防犯カメラは役に立っていない - 捜査の決め手となったのは知人の通報

c0315619_15105572.jpg大阪で起きた中1男女殺害事件。昨日(8/23)のサンデーモーニングではこの問題がトップで取り上げられ、谷口真由美が「防犯カメラは事件後にしか役に立ってない」とコメントする場面があった。この大胆な発言に対して、ネット右翼がすぐにTWで罵倒の反論を返す一幕があったが、谷口真由美の指摘は当を得ている。先週、国内のニュースはこの事件一色で、8/21(金)夜に犯人が逮捕された後、週末のマスコミとネットは事件の話題で持ちきりだった。報道記事を見ながら、気になったのは、やたら防犯カメラの「お手柄」を強調している点で、防犯カメラが逮捕の決め手になったと、どの社も異口同音に絶賛していることだった。察せられるのは、大阪府警がこう書かせているという裏の政治的背景だ。防犯カメラの映像が決め手になった、防犯カメラで犯人を捕まえることができた、そう意義を書けと、警察幹部が取材陣に総括を促していて、言われたとおりに記者が書いている。あまりに防犯カメラの宣伝が執拗で過剰なので胡散臭く思っていたら、案の定、8/22(土)に私の疑問を埋める情報が飛び出て、推理の点と線が繋がった。以下に謎解きを説明するが、結論から言って、谷口真由美の主張が正しく、今回の捜査で防犯カメラは府警やマスコミが言っているような決め手の役割は果たしていない。単なる補助的な脇役にすぎない。容疑者を絞り込み、軽ワゴン車を特定できたのは、知人のタレコミによる。決め手は通報だ。



c0315619_1511794.jpg8/22の昼に出てきた知人の証言情報では、知人は8/14に犯人から電話を受け、「やばいことしてもうた」という言葉を聞いている。この電話は、盆休みに福島から帰ってきた犯人が、知人と2日後に会う約束をするための連絡だ。2日後の日曜の8/16、2人は大阪市内で飲食したり、店をぶらついたりするのだが、そのとき軽ワゴン車に乗車した知人が、犯人が信号停止時にミラーで後方を気にする仕草をするのを不審に感じたと語っている。われわれが気づかないといけないのは、この知人が、マスコミに情報を提供する前にすでに警察に経緯を正確に証言しているということだ。つまり、この知人の通報が起点で、そこから大きく捜査が動き、容疑者が絞り込まれ、犯行に使われた車種が特定されているのである。府警による尾行が始まり、8/21未明に容疑者が柏原市青谷の遺体遺棄現場に行ったことが確認された。逮捕に踏み切ったのは、8/21の昼に青谷の山中で少年の遺体を発見したからで、間髪を置かず逮捕状を取り、午後8時20分頃に路上で逮捕、夜のテレビのニュースに間に合わせている。おそらく、遺体捜索の作業は午前から始まっていて、法医学的な本人確認に時間がかかったのだろう。検察と警察もぴったり連携して動いていて、ディレイなしに刑事司法の手続きが進行している。予想したより逮捕が早かったため、ネットでは府警賞賛の声も上がった。

c0315619_15111732.jpg柏原市内のコンビニで粘着テープを2本購入した事実は、逮捕翌日の8/22の早朝に報道された。警察はこの件を誇大に宣伝し、恰も捜査員が大阪府全域のコンビニの1週間分の全カメラ映像を解析して探り当てたか、或いは、例の佐野研二郎のパクリ工作を暴露したネットの画像検索のような技術を駆使して、コンビニでの犯人の映像を割り出したような言い方をしている。こんなことはあり得ない。前者は工数的に不可能だし、後者は技術的に不可能だ。常識で考えれば無理だと分かる。柏原市のコンビニで粘着テープを購入した件は、本人を直接に尋問し、供述から聞き出したコンビニ店と時間のカメラ映像を回収検証した結果、確認して物証として押さえたものだろう。マスコミ報道の説明とは順序が逆だ。こんな事実は、犯人逮捕前に自動的にシステム処理で検出できるはずがない。明らかにマニュアル的に、人の手を介して突き止められている。犯人が口を割っている。そのことを大阪府警が故意に隠し、恰も、科学捜査の情報処理テクノロジーで発見したように言い、防犯カメラが万能の捜査機能を持っているかのように誇張して宣伝している。沢口靖子のTVドラマのイメージを被せて脚色している。防犯カメラをさらに増設し、監視社会の精度と密度を上げたい警察の欲望に沿った報道であり、マスコミが政府の防犯カメラ・プロパガンダの思惑に協力した狡猾な政治計略だ。

c0315619_15112839.jpg今回の事件で防犯カメラが捜査の役に立ってない真実は、高槻市番町1丁目の物流センター駐車場の車の映像の問題を再考するとよく分かる。8/13(木)深夜に少女の遺体が発見され、8/14(金)から事件としてニュースになったが、当初、大阪府警はマスコミに、駐車場に出入りした不審な車両は2台で、犯行に関わった者は複数いると情報を流していた。セダン型の2台の車が時間を置いて縦列駐車するアニメを作成させ、テレビ各局のニュースで放送させていた。大阪府警が防犯カメラの映像を解析した推理結果の公開である。このアニメでの捜査情報の説明は、8/18(火)まで続けられた。この説明が変わり、実は2台ではなく1台だと府警が言うようになったのが、8/19(水)からで、報ステの現場レポーターとして大阪に1週間張り付いた富川悠太が、8/19の番組の中で実際に映像を見せながら、「よく見ると1台ですね」と長々と語る場面が流された。記憶にある方も多いだろう。実は、今から考えると、あの場面こそが府警の姑息な政治なのだ。Blogの読者の皆様のテレビも、おそらく40インチ近い大画面のサイズと思われ、私もそうだが、富川悠太が解説して見せた映像を凝視しても、移動する車のライトが1台か2台かは判然としなかった。富川悠太の方は、もっと高精細の映像を警察で入手していて、われわれの家庭のテレビでは見えないものが詳しく見えるのだろうと、ついそう推測してしまう。違うのだ。富川悠太が府警の指示に従って演技しているのである。

c0315619_15113966.jpg富川悠太の8/19の説明はヤラセだ。2台なのか、1台なのか、本当は肉眼では判別できないし、確信もできないけれど、府警の意向に沿って、マスコミ関係者として府警の捜査上の報道要請に従って、「よく見ると明らかに1台です」と台詞を喋っているわけだ。警察の代弁であり、大衆への説得(情報操作)なのだ。考えてみるといい。警察の鑑識はプロである。車が1台か2台か、目で見て識別できるものならすぐに判断できている。警察の鑑識が見誤ったということは、映像だけでは1台か2台か判別不能なのだ。縦列駐車なら、2倍のスペースを縦に使っていて、影と形に2台分の長さが反映するはずなのに、それすらも警察の鑑識は見誤っているのである。それだけ防犯カメラの映像が不鮮明で、映像だけではよく分からなかったのが真相なのだ。2台が1台に修正されたのは、映像の詳細解析で得た事実ではなく、知人のタレコミによって事件の認識が変わり、府警の捜査方針が変わった結果である。知人は8/16に容疑者と会い、怪しい挙動を目撃している。おそらく、翌8/17には知人から警察に一報が入り、8/18に捜査本部が通報を吟味して容疑者と車種を特定し、8/19に本部長の指示で単独犯へと捜査報道が切り替えられたのだろう。富川悠太は府警に協力し、府警の誤認と誤報の尻拭いをしてやったわけだ。上手な芝居だった。それはともかく、駐車場の防犯カメラは、解析のプロでも車が1台か2台かさえも見分けられない粗い解像度なのであって、今回の捜査の決め手になってないことが証明できる。

c0315619_15115054.jpgこの8/19の富川悠太の「演技」報道があったとき、同時に、府警が黒いワンボックス車の目撃情報を国道170号線沿いで聞き込みしているという話も紹介された。実際には黒ではなくてシルバーグレーだが、府警が車種を特定していたことが窺える。府警が、証拠固めにさらなる目撃情報を集めていた。その一方で、府警は容疑者への張り込みを水面下で始め、8/21に堂山町(梅田)から柏原市に向かう後を尾行して、少年の遺体遺棄現場を突き止め、逮捕可能な決定的証拠を握るに至る。通報した知人は2007年から容疑者と付き合いがあり、ということは本人の前歴も知っていて、この事件の報道で大阪中が騒然とする中、8/14の電話の話と8/16の怪しい素振りから、この男が犯人だと直感したのだろう。もし、この知人からの通報がなければ、今頃、大阪府警は車2台を使った複数犯の犯行という仮説のまま捜査を続けていて、真犯人は捜査線上に上がらないまま、ほとんど迷宮入りに近い状態になっていたに違いない。通報こそが決定打だった。この容疑者は、過去の犯歴からもまさしく今回の犯人像そのものに当て嵌まる。だが、どれほど防犯カメラの映像があっても、事件の犯人を自動的に教えてくれる情報システムなどない。防犯カメラは、被害者2人が車に連れ込まれる瞬間を捕捉していない。遺体遺棄の現場は撮っていたけれど、映像が不鮮明で車種すら特定できなかった。それが、この事件と防犯カメラの関係の真実だ。

c0315619_18114381.jpg谷口真由美の直言は正鵠を射ている。防犯カメラは、犯人の絞り込みに全く役立っておらず、車種の見分けにも繋がっていない。きわめて事後的に、後づけで犯行の証拠を固めているだけだ。京阪沿線の駅前という人通りの多い都市空間でも防犯カメラの死角は無数にあり、この種の犯罪者は死角を慎重に計算して犯行に及ぶ。むしろ問題なのは、防犯カメラが大量に設置されているという想定と観念から来るところの、現代市民社会の間違った安心感であり、倒錯した防犯態勢の達成意識であり、警察の怠慢や関係者の不用心と無神経だろう。防犯カメラが商店街や駐車場で多く監視に活躍しているという事実や前提は、この種の病的な犯罪を防ぐ上でどうやらほとんど効果を発揮していないし、犯罪の捜査にもよく貢献していない。刑事の推理を十分に支援できていない。逆に、警察を防犯カメラ漬けにしてしまい、予防と警戒の意識を希薄にさせ、映像解析に執心していれば何か手がかりが掴めると錯覚させる方向にシフトさせている。今回の事件の捜査全体を顧みて、敢えて言えば、防犯カメラの存在は、市民と警察におけるこの種の犯罪抑止の主体性を不全にし、当局者が持つべき本来の緊張感を弛緩させ、無関心の弊害に導いたとすら言えるのではないか。


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by yoniumuhibi | 2015-08-24 23:30 | Comments(4)
Commented by 愛知 at 2015-08-24 20:43 x
マスコミによる府警賞賛を胡散臭く感じてましたが、ご教授のようなカラクリだったんですね。右欄(ツイッター)でご紹介の「5つのやくそくクイズ」ひどいですね。私は府民じゃありませんが、こんなものにいくらの税金が投下されたのかと驚きです。警視庁でも、それとそっくりの「ドキドキまあちゃんゲーム」がありました。当地の県警は子供向けのマンガゲームは作っていませんでしたが、少年非行防止啓発ビデオ「後悔~切れた絆~」を制作、貸し出していました。これも税金ジャブジャブの印象です。地方議会は正しく機能しているのか。

火災の初動捜査で警察は、油性反応の検査として、灰(焼残物)をバケツの水に入れて油が浮くか見るのですが、検出限界は10万μg/g。これは金がかからないからいいのですが、問題は検知管。検出限界は5000μg/g。これは当然、予算が必要なのですが、人体嗅覚の検出限界は30~300μg/g。人の鼻にも及ばない検知管で油があった、ないと言ってるわけです。新聞社もそれを真に受けて。ちなみにガスクロマトグラフ質量分析であれば検出限界は0.3μg/gまで精度が向上します。

犯罪の防止は警察の職務の1丁目1番地ですが、ご教授の通り、一連の報道は「主体性を不全に」していると思います。不全に積極的に加担しているのが新聞、テレビというメディア。富川解説は見ていましたが、実に滑稽でした。最初は別角度のビデオもあると言っていましたが、それも警察情報の鵜飲みだったんでしょうね。実に情けない限りです。
Commented by 山椒太夫 at 2015-08-24 21:55 x


大阪府警は、反原発の運動に対する弾圧はことのほか熱心です。
http://blog.goo.ne.jp/kansai-dan/e/f35be43f70d0fd5e4bd8e2fa2608af1c
防犯カメラは、警察署内部やその周辺、キタやミナミの立ち回り先に沢山必要では。
Commented at 2015-08-25 00:38 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by at 2015-08-25 03:51 x
主様、喫緊の課題は戦争法案じゃないですか?彼、彼女が亡くなったことに日本社会に病理があることは明らかですが、政治に通呈する物があるのでしょうか?


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