共産党が9条改憲を決断する日 - 一強多弱→衛星政党→大政翼賛会

c0315619_17212171.jpg10/25に放送されたNHKの「新・映像の世紀」。そこで映し出された第1次大戦の生々しい歴史を見ながら思ったことは、もうすぐ同じような世界大戦が始まるということだった。この観想に導かれるのは以前からのことだが、最近はますます強くなって具体的なイメージになっている。第2次大戦から70年が過ぎ、主要国の間で戦争の記憶が薄れ、平和を希求する精神の粘りが脆くなっている。戦争の恐ろしさへの想像力が弱くなっている。世界秩序を仕切ってきた米国の力が衰え、新しい秩序体制へ移行せざるを得ない中で、対話ではなく武力で解決する方向に流れ、足下ではブロック経済の営みが遂行されている。何より、地上で生きている人の多くの実相を捉まえたとき、新自由主義の害毒と疲弊が限界にまで来ていて、これ以上、人類はこの生き方を続けられない状況に来ている。呪わしく疎ましい新自由主義が木っ端微塵に破砕され、人を蝕んで不幸にするそのシステムとイデオロギーが地上から消滅する、「最後の審判」的な explosion の契機が、特に弱者や敗者となった人々の無意識の中で渇望されている。希望を持てず、絶望に塞がれた人の方が多くなる中、希望の言葉が地上にない。新自由主義が人を変え、人を冷血にし、言葉を無力にし、弱者を無価値なものにしている。



c0315619_17213389.jpgこの時代、この状況で、希望を口にすること、希望を描いて手繰り寄せること、希望を信じることは容易ではない。5月からずっと、安保法制の政治戦が続き、記事を書き続けてきたが、どうにも違和感を感じて仕方なかったのは、私に対して、ハイ、次の提案は何ですか、新しい面白い提案を出して下さい、具体的にどうすればいいんですか、あなたには具体的な提案がありませんよと、何か提案の卸問屋に注文を入れるような口調で軽く言ってくる読者が多かったことだ。記事を読んでもらい、面白く愉しんでもらっている。しかし、私が提案を書いているのは、その提案に共鳴と賛同の輪が広がり、実現に動くことによって安保法案を阻止に導くためだった。だが、少なくない人たちにとって、私は政治提案のベンディング・マシンであり、無名のヒマな男が面白い余興を披露して人を愉しませているだけだったようだ。これらの者たちにとって、政治を動かす分析や議論とは、著名な大学教授とか新聞記者がするものなのだ。そして、単に目の前で動いている政治をショーのように見て、怒ったり笑ったり感情を昂ぶらせ、大学教授や新聞記者が「SEALDs、SEALDs」と言えば、それと安保法案阻止の要求とをくっつけて、付和雷同してその音頭に合わせて踊るだけなのである。消費なのだ。

c0315619_17214610.jpg安保法が通過したことは、決して小さいことではない。反対運動した者は、私も含めてそれを戦争法案と呼んでいた。戦争法が通ったのだから、戦争が確実に始まる。戦争法を通してしまったのだから、国民がその代償を負う羽目になるのは責任の必然ではないか。2年前、特定秘密保護法が成立したとき、反対デモをした者も、国会で反対した政党も、必ず廃止すると誓っていた。だが、1年後の衆院選では、秘密保護法は争点にすらならなかったし、もう多くの者が当時の「廃止の誓い」を忘れている。秘密保護法は戦争法シリーズの一部であり序曲であり、アーミテージが日米防衛ガイドラインの情報が漏れないようにするために急いで制定を求めたものだった。ずっと前から言っている私の予想は、来年4月頃に南シナ海で軍事的緊張が高まり、米中(比中)が一触即発の状況になり、国連安保理に問題が持ち込まれ、米国の要請で日本が海自艦隊を派遣、「警戒監視活動」と称する作戦行動中に軍事衝突が起きるというシナリオである。ずいぶん早く米軍の挑発が始まった。辺野古の埋め立てを睨んで、日米が示し合わせてこのタイミングで南シナ海での中国との紛争を演出し、日本の世論をそこに関心づけて反中の敵愾心を扇動、辺野古での政府への反対世論を薄めようと合わせ技の計略だろうか。

c0315619_17215998.jpg共産党が提唱している「国民連合政府」と、それをベースにした反安倍の野党共闘の取り組みは、単に共産党を野党の中で一人勝ちさせる党利党略として終わるか、あるいは、情勢の進行の中で変容し、各自が現在抱いているイメージとは全く別の違う姿になるのではないかと、私は悲観的な予想を抱いている。後者の予想は、恐ろしい悪魔に変身するものだ。その懸念の中身は、前回書いたように、想田和弘や佐藤圭や高橋源一郎の「新9条」を採り入れ、9条の明文改憲を方針化して究極の「脱皮」を遂げるという悪夢に他ならない。「国民連合政府」の打ち出しから1か月後、東京新聞が「新9条」の宣伝工作を始めた翌日(10/15)に、共産党は日米安保について凍結の方針をマスコミに書かせた。朝日の1面の記事になった。日米安保の容認を言うことで、「国民連合政府」すなわち共産党の「本気度」が宣伝される格好になった。選挙が近づくほどに、共産は「国民連合政府」の中身として、安保以外の主要政策における「脱皮」を具体的に説明しなければならなくなる。TPP、消費税、原発再稼働、等々、民主との隔絶をどう埋めるかコミットしなくてはいけない。共産が民主に歩み寄れば寄るほど、マスコミにとってネタになり、SEALDs信奉者の左翼を湧かせ歓ばせる展開になる。参院選の一つの焦点になる。モメンタムになる。

c0315619_17221043.jpg衛星政党という言葉がある。中野晃一が、維新、次世代、みんな、結いについて、衛星政党だと言っていた。安倍晋三が絶対的に権力支配する一強多弱の体制というのは、自民党以外のすべての政党が衛星政党に変わって行き、名実共にファシズム体制化する政治だろう。民主党は、自民党との対立軸を打ち出すことができず、最終的に衛星政党に転落してゆくものと思われる。小選挙区制のシステムは、民主党に政権交代のチャンスを与えるもので、原理的に、自民党と民主党がかわりばんこのシーソーゲームの循環方式で政権をチェンジするモデルだったが、民主党の基本政策が自民党のコピー(複製)になったため、システムが不全となり、逆に、安倍自民党の永続独裁をセキュアして「民主主義」の偽装を正当化する制度となった。今、目の前で動いている政治の瞬間は、「政治改革」で実現しようとした二大政党制の夢が崩れ、日本が米英型のモデルから遠ざかり、ソ連東欧型のモデルに接近している刻一刻だと言えるかもしれない。民主党という政党は、そもそも政党としての理念がなく、政権交代と二大政党制のシステムだけをめざしてきた党だ。寄り合い所帯であり、内部に政策の一致がなく、2010年以降は分裂と縮小ばかり繰り返してきた。新しくリーダーになって党を刷新する力のある人間もいない。衛星政党の運命しかないだろう。

c0315619_17222198.jpg結局のところ、日本の政治はどうなるのか。一強多弱体制が固定化し、民主党が衛星政党となり、共産党が「新9条」を認めて明文改憲を容認するという方向は、あの戦前の大政翼賛会が復活するということだ。10/25の日経の記事に不破哲三が登場して、「国民連合政府」の脱皮路線を念押しするインタビューがあった。これまで、この問題で不破哲三が発言しておらず、私は、本当にこの路線を不破哲三が承認したのか疑問に思うところがあった。不破哲三も了解している。そのことが確認できたが、共産党が言っているところの、「国民連合政府」が実現して戦争法を廃止したら、すぐに解散総選挙して日本の針路を問うという提案は、政治として現実離れしすぎた仮構的な議論だろう。そこで解散総選挙した後、安保法制に賛成の勢力、例えば自民・公明が多数になったらどうするのか。そのときの解散総選挙は、争点が安保法ではなくなっているので、十分に可能性のあることだ。自公が政権に返り咲き、安保法を復活成立させても、それはそれで民主主義だから構わないと言うのだろうか。つまり、実際に選挙で野党が連立政権構想を訴えるときは、安保法廃止だけでなく、その連立政権が何をするのか、どんな政策を実行するのか、それを公約して言わないといけないし、そうでないと有権者は納得しない。次の選挙で自公が返り咲けば安保法が再成立になるのだから。

c0315619_17223197.jpg辺見庸が言っていた、共産党は本当に最後まで憲法9条を守るのだろうかという、警告的予言を思い出したのは、今から2年前のことだった。共産党が動員するデモの看板に「海外での戦争に反対」というようなフレーズがあり、尖閣で中国と戦争するのは賛成なのかと訝ったことが出発点だった。本来、日本共産党は、名前も共産党なのだから、中国共産党と安倍晋三との間に立ち、憲法9条の非戦の精神に徹して、両者の間を忙しく往復しつつ精力的な野党外交を演じ、尖閣問題で日中が妥協して平和を回復する関係構築に奔走しなくてはいけなかったはずだ。台湾を交えた三者で腹を割って会談しようとか、米国を入れた四者で膝を交えて協議しようとか、無限の建設的提案をして大胆に国際社会の注目を惹き、期待を集め、日本右翼の暴走を押さえられる立場だった。そうした平和主義の日中外交を提起し、学者や民間企業人を入れた国民運動を巻き起こすべきで、それこそが憲法9条に即した態度であり、共産党に求められた選択だった。ところが、共産党はそれをせず、安倍晋三の側に立ち、海外での戦争には反対と言いつつ、尖閣については個別的自衛権で対応するという保守的立場に旋回、日中戦争の危険を除去するのではなく、国家主権の論理で対中安保政策を方向づけてしまった。それを見て、私は意外に思い、辺見庸の予言を思い出したのだった。

そこから2年経ち、この問題についての危惧は確信に変わったと言っていい。二大政党は一党多弱になり、一党多弱は衛星政党のファシズム体制になり、共産党が「新9条」を決断して大政翼賛会となる。


c0315619_17224699.jpg

[PR]
by yoniumuhibi | 2015-10-28 23:30 | Comments(4)
Commented by 愛知 at 2015-10-29 00:36 x
ご紹介の日経・不破哲三さんインタビューを見てみました。聞き書きゆえ編集されているかもしれませんが、国民連合政府の発案について「だいたいこういうのは、言わず語りでまとまるものなんですよ」は、らしくないという印象。昨年12月の京都・四条河原での名演説を聞き返そうとユーチューブを見たところ、1989年参院選での政見放送がアップされていました。侵略戦争に唯一、命がけで戦った党だと。今回の貴下記事を拝読し、つくづく悲しくなりました。

今夜の報ステ、少し期待していましたが、南沙諸島には触れられず。戦争を焚き付ける番組よりはましなんでしょうが。30年後の日本の姿を尋ねた古舘アナにゲストのカルロス・ゴーンが怪訝そうな顔をしていたことが印象的で。30年後はないよねと夫婦で苦笑。辺野古問題では新保守主義の論客がイギリスのインド支配を持ち出していましたが、そんなもの持ち出さなくても琉球処分で済むだろと辟易。

イラク戦争に舵を切ったトニー・ブレアは、わざわざ米国まで出向いてイスラム国の誕生には米国も貢献したと発言。日本の政治家にも、そんなしなやかさと強靭さがあればと思います。
Commented by ライジングさん at 2015-10-29 05:53 x
百人の羊に対して、気にして、気に入られようとか、興味を持ってもらおうとか、媚びを売る生き方は、
結局、裏切られて無駄になる。ということを、この歳になって、やっと知ることが出来ました。

一人の本当に信頼出来る獅子を作る。地道にそんな獅子の仲間を、また一人また一人と増やす。
そんな生き方でないと、世論や社会どころか、自分の人生すら変えられ無かったんですね。
Commented by 半覚醒状態 at 2015-10-29 06:17 x
いつもありがとうございます。そうですよね… 今回の南沙諸島へのイージス艦派遣、その前のパク・クネ大統領訪米中のベトナム戦争時の韓国軍兵士のベトナム女性暴行事件の暴露から日韓首脳会談の決定の流れなどを見ていると、アーミテージらの行動はまさに『光速のヨセ』。こんな表現をしたら棋士の方に怒られそうですが、もう投了寸前ですよね。それが分かってない野党。徴兵制がなくても経済格差をしっかり固めて、防人のように自衛隊に参加参戦する若い人たちの姿が目に浮かぶようです。ため息でそうですよ。
Commented by なます at 2015-10-30 09:52 x
ご指摘まったく恐ろしい限りです。
>民主党の衛星新党化
左派や共産党は片棒政党になってはいけません。

分裂を繰り返しながら自公安倍を成り立たせたその民主党の中にはあのリモコン一派が居たわけでしたが、なぜ彼らが党中枢に居続け得られたのか…。

社会党が消えて(民主党に)行った根本原因は、労組幹部が「永遠幹部」となった「選挙」が横行し、「左派」含めて、取引でポスト・政策・方針がまとめられるようになって
<肝心なところでは寝返る>が繰り返されたし…、共産党はそれに介入どころか助力を与えて仕舞った…この現実歴史が。「統一労組懇」などはやはりスターリン時代の社会ファシズム論と同じ失敗でしたでしょう。労組再編の片棒…。社会党系労組を影武者がいんつき選挙横行で居着くの金城湯池と差し出して出来たのが今日ですから。
「国政」の片棒でなく、絶対に戦争の片棒を担いではいけません。

いよいよ戦端がでっち上げられようとするの今日、「光速の寄せ」とは言い得て妙。抗する秘策は?国際的にも、国家の交戦権の否定。沖縄焦点で、戦争させられようと仕組まれつつあるその当の国家の、組織・国民・民衆・民族と直接的・間接的、あらゆる阻止を、国内ともども取組みたい。


カウンターとメール

最新のコメント

続)もうひとつ、カズオ・..
by NY金魚 at 11:40
サーロ節子さんの拡張高い..
by NY金魚 at 11:38
100万部とはびっくりで..
by T at 23:48
「君たちは」の醍醐味でも..
by 長坂 at 00:53
報道は中立であるべきなの..
by ワイドショーでも大切に at 14:43
(2の2) 日本の将来..
by 七平 at 02:26
(1の2) 小生は..
by 七平 at 02:25
宮崎駿が次回長編タイトル..
by NY金魚 at 07:08
ヨニウムさま、どうも始め..
by ふーくん at 17:34
論駁一刀両断、見事なり!..
by 駄夢 at 15:41

Twitter

以前の記事

2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月

記事ランキング