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共産党の「国民連合政府」提案 - 党利党略、敗北の総括回避の目眩まし

共産党の「国民連合政府」提案 - 党利党略、敗北の総括回避の目眩まし_c0315619_1838255.jpg共産党の提案した「国民連合政府」について。正直なところ、最初に見たときは「パクられたな」と感じて苛立ちを覚えた。私は、3か月前の6/24に「立憲党で選挙に勝つ - 小林節を首班とする立憲連合政府の閣僚名簿」という記事を発表している。安保法の政治戦のカギとなるのは安倍晋三の支持率であり、支持率を下げるためには目に見える受け皿がどうしても必要で、反対派はすぐに受け皿作りに動けと提起し、具体的なアイディアとプランを提示した。その後も、何度も何度もTwで記事をリンクし、この提案を採用して実践に動くよう反対派の全員に呼びかけた。が、安保法が成立するまで全く反響はなく、誰からも無視されて放置されたままだった。反対派はデモのみを唯一の戦略とし、反対運動全体をSEALDs運動に収斂させ、ひたすらSEALDsをマスコミで宣伝しまくって国会前に人を動員する作戦に熱中した。安倍晋三の支持率を下げるための受け皿作りなど、誰も発想することなく、具体的な提案を作って発信する者はいなかった。結局、政治戦は完敗で、安保法(戦争法)は無傷で国会を通過し、安倍晋三の支持率も盤石で微動だにしていない。掠り傷ひとつ負わせられなかった。ところが、共産党は、本来なら敗北の総括をしなければいけないところを、目眩ましのように、安保法成立の翌日に「国民連合政府」の提案を突然打ち出したのである。



共産党の「国民連合政府」提案 - 党利党略、敗北の総括回避の目眩まし_c0315619_18381527.jpg当然ながら、私の記事などへの言及や参照もない。必死で提案を示して採用を訴えてきた私からすれば、コケにされたも同然で、不愉快で怒り心頭の気分だ。パクリの確証を出せと言われれば困るが、「立憲連合政府」に対して「国民連合政府」とネーミングしており、パクった当人の悪意の嘲笑が聞こえてくる。政治戦が敗北に終わることは、8月中旬には政治を知る者には誰にも見えた想定だった。共産党は、と言うより、SEALDsと共産党をブリッジして操縦している黒幕は、それを見越して、運動の敗北を巧くゴマカシて目先を変える材料として、私の発案を窃取して自分たちの提案に応用することを謀ったのだろう。狡猾と言わざるを得ない。こうして、法成立の翌日に提案を打ち出せば、反対派市民と世間の注目は提案の行方に向くし、共産党は敗北の直視と総括をしなくて済む。関心と話題をそちらの方に誘導し、共産党は積極的に国民の願いを実現する方向で頑張っているという立場を演出することができる。リベラルの中で評判を取り、他の野党も提案に乗るべきだという空気を作り、次の参院選までの反安倍の動きの主導権を握ることができる。共産党は周到に計算して、狙いすましたように9/19にこの提案を発表した。この政治を読み解く上で重要な事実は、SEALDsが9/16に記者会見して「落選運動」を提起していることだ。共産党の「国民連合政府」のわずか3日前。

共産党の「国民連合政府」提案 - 党利党略、敗北の総括回避の目眩まし_c0315619_18382683.jpg普通に見れば、SEALDsの「落選運動」と共産党の「国民連合政府」の二つがセットのものであり、同時並行して企画調整された動きであることが察知できよう。二つの提案はほぼ同時の発表で、時間差がなく、別々に発案されたというにはあまりに時機が近すぎる。おそらく、共産党による、法成立翌日の「国民連合政府」提案発表という戦略が先にあり、その助走路を敷くためというか、共産党の提案の合理性と正統性をお膳立てするために、3日前の工程でSEALDsに「落選運動」を発表させたのだろう。「落選運動」の発表が早すぎると、おまえらデモで法案を潰すのは諦めたのか、先の計画を言うのは早すぎるだろうという批判が内部から出るので、ギリギリまで遅らせざるを得ず、そのため共産党の発表と日程が接近し、裏を勘ぐられる条件を作ってしまった。SEALDsから距離を置いて冷静に見ている者からは、二つの提案は一心同体であり、同じ司令部で作案された戦略であることは疑いようもない。私は、共産党の提案を見たとき、パクられて謀られたという感覚と共に、この提案が民主党に受け入れられるのは難しいだろうという予想を持ち、さらに、これは共産党の巧妙な党利党略だなという直観を抱いた。説明しよう。私の「立憲連合政府」の提案と共産党の「国民連合政府」の提案とは似て非なるものだ。形の上では似た姿をしているが、政治の中身はまるで違う。

共産党の「国民連合政府」提案 - 党利党略、敗北の総括回避の目眩まし_c0315619_18383758.jpgどう違うかというと、私の提案は、政党とは関係ない第三者が提案して実現を推進するもので、市民団体が政党間を説得して調整するプランである。共産党が提案者になってはいけないし、共産党がプロジェクトを動かす主体になってはいけない。そんなことをやったら、どれほど外形上は綺麗な提案でも、纏まるものも纏まらなくなる。合意形成は覚束ない。案の定、党首会談は組まれたものの、提案は民主党によって一蹴された。打ち上げ花火で終わった。全野党が纏まって安倍晋三と対決する同盟を作るためには、同盟の発起人は第三者でなくてはならない。何より、この同盟の肝は水と油である民主党と共産党との共闘の成否だから、カリスマ的な(例えば松本清張のような)知識人が龍馬の役割を果たすか、あるいは、社民党がブリッジ役に奔走して二党をくっつける形でないといけない。当事者である共産党が一方的に提案を発表し、これが国民の意思だから民主党に乗って来いと呼びかける方式で成功するわけがない。薩長同盟は土佐の龍馬が仲介したから成功した。しかも、共産党の提案は、法成立翌日に、白昼堂々、民主党からすれば頭ごなしに不意に突きつけられたものだ。いかに国民の意思を代弁した正論だと言っても、野党第一党の民主党には立場と面子があり、野党の要は自分だという自負がある。共産党が本気で民主党の合意を求め、共闘の成立を得る気があったなら、当然、提案は水面下の接触で行われ、極秘裏に協議して中身を詰めただろう。

共産党の「国民連合政府」提案 - 党利党略、敗北の総括回避の目眩まし_c0315619_18384824.jpgベトナム戦争のパリ和平協定の交渉もそうだし、オスロ合意もそうである。水と油の関係の二者が重大な合意を締結するためには、隠密の交渉と調整と妥協が不可欠だ。今回の共産党の「国民連合政府」の提案には、そうした契機が一切なく、したがって、最初から合意を前提にしない、破談を織り込んだ宣伝目的のプロモーションであり、共産党の党利党略の戦術である正体が透けて見えていた。民主党が提案を蹴っても共産党の方に失うものは何もない。逆に民主党の方は失うものが出る。安保法反対の有権者の評判を落とす。結束できないのかと失望させる。だが、落胆している左翼リベラルの面々がよく考えなくてはいけないのは、民主党とはそもそもどういう政党であり、その支持基盤の連合がどういう性格の労組(ナショセン)であるかという実体だ。志位和夫が提案を発表した直後は、岡田克也も前向きな態度を見せ、枝野幸男と古賀茂明も歓迎の様子を示していた。だが、事態は9/24の一日でひっくり返され、幹部会で異論が噴出、政調会長の細野豪志が反対を表明。9/25の党首会談は期待とは裏腹に不調という結果に終わる。現在、民主党の議員の大半は改憲派であり、前原誠司や長島昭久が政策の方向性を舵取りする位置にある。執行部は、単に左右のバランスを配慮するだけの役割の機関で、彼ら(岡田・枝野・長妻)に党の政策の意思決定権があるわけではない。消費税と、TPPと、二度の党分裂騒動を経て、そして選挙での連戦連敗を経て、民主党はすっかり右翼路線に純化された。

共産党の「国民連合政府」提案 - 党利党略、敗北の総括回避の目眩まし_c0315619_1839054.jpg私の小林節を首班とする「立憲連合政府」の提案は、単なる選挙共闘を意味したものではない。この提案は、安保法案を阻止するために、この政治戦で勝つために、受け皿作りで構想したもので、この提案で国民の支持を受け、法案の是非を問う解散総選挙を迫り、安倍晋三の支持率を落とすことが目的だった。参院選でねじれを起こすのが狙いではない。共産党の党利党略の宣伝に利用してもらうネタでもない。基本的に、安保法を通してしまえば、もう効力が消える、賞味期限切れになる戦略だ。実際、法成立後、わずか一週間で空気は冷め、民主党が志位和夫の提案を拒否しても、反対派の市民から非難囂々の嵐は起きなかった。本当なら、反対派の市民が民主党本部を取り巻いて抗議のデモをしてよいはずである。政治は、時間の経過と共に局面が変わっていく。おそらく、これから先は辺野古の問題一色になり、沖縄では壮絶な闘争が展開されることになるだろう。左翼リベラルの関心事もそちらに移るし、移らなければおかしい。Twで何度も言っているが、民主党は辺野古埋め立てに賛成であり、共産党は反対である。二党で一致するのは難しい。もし、共産党の提案に民主党が応じる姿勢を見せれば、すぐに辺野古はどうするという次の難問が待ち構えたことだろう。共産党は、そうした一寸先の政局を見据えて、敢えて民主党がこの提案を蹴ることを承知の上で、点数稼ぎの目的と、敗北の総括を回避するスピンの動機で、この提案の政治を仕掛けたと言っていい。

共産党の「国民連合政府」提案 - 党利党略、敗北の総括回避の目眩まし_c0315619_18391051.jpg共産党は、次の参院選で、民主党と選挙協力をしなくても12議席(選挙区6:比例6)が取れるのであり、定数3に増える北海道と福岡県、定数4に増える神奈川県と愛知県、定数4の大阪府、定数6の東京都で十分に単独で議席を得ることができる。また、比例の方も、社民と生活から流れる分を考えれば、地方の一人区で無理に候補者を立てて票の掘り起こしをしなくても、全国で600万票を集めることは可能で、低投票率のベースでそれは6議席のカウントとなる。そうした見通しがあり、民主党が提案に乗っても乗らなくても自党の選挙には影響はないから、共産党は(蹴られることを前提に)根回しなしにこの戦略を提案したのだ。そもそものオリジナルである「立憲連合政府」の構想を提案した私としては、この提案がこうして汚い党利党略に利用されたことを遺憾に思う。この提案は、7月に市民の手で具体化されるべきだった。7月に左系マスコミが話題にするべきだった。7月にアイディアが周知されて共感を集めていれば、SEALDs運動などよりも、はるかに大きく国民の心を動かし、政治を動かし、法案を追い詰めるモメンタムになっていたに違いない。安倍晋三の支持率が落ちなかったのは、一にも二にも受け皿がなかったからである。10か月先のことなど誰も分からない。来年2月には法の施行が始まる。岡田克也などは、7月の参院選で勝って法の執行を止めると言っているが、2月に施行されるのだから、その時点で自衛隊が海外で戦争に動く法的根拠は万全に整っている。

福山哲郎が、9月17日に「こんな騙し討ちあるか」と言っていたが、まさにその気分だ。(共産党と癒着した)SEALDsハンドラーズの卑劣さに言葉もない。最後に、途中で重要なことを書き忘れる形になったが、私の「立憲連合政府」の提案と共産党の「国民連合政府」の提案の決定的な違いは、私の提案する受け皿(政権党)は小林節を党首とする立憲主義の新党だということだ。既成政党の合従連衡ではない。今日(9/27)のサンデーモーニングでその話が出たが、既成政党の寄り集まりでは受け皿にならない。国民は、民主党と受け皿と見なしてないし、共産党を受け皿と認めていない。受け皿は新党しかなく、選挙で安倍晋三を倒すときも新党でしか勝てない。


共産党の「国民連合政府」提案 - 党利党略、敗北の総括回避の目眩まし_c0315619_18393273.jpg

by yoniumuhibi | 2015-09-27 23:30 | Comments(1)
Commented by Numlock at 2015-09-28 15:04 x
私も突如「国民連合政府案」が提唱された時は驚きました。このようなことは前もって根回しというか、当然安保法案が通ることを想定したうえで料亭会合を重ね、ある程度の目途がついたうえで合同記者会見という流れになるべきでした。

急なアポなし提案・飛び込み営業ですから、民主党内や支持者の間で混乱が起きるのは必然です。共産党はあえてそれを狙ったのではないかとさえ思ってしまいます。そして悪いことに、共産党の支持者は早くも「民主党を倒せ、手始めに日本会議系を追い出せ」などと意気込んでいます。これでは反自民ではなくて反民主です。

野党連合ですが、これは先の沖縄の成功例ばかりが注目されている点も私はよくないと見ています。共闘の失敗例としては、今年の4月に行われた北海道知事選があります。ここでは共闘に参加した共産党が佐藤のりゆき氏を囲う形になってしまい、票が伸びませんでした。新党大地の鈴木宗男氏が「安易な共闘は保守・リベラルの票を逃がす」という指摘の通りになりました。

道政史上初の4選 内実は 2015年4月14日
http://goo.gl/MEbh9V

記事はややマイルドになっていますけど、主要な争点だった経済・福祉・農業・原発とは関連性の薄い話(大企業批判・戦争、消費税反対、安倍政権打破など)を共産党のボランティアや応援弁士が触れ回ってしまい、事実上佐藤氏は共産党の候補になってしまいました。

このように、共産党が共闘関係を結びながら党利党略に走り、実質選挙戦を乗っ取ったという事例もあります。

野党間の協力は必要でしょうが、そこは是是非非というか、ある程度の距離を取るべきだと考えます。


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