見や国会質疑では、現金授受を否定しないまま、「記憶を整理している」とか「記憶が曖昧」などと釈明していた。つまり、ウソをついていたということだ。この点、昨夜(1/28)のテレビ報道や今日(1/29)の新聞記事では言及がなく、その異同をポイントとして衝いてないので、要点として指摘しておきたい。本当は、昨日の会見の席で、その場で気づいた記者が機転をきかせて詰問すべきだった。甘利明はもう閣僚ではないので、予算委の審議の場で野党から追及を受ける機会がない。一週間、ずっとウソをついて国民を欺いていたことを、NHKの生中継で本人に質すことができない。急に記憶が鮮明になるのはおかしいじゃないかと、甘利明の面前で誰かが痛言するべきで、甘利明の弁解を取るべきだった。



c0315619_16203823.jpgそれと、もう一点の素朴な感想として、地元の事務所長である公設第一秘書が、支援者から受領した300万円を、そのまま机の中に入れ、さらに勝手に費消するなどということは、常識で考えてあり得ないことだ。二回にわたる週刊文春の暴露で、この39歳の清島健一は、フィリピンパブ漬けの行状などタカリ中毒になっている人物像が克明に描かれているため、その軽薄な印象が先行していて、300万円のネコババの説明もさもありなんと納得してしまう。だが、公設第一秘書で地元事務所長という立場は、その政治家の側近中の側近を意味し、政治の世界ではいわゆる金庫番と呼ばれる腹心の存在だ。一心同体の片腕である。一色武から受け取った現金500万円のうち、200万円を事務所金庫に入れ、収支報告書に記載する正規の政治資金収入として計上、300万円を裏金としたのは、当然、本人の判断ではなく、甘利明の指示に従った行動で、甘利明が私的に使う裏金になったものだ。300万円もの大金を、秘書が無断で着服などできるはずがない。常識で考えれば当たり前に浮かぶ疑問を、テレビの論者は誰も言わない。会見の席で、普通に考えたら金庫番の秘書が300万円費消なんておかしいじゃないかと、甘利明に疑問をぶつける記者が必要だった。

c0315619_16205197.jpg甘利明が、これは元地検特捜部の弁護士が第三者として調査した結果だと反論すれば、じゃあ、その弁護士とは誰なんだと追い打ちをかければよかった。こういう応酬の展開になれば、他の政治家に較べて比較的面の皮が薄く、世間の常識に弱い甘利明は、質問に窮してさらに墓穴を掘る発言に導かれただろう。昨夕の会見の時間は長かったが、急所を衝く質疑は少なく、特にURへの口利きの疑惑について、夜のテレビ報道で突っ込んだ議論がされなかった点が不満に残る。例えば、URから薩摩興業に2億2000万円の補償金が支払われたのは、当時の秘書とURの職員が最初に面談した2か月後の2013年8月のことだ。一色武と甘利事務所の関係が良好だった頃のことだが、明らかに口利きであることが分かるし、甘利事務所の働きかけでURが動いたことが分かる。昨夜(1/28)のテレビ報道は、時系列でその事実を説明しないといけなかった。それから、2回目の50万円の授受のとき、これは2014年2月の大和事務所でのことだが、この場で甘利明は一色武が持参した関係資料を読み込み、産廃トラブルの状況を理解し、対応を措置すべく東京の秘書に資料を送るよう指示している。この件について、甘利明は会見の場で特に否定はしていなかった。まさに口利きの現場だ。

c0315619_16282386.jpgあっせん収賄罪の要件を構成する事実である。請託であり、斡旋である。この2014年2月の大和事務所でのやり取りについて、会見場の記者は突っ込んで掘り下げるべきだったし、テレビ報道の論者はクローズアップすべきだった。現時点で、甘利明は、一連の行為は法的責任が問われるものではないと認識し、そう主張している。また、テレビ報道の論者や専門家も、新聞の論説も、多くが、法的責任は全くないとか、容疑は問われないとか、立件にはハードルが高いとか言っている。「政治とカネ」で法的にも責任を免れないと言っているのは、落合洋司と郷原信郎くらいのものだ。落合洋司は、特捜部が捜査に動くだろうと予測を述べていた。私は、法的責任がないという説明が全く理解できない。あっせん利得処罰法は、まさにこうした犯罪を取り締まるための法律ではないか。第1条を引用しよう。「衆議院議員、参議院議員又は地方公共団体の議会の議員もしくは長が、国もしくは地方公共団体が締結する売買、貸借、請負その他の契約又は特定の者に対する行政庁の処分に関し、請託を受けて、その権限に基づく影響力を行使して公務員にその職務上の行為をさせるように、又はさせないようにあっせんをすること又はしたことにつき、その報酬として財産上の利益を収受したときは、三年以下の懲役に処する」。

c0315619_1636382.jpgこの条文の「衆議院議員、参議院議員又は地方公共団体の議会の議員もしくは長」を甘利明に置き換え、「特定の者」を薩摩興業に置き換え、「行政庁」をURに置き換えれば、まさにピタッと事実が当て嵌まり、構成要件が完璧に充当されるではないか。甘利明の行為について、あっせん収賄ではないとか、法的責任はないとか、立件のハードルが高いと言っている者の理性と良識を疑うし、その発言(暴言)は、あっせん利得処罰法を頭から否定した言い分だ。詭弁と言う以前の、安倍晋三による集団的自衛権行使容認の憲法解釈と同じ、法を法として認めず、勝手に私物化し空文化して開き直る論法である。石川健治はこうした態度を「非立憲」と呼んで批判したが、まさにそれと同じ構図の法律の否定と歪曲がまかり通っている。一部に、甘利明は閣僚だが、URを所管する国交大臣ではなく、経済再生担当大臣だったのだから、職務権限がなく、したがってあっせん行為の要件に該当しないなどという言説がある。陳腐な詭弁だ。笑止としか言いようがない。甘利明は安倍内閣の重要閣僚で、安倍晋三の側近であり、外様の国交大臣(公明党)などよりもはるかに強い権限を持ち、官僚を動かす権力を持っている。だからこそ、URとの産廃トラブルの補償金解決を急いだ薩摩興業は、国交大臣ではなく甘利明を頼ったのだ。

c0315619_16431279.jpg法律を事件に正しく適用するか、それともザル法にして死文化するかは、法律を運用する主体の倫理と態度によるのであり、どれほど条文の文言を精密に改正しても、ザル法にしようと詭弁を細工すればそれは可能となる。法律には目的と趣旨がある。この法律(刑事法)を運用するのは、東京地検特捜部であり、特捜部が正しく問題の中身を判断し、法律の目的を達成すべく捜査に着手しないといけない。そしてまた、市民団体は特捜部を動かすべく、甘利明と甘利事務所を地検に刑事告発しなくてはいけない。郷原信郎は、「絵に描いたようなあっせん利得」行為だと言っている。国民のほとんどが同じ見解だろう。これがあっせん利得処罰法に問われず、立件もされないとしたら、この国は法治国家でもなく民主主義の国でもない。あっせん利得という概念がなくなり、それが悪だという社会の基本認識が破壊される。野党は甘利事務所の秘書2人を国会に参考人招致しないといけない。清島健一は公設第一秘書で、鈴木陵充は政策秘書である。2人とも税金から給料が出ている身だ。何があったのか、国会で明らかにする必要があるだろう。秘書2名については、甘利事務所から切られた身であり、言わば只の人に落ちた人間だ。口封じの対策はされているだろうが、これから週刊誌の怒濤の取材攻勢がかかるだろう。

c0315619_16422647.jpg国民は秘書2名の話を直接聞きたいし、一色武の話を聞きたい。例えば、URから2億2000万円の補償金が出れば、その1割から2割は口利き料に払うほど、公共土木事業や産廃処理系の経費の請求や見積りは杜撰なのかとか、政治家というのはそれほど日常茶飯事に土建屋の口利きに絡んでいるのかとか、そういう内情も知りたいし、フィリピンパブでの酒池肉林や銀座のホステスとの関係とかといった、週刊大衆やアサヒ芸能のネタになる真相も知りたい。そもそも、順風だった薩摩興業と甘利事務所との関係が、どこからこのようにこじれて反目する関係になったのか、カネの問題なのか、一色武が甘利明に何か怨恨を持っていたのか、そのあたりの事件の背景と全体像も知りたい。野党は、衆院の予算委で問題を徹底追及するべきで、URと薩摩興業とのトラブルの真相を洗い出し、生中継が入る集中審議で国交相と住宅局長を答弁で追い詰め、その中で新事実を暴露して政府を立ち往生させないといけない。2人の秘書と一色武の参考人招致を理事懇で要求し、テレビ中継を入れた参考人質疑を実現させないといけない。週刊文春は、まだまだ大量の証拠を持っていて、出してない真相情報を握っている。世間の関心が高まって、さらに売れるとなれば、第3弾、第4弾と続けるだろう。カネの問題は生活苦に喘ぐ庶民の琴線に触れる問題だ。

秘書を捕捉して釈明をスクープすること、これは文春以外の週刊誌にお願いしたい。衆院予算委で爆弾を投下すること、これは野党がやらないといけない。それにしても、あのTPP交渉で多忙きわまる身だったはずの甘利明が、日常的に、こんな口利きをやっていたとは本当に驚きだ。


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by yoniumuhibi | 2016-01-29 23:30 | Comments(0)


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