参院選の前の風景 - 民主と共産の議席予想、「第三極」壊滅の難民票

c0315619_14241037.jpg岡田克也のインタビュー記事(10/24)が出ている。共産の「国民連合政府」についての質問に対して、「共産とは安全保障政策などに大きな違いがあり、ともに政府をつくるのは無理がある。ただ、共産が候補者を立てなければ民主が当選する1人区はたくさんある。そういう意味での協力に期待はしている」と答えている。従来よりさらに態度を明確にさせた。政策に隔絶がありすぎるので連立政権を組むのは困難という基本的立場と、選挙区で民主が立てた候補に共産が無条件に票を流してくれるのは歓迎だという対応である。このインタビューでは、9月には言っていた「安保法廃止で野党が一致して選挙協力」という肝心の要点が消えている。「民主を応援してくれる人たちの支持を失う協力では意味がない」と語り、例の、民主が共産と組めば保守の支持層が逃げるという論点も強調した。この認識を党首の岡田克也がマスコミの前で披露したのは、今回が初めてだと思われる。共産と共産支持者からの熱いラブコールとは裏腹に、民主(岡田克也)の「国民連合政府」に対する無関心と冷淡さは、時間が経つほどに際立ってきている。全野党共闘を媒介するところの、安保法廃止という目的や動機の強さが、9/19の強行採決から遠ざかるほどに、次第に薄まってきている感を否めない。



c0315619_14242232.jpg10/23の朝日の4面を見ると、民主が安保法の一部を廃止する法案を次期国会に提出する方針だという記事が載っていた。法案を他野党と共同提出することで野党連携の主導権を握り、参院選の争点にするのだという。この「一部廃止」の案は、前原誠司らがずっと主張しているもので、いわゆる対案路線であり、共産の「全廃」への対抗策の表明でもある。そして、民主のもともとの方針でもあった。明らかに、民主は「国民連合政府」から離れる動きに出ていて、「国民連合政府」の実現は遠のく状況になっている。共産の支持者から見れば、この動きは不可解に見えるだろう。どのマスコミの世論調査を見ても、民主の支持率は落ちている。宮城の県議選の結果を見ても、共産が躍進して民主の低落傾向がくっきりしている。普通に考えれば、安保法廃止の一致点で共産と組む「可能性の芸術」に跳躍し、全野党共闘と安倍政権打倒の方向を国民に示すのが当然じゃないかと、そう考えて民主を歯痒く思う者が多いだろう。しかし、コトはそう簡単ではない。安保法制と民主をめぐる最近の事実経緯を思い出す必要がある。一昨年、枝野幸男は月刊誌上で、集団的自衛権を明文化して認める憲法9条改正案を発表している。昨年9月、読売のインタビューに出た枝野幸男は、「安保関連法案 賛成も」と語っている。

c0315619_14243299.jpgこの件は、安倍晋三が解釈改憲を閣議決定した後、新安保法制を秋の国会に出すか出さないかという情勢の下での話だ。簡単に言えば、安保政策の対立軸において、民主は自民・公明と同じ立ち位置に属するのであり、対立軸で線引きされた向こう側に共産・社民がいる。アーミテージ・レポートの指示に従うのが「責任政党」たる民主の対案路線であり、基本政策で自民と民主に変わるところはない。それゆえ、TPP政策も共産とは180度異なるし、原発再稼働も消費税増税も全く立場を異にする。連合がTPP賛成で経団連の頼もしい補佐役であり、また原発推進勢力として国内で最も過激で強力な政治集団であること、あらためて指摘するまでもない。9/19から時間が遠ざかるほど、マスコミや世間の意識の中で安保法の衝撃の余韻は小さくなるのであり、逆に、TPPや辺野古や消費税という他の重要政策への関心が相対的に高まる。遠近法の視角の焦点が移動し、これまで脇役だったものが注目され自己主張を始め、主役だったものが背景に後退する政治の景観に変わってゆく。時間が経てば経つほど、共産支持者や一般国民は、共産と民主がもともと水と油の関係であり、夏の間に何度も手を繋いで国会前で記念撮影した「野党共闘」が、一時的で永田町的なアピールとパフォーマンスであった真相を理解するだろう。

c0315619_1424445.jpg民主には危機感はないのだろうかと、普通の人は思う。二大政党の一とは到底呼べない弱小政党に落ちぶれ、さらに党の支持率が下がり続け、県議選で議席を減らして体力を失うジリ貧の中、共産に歩み寄って全野党共闘に舵を切る選択以外に、どういう生き残りの方策があるのだろうと訝しんでしまう。ところが、現実は必ずしもそうではないのだ。来年の参院選を展望したとき、民主には十分な勝算というか目算があるのであり、それが岡田克也の余裕の根拠になっていて、共産と組まなくても票を取れるという自信を支えている。その目算の中身とは、「第三極」が潰れたという決定的な事実に他ならない。5年前、2010年の参院選で、民主は比例で1845万票を取っていた。それが、2013年の参院選では713万票にまで激減し、2014年の衆院選でも977万票に止まっている。その間、みんな・維新・次世代を合わせた比例票は、2013年の参院選では1111万票、2014年の衆院選では980万票となっていて、「政権交代」の季節に民主に集まっていた浮動票が「第三極」に流れ込んでいた。次の選挙ではそれが消える。橋下徹の今後の動向にもよるが、ざっくり1000万票が行き先を失って迷子になる。消えるということは、民主の元の鞘に戻る蓋然性を期待できるということだ。仮に半分戻ったとして、民主は1500万票になる。共産の倍だ。

c0315619_1424554.jpg民主右派と岡田克也の楽観論は、こうして「第三極」没落という厳然たる事実が土台になっているのであり、共産と無理に手を組む冒険に出て党内の内紛と混乱のリスクを負うよりも、壊滅した「第三極」から難民になって放浪する票を自然回収すればよいという判断に基づいている。焦ってないのだ。松野頼久と江田憲司の維新東京が総崩れの立ち枯れになっても、だからと言って民主に悪影響が及ぶわけではない。「第三極」に浮気した票は、基本的に自公に不満で野党に流れる属性を持っている。さて、民主の参院の議席を見ると、現有58で、改選が41、非改選が17となっている。政権与党だった2010年には41議席取ったのが、2013年には半分以下の17議席しか取れなかった。今回、その改選の番であり、民主にとっては守りの選挙である。民主のHPを見ると、比例の17人と選挙区22人の未だ39人しか候補者を擁立できていない。これから増えるのだろうが、普通に考えて、2010年の1800万票の線に戻るのは困難で、安倍政権と自民の高い支持率での安定という前提を考えても、執行部にはそのような野心的な挑戦意欲はないと思われる。目標ラインは不明だが、旧「第三極」の票を回収して、議席減を最小限に止めたいというのが本音なのに違いない。問題は、共産や社民・生活との協力云々で焦点になっている選挙区だ。民主の改選の選挙区議席は26。

c0315619_1425661.jpg一つ一つを丹念に追跡調査した結果、現時点での私の分析と予測では、選挙区で当選しそうな民主議員は14人しかいない。北海道、茨城、埼玉、千葉、東京x2、神奈川、静岡、愛知、三重、滋賀、京都、広島、福岡。1人区で可能性があるのは三重、滋賀のみで、他はすべて複数区。静岡以外はすべて現職だ。落選・引退・定数減で民主が現有議席を失う選挙区は12ある。宮城、福島、山梨、新潟、長野、岐阜、大阪、奈良、兵庫、岡山、高知、大分。このうち、宮城と大分は、それと山形は、野党の選挙協力で勝てるかもしれない。参院の定数改正は民主に大きな痛手となっていて、楽勝の指定席だった2人区が数多く減ってしまった。宮城、福島、新潟、長野、岐阜がそうだ。また、それと並行して参院民主を彩った大物議員が続々引退する。田中直紀、北澤俊美、輿石東、江田五月。いずれにせよ、一強多弱の体制下の民主にとって、現有41で臨む今回の改選は間違いなく守りの選挙で、比例と合わせて25議席がいい線となり、頑張っても30議席に届くかどうかだろう。安保法は民主に有利な争点だが、TPPは逆風の争点となる。そのことは宮城の県議選がよく物語っている。反TPPの農村票は民主には流れない。反TPPの農村票は棄権票となり、低投票率の数値結果へと反映される。現有大幅減の25議席となっても、民主としては十分に党勢回復であり、執行部にとっては合格点で安泰なのだ。

c0315619_1425185.jpg上げ潮の勢いの共産は、北海道、東京、神奈川、大阪の4選挙区で新たに議席を獲得し、比例も7議席を狙うだろう。現有の3議席から4倍増の11議席。非改選の8議席と合わせて公明に並ぶ確かな勢力となる。だが、トータルで計算すれば、民主で現有を大きく失った分が共産で少し増えただけで、野党全体はマイナスとなり、最終的に安倍晋三の勝利の結果となる。民主と共産では政策が違いすぎて選挙協定を合意締結できず、受け皿を作れず、1人区で反自民の有力候補を発掘して戦うことができない。共産を除いた野党連携(民・維・生・社)でも受け皿にはならない。受け皿として有効に機能するのは、既成政党とは無縁の新党であり、安保法廃止の立憲主義とTPP反対を掲げた政党の結成である。そうした新党が立ち上がって旋風を起こしたとき、投票率が上がって安倍晋三が負ける。共産の「国民連合政府」の戦略では、無党派の期待を集めて投票率を上げる説得力にはならない。左翼リベラル界隈を活性化させ、社民や生活に流れていた票を共産に集約するだけだ。実際のところ、社民と生活は「国民連合政府」を支持表明しているけれど、このまま選挙に突入すると党消滅の危機を迎えてしまう。弱小の2党は、民主と共産を接着することもできず、展望も戦略も人材もなく右往左往するばかりだ。すなわち、この2党も、時間が経つほどに尻に火がついて「国民連合政府」どころではなくなるだろう。

この弱小2党が連携で頼る先は民主しかない。結局、仮の結論を言えば、宮城の県議選と同じく、投票率が下がり、現有が少ないために勝敗ラインを低く設定できる安倍晋三が議席を増やして勝つ公算が高いことになる。読者にとっては期待外れの予想で恐縮だが、現時点の与件ではこの着地になる。無論、ここには南シナ海情勢(軍事衝突)等のハプニングの条件は入れていない。改憲争点化についても、ここでは想定から外している。現実には、年明けから、あるいは11月から、今とは違った激動の政局が始まり、考慮すべき新しい前提条件が重なってくるだろうけれど。


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by yoniumuhibi | 2015-10-26 23:30 | Comments(5)
Commented by 愛知 at 2015-10-26 23:21 x
記事のアップと桜井元さんの投稿に感謝します。桜井元さんご紹介の番組を検索したところ、北御門二郎さんのお孫さんで翻訳者、絵本作家の小宮由(こみやゆう)さんのブログ、「このあの文庫」(東京・阿佐ヶ谷)が現れ、そちらのリンク先、NHK福岡放送局のサイトで「私は戦場に行かない~命がけで”非戦”つらないた青年~」でヴィデオではないのですが、テキスト全文を読むことができました。既に満席でしたが東京・ナルニアホールでの「北御門二郎を語る」という勉強会も案内されていました。貴下ブログもそうですが、こうして地道に活動を続けておられる方がいらっしゃることを知り、胸が熱くなりました。

それに引き換え中日新聞は今朝の1面トップが「名駅(名古屋駅のこと)ランチ争奪戦」って信じ難い。2面が安保法と闘うシールズ。

間もなく開戦だ、共産党も裏切ったと落ち込んでいましたが、貴下ブログと他の方のご投稿により少し明かりが見える気がしました。貴下ご教授の通り、憲法の前文と9条はセットであり、これは世界の宝であると我が意を強くさせて頂きました。
Commented by Imagine at 2015-10-27 19:37 x
日本共産党は、つくづく呑気で平和呆けだと思う。間もなく日中開戦だというこのとき、参院選まであと257日だと。誰一人開戦が先だと言わない。オピニオン見れば八紘一宇のSEALsを神格化して。「日本は戦争をしない」そんなこと信じてるのは、自公と民主半数と共産党だけ。あと257日だと、お題目を唱えて死んでいくことに。
Commented by マリモフィズ at 2015-10-27 20:04 x
もう沖縄県で伊波さんが勝てばそれで充分
沖縄県民が全国で最も民主主義を理解してる
どんなこと頑張っても改憲賛成派が2/3になっちまうよ
こんなこと言うとネガティブだと言われそうだけど、無責任に大丈夫だ自信持てとは言えない
まあ、、せめて国民投票で左からの改憲コールに乗せられないで欲しいね。
Commented by 私は黙らない at 2015-10-28 02:40 x
桜井元さんのコメントに大変思うところがあり、コメントします。
南沙諸島の緊張が一気に高まり、常々ブログ主様が言っておられた中国との戦争がいよいよ現実味をおびてきました。日中間軍事的衝突を故意に誘発させようと筋書どおりに粛々と計画を遂行しているのでしょうか。
左からの改憲、マスコミで垂れ流される中国脅威論といい、この流れをどうやって食いめるのか。国の背骨ともいえる憲法でさえ、いともあっさり解釈改憲されてしまう今の日本の空気を狂気と思う人はいないのか。
自分の良心と真逆の方向に国家権力が暴走する時、一国民としてどうすべきなのか。国家権力にどう抵抗するのか、あるいは、自分の良心を押し殺して、従うのか、はたまた、逃げるのか。北御門さんは、自分の良心に忠実だった。日本が戦争に突入した場合、日本国民であるということと、自分の良心の問題をどう解決するのか、左の転向組、Sealsの学生一人一人に問うてみたい。
愛知さん、テキスト全文掲載サイトご紹介ありがとうございます。読ませていただきます。
Commented by ななし at 2015-12-15 15:38 x
まず民主党は壊滅だろう。全滅もありえる。
共産とその他小政党は選挙区での獲得はかなり厳しい。
自民躍進、公明は現状、
おおさか維新は大幅躍進確実だろう。
公明を外しても改憲発議議席になる可能性もありえる。


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