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左右二つに路線が割れた野党共闘 - SEALDsほかの「新市民団体」の暗雲

左右二つに路線が割れた野党共闘 - SEALDsほかの「新市民団体」の暗雲_c0315619_16321857.jpg参院選に向けての野党の動きが活発で、ネットの中でもとても関心が高い。選挙は半年以上先だが、もう議席予想が週刊誌に出てもおかしくないほど、人々の政治の関心は来年7月の参院選に向けられている。現時点での私の予想を言うと、やはり、安倍晋三の圧勝に終わるだろうと言わざるを得ない。その理由は、自民党に勝てる対抗勢力がないからで、半年後もその現状に変化がないと思われるからである。9月の安保法の強行採決の後、安倍内閣の支持率は着実に上がり、毎日が12/7に発表した調査結果では、前回(10月)より4ポイント増の43%に回復している。前々回は35%だった。調査の度に4ポイントずつ上がっている。日経が11/29に発表した調査結果では、支持率は前回(10月)より8ポイントも上昇して49%になった。新年には50%を超えるだろう。今年前半の安保法の政局を通じて落ちていた支持率は元に戻り、昨年並みの安定水準に戻った。ということは、昨年12月の衆院選のときと同じ環境条件を得たということであり、選挙をやれば同じ結果に導かれる蓋然性が高い。争点が曖昧となり、投票率が低くなり、論戦が散漫となり、自民が圧勝となる選挙である。2013年の参院選、2014年の衆院選と繰り返されたところの、安倍晋三の勝ちパターンが再現されてしまう。



左右二つに路線が割れた野党共闘 - SEALDsほかの「新市民団体」の暗雲_c0315619_16323219.jpgわれわれは、どうやら受け皿を作れず、安倍晋三が負ける争点と構図を作ることができない。12/9、野党とSEALDsなど5団体が会合し、来年の参院選に向けての協議がされ、安保法廃止に向けて野党の共闘を求めるともに、5団体が一つの市民団体を作って選挙運動をスタートさせることが発表された。5団体とは、(1)SEALDs、(2)ママの会、(3)学者の会、(4)総がかり、(4)立憲デモクラシーの会。会合は10月に立ち上がってこれが3回目。中野晃一が記者会見をやっていて、おそらく新しい市民団体の幹事に就くのだろう。12/20に新団体発足の正式発表がある。早速、その新団体の方針が示されていて、①安全保障関連法の廃止、②集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回など立憲主義の回復、③個人の尊厳を擁護する政治の実現、の3点が並べられている。左翼リベラルの政策要綱だ。この3点のマニフェストで政策一致できる候補を、特に参院選の地方の1人区で擁立し、自民の現職を落選させようというのが新団体の狙いである。SEALDsは、強行採決の2日前に、次は落選運動をすると会見で言っていたが、こういう形で現実の動きになった。予定どおりの進行だ。だが、彼らにとって予定どおりでなかったのは、11/22の大阪ダブル選の敗北であり、順調に勝っていれば12/20のキックオフも気勢が上がっただろう。

左右二つに路線が割れた野党共闘 - SEALDsほかの「新市民団体」の暗雲_c0315619_16324459.jpgこの市民団体の方式で、果たして参院選で安倍晋三を敗北に導くことができるだろうか。難しいと思われる理由は三点ある。第一点は、橋下維新が復活を遂げたことだ。12/9、松野頼久のインタビューが毎日の記事に載っていたが、共産以外の野党で新党を結成したいと言っている。共産を除いたところの、民主、松野維新、大阪維新、生活、社民を束ねて一つの統一会派を作り、それを新党にして参院選を戦いたいという意向の表明だ。驚くことに、あれほど衆目の前で醜い泥仕合の大喧嘩を演じ、「叩き潰してやる」などと罵倒された橋下徹に対して、「今でも橋下さんという政治家は大好きだ」などと媚を売り、ラブコールを送っている。脱力させられる妄言だが、本人は大真面目なのだろう。これは、前原誠司・長島昭久の路線でもある。もし、11月のダブル選で橋下維新が負けていれば、こんな展開にはならなかっただろうが、橋下徹が自共連合(オール大阪)を破り、中央政界に復帰して参院選の有力なプレイヤーの一つになる展望が明確になっため、俄然、民主右派に元気が出て盛り返す情勢となった。共産排除の路線である。今、野党共闘と野党再編は、前原・松野・橋下の右向きの方向と共産党・SEALDsの左向きの方向と、二つの間で衝突と葛藤が起きている。生活の小沢一郎は両天秤で、社民の吉田忠智も両睨みで様子を窺っている。

左右二つに路線が割れた野党共闘 - SEALDsほかの「新市民団体」の暗雲_c0315619_16325439.jpg前にも書いたが、生活と社民は党存亡の縁にあり、単独で選挙戦に臨んだ場合、比例で1議席も取れずに党壊滅に至る危機に直面していて、野党再編に絡んで生き残りを賭けざるを得ない事情がある。社民は、右(前原・橋下)の再編への吸収でも基本的にOKで、最左派でしみつく覚悟も腹の中にあるのだろう。新年になり、参院選が近づくほどに、野党共闘をめぐる右と左の路線対立は鮮明になるが、どちらかが負けてどちらかに吸収されるということはない。そう予想する。民主の全体が左(共産党・SEALDs)の方向に寄り、右派を追い出すという図はないだろう。なぜなら、民主の支持母体の連合の主流派が反共の元同盟系だからで、右派が党から出るときは、民主が分裂し連合も分裂するときだからだ。元同盟系は、共産を除く全野党で一つに纏まる松野頼久の案に賛成するに違いない。今後、橋下徹が野党政局の最も右側に一つの磁極を作り、そこに民主右派を引き寄せる動きが起こる。右から順に、安倍自民、橋下維新、岡田民主、SEALDs共産という四つの磁極の運動が鬩ぎ合い、接触する勢力を引き寄せて自己拡大しようとする動きになる。橋下維新という磁極ができたことは、9月までのSEALDs共産にとっては誤算だった。11月の大阪秋の陣の敗北の結果、そうなった。SEALDs共産は相対的に小さな存在となり、マスコミの注目度が低くなる状況となった。

左右二つに路線が割れた野党共闘 - SEALDsほかの「新市民団体」の暗雲_c0315619_1633854.jpg第二点は、そのSEALDsの威光が低下している問題がある。このことは、左翼リベラルの中では今のところ明確な共通認識になっていない。ネットの政治空間を見ても、シンボルとしてのSEALDsへの帰依が衰弱したとは言いがたい。だが、大阪W選の惨敗の躓きは大きく、ショックが尾を引いていることは歴然だ。SEALDsの誰かのTwの、「言うこと聞かせる番だ、俺たちが」という言い草が、夏の間は自然に耳に入っていたものが、今は、何となく上から目線に感じられるのは私だけではないだろう。政治運動を始めてまだ2年ほどの素人の学生が、そして半年後には解散を決めている学生の政治団体が、政党に向かってこのような傲慢な物言いをし、政党の幹部がハイハイと卑屈に頷いているのは奇妙に思えてしかたがない。9月の強行採決から11月の大阪W選まで2か月だった。果たして、これから2か月経ち、4か月経ち、6か月経ったとき、あの学生たちは、政党の前で「俺たちの言うことを聞け」と尊大に命令をすることができるだろうか。神聖無謬のシンボルの威力を保持し、説得力を貫徹できるだろうか。関連して、反安倍・反安保の政治主張が、半年後の有権者にどれほど切実なものとして迫り、安保法廃止なくば生きていけないというほどの焦眉の課題として意識されているだろうかという問題がある。前回、流行語大賞で澤地久枝とSEALDsが受賞した件を批判的に論評した。

左右二つに路線が割れた野党共闘 - SEALDsほかの「新市民団体」の暗雲_c0315619_16332015.jpgあの儀式は、日本という国民共同体と時間(断念と新生)という問題を考えたとき、意味の大きさを無視できない。要するに、あのお笑いイベントに澤地久枝が出席して「アベ政治を許さない」のプラカードを掲げたとき、その政治的主張はエッジの効いた政治性を喪失し、お笑いのカテゴリーのバスケットに入り、2015年の芸能娯楽の国民的記憶として消費され回収されたのである。安保法に賛成反対といろいろ揉めて揺れたけれど、同じ日本人として年の納めに一つになって、対立は水に流して新年を迎えましょうと、人々をそういう思考と気分に向かわせるセレモニーだった。お笑い範疇に加工処理された言葉や存在が、果たして、来年半ばの選挙で人々を一つの方向に牽引していくシンボルとして機能するだろうか。最優先のイシューになるだろうか。12月のマスコミの世論調査には出てなかったが、9月の強行採決の後、10月、11月の世論調査では、不気味なことに、安保法を支持する世論が増え続けていて、国民が安保法を既成事実として認める空気に流れている傾向が察知された。安保法反対は、少しずつ少しずつ、時間の経過とともにエッジの効きを失い、国民的な政治意思から左翼勢力の政治意思へと表象を変化させつつある。SEALDsは、電通の情報工作により「2015年の思い出」となった。過去のものになった。そのシンボル価値の減価償却は、共産党が見込んでいたよりも急速だ。

第三点として、そもそも今の国民は、永田町の既成政党から完全に心が離れている。永田町の既成政党が合従連衡しても、分裂合体して新党を作っても、国民はそれに期待を寄せない。そんなニュースには強い関心を向けない。だからこそ、私は夏の政治戦のときに立憲党という新党を提案し、憲法学者だけで幹部を構成する新党の発起を構想した。永田町の外にいる魅力的なリーダーが出なければ、立ち上げる新党は絶対に成功しない。SEALDsら「新市民団体」の戦略は、結局のところ、左派の政策方向で既存の野党を束ねようとするもので、既成政党を前提としたものである。共産党中心に野党を再編する動きだ。国民の中で、この動きに共鳴する部分は限られるだろう。政治を変えるインパクトにはならない。


左右二つに路線が割れた野党共闘 - SEALDsほかの「新市民団体」の暗雲_c0315619_16333439.jpg

by yoniumuhibi | 2015-12-12 23:30 | Comments(6)
Commented at 2015-12-12 19:34 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by マリモフィズ at 2015-12-13 00:11 x
左翼リベラルが期待する無党派層は、おそらく寝るでしょう
Commented by マリモフィズ at 2015-12-13 10:50 x
連投失礼します。。やはり左派の劣化は70年代の大学における学生の暴動が端緒と思います。
あれで大学はレジャー施設と化し、更に当時と違い首相や知事の右翼化が彼ら左翼のフラストレーションを高め、知性なきイライラをぶちまけるという状態まで達したと。。

昔は良かったと言うと一部のリベラルさんから怒られちゃうけど、あの時代は栄作の口から改憲はしないと言わせることができたし、その後は角栄や三木といった愛情ある格差是正、平和的な宰相が生まれたし、あの福田も中国との友好を考えたし、更に美濃部さんが12年間も都政を率いたのが東京の人たちにとって幸せだった。山形市も心ある市長を選び続けられた。
Commented at 2015-12-13 21:41 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 山本山 at 2015-12-14 23:58 x
僕は保守で、憲法改正・安保法制に対しては賛成の立場ですが意見をば。
ケンカを売ったりする意図はなく、論争するでもなく、こう言う意見もあるという問題提起の意味でのコメントです。
安倍政権の支持率は色々な理由があると思います。
一つは酷かった民主時代を否定する空気。二つ目にこれまでの政権の実績を評価する民意。
三つ目に、漸く現れた長期政権の指導者との評価。
四つ目、特に「経済」と「中韓との対峙姿勢」を取っている事。
経済で言うなら、バブル以降の20年間で一番結果を出している政権であるのは間違いないでしょう。
中韓との距離感は、恐らく保守左派ともに日本人全体に共通する感情であり、重要なポイントです。
「経済」と「中韓」の二つは今一番の政治的なイシューであり、アベノミクスを否定する人たちは、では代替案として何が出せるかと言うと、何も出ないでしょう。
今の経済政策が基調となるしかない筈で、民主党時代のような円高容認にと言う声は無いでしょう。
中韓との関係は、欧米メディアも両国の特異性を報道し始め、感情や安保などが絡んで、仮に今左派政権となっても中韓に甘い顔を見せる事は国民が許さないでしょう。
つまりこの二つは、国民の支持を得る大前提なのです。
安倍政権の初期、支持率は5割前後で、不支持は3割位でした。
安保議論の流れで支持は40%近くまで落ちたのですが、また戻して5割に近づきつつあります。
恐らく4割は安倍政権とその方向性(「経済」と「中韓」)に対する堅い支持で、不支持3割も固い不支持層です。
一時離れた一割の層は浮動支持層と言うべき人たちで、この人たちは安保で離れましたが、「経済」「中韓」の二本柱では方向性を支持しているのです。

この事は次の事を示しています。
一つは、「経済」「中韓」の二つは安倍政権の支持の根源で、対して左派勢力は全く対案がなく、国民の選択肢に掠りすらしていない事。
二つ目に、安保法制は結局のところ、政治課題としての優先順位は決して高くはない事。
Commented by 山本山 at 2015-12-15 00:00 x
安保に反対でも、中国の覇権主義はご存知だと思います。
結局は国家・政府は、国民の経済発展と身体の安全を守るために存在します。
憲法を守る為に国家が存在するのではなく、国家を運営する為の方便として憲法はあり
国民の多くが、国際環境の変化や明確な軍事的危機を認識している以上は、安保に対する最初期の感情的反発が取り除かれると、容認する流れになるのは当然なのではないかと思うのです。

保守・安保賛成派として見た場合、「戦争法案」「徴兵制」等の語句は扇動としてはありでも、冷静な議論をとなると浮ついて見えて逆効果だったと思う。
短期決戦のイベントの為の煽りとしてはありだが、実際には反論突っ込みも出て、落ち着いて考えると間違ってると見破られるのも早かったのでは。
今回の一連の議論で、安保概論の基本や知識はかつてない程に深化したと個人的には思っています。
もちろん完全ではないですが、例えば
「自衛隊が軍ではないと、戦時国際法上の軍人としての扱いが受けられず、テロリストとして殺害される可能性がある」
と言う話を出された時に、憲法九条を守る為に自衛隊員はその待遇を甘受してくれ、とは言えないでしょう。
こうした議論と現実的な折り合いの模索が、左派論者からの改憲論へとつながったとみています。

国民レベルでのそうした認知の深化は、憲法改正・九条問題についての最後の感情的反発の部分をクリアしたと思っているのです。
今現在は、戦後数十年の「左傾だった日本からの右傾」でつまりは「中道化」だと思ってるのですが
テロ・難民問題に端を発する諸国の保守化、中露の暴走等と呼応する形での、日本の変化はしばらく続くでしょう。
政治的善は、人道的善とは合致しない事は一つの真理であり、
重要なのは思想を守る事、貫徹する事ではなく、何が国として国民として最善になるかを考える事だと思います。


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