非核三原則の放棄に出た安倍晋三 - 核武装へ布石を打つ思惑の観測気球

c0315619_16435482.jpg8月6日の広島の平和記念式典の挨拶で、安倍晋三が非核三原則について言及しないという事件が起きた。1994年以来、式典に列席するようになった歴代首相がずっと触れてきた「非核三原則の堅持」の文言を、今回、初めて安倍晋三が式辞から削除するという暴挙を行い、その夜のニュースで大きく報道されて波紋が広がった。NHKは何も報道しなかったが、NEWS23の冒頭で原爆ドーム前から中継していた岸井成格が取り上げ、国是である非核三原則を否定する意図の表明なのかと厳しく批判した。翌日(8/7)、衆院予算委の集中審議で野党議員からも批判が上がったが、安倍晋三に悪びれた様子は全くなく、腹の中で舌を出して開き直っている真意がありありと看て取れた。故意に、狙いすまして非核三原則の文言の削除をやったことを態度で認めていて、8/6の行動が政治的思惑を持ったアドバルーンの打ち上げであったことを示唆している。8月9日の長崎の日の挨拶には盛り込んだが、従来の政府の平和主義の方針を覆して国民を挑発する佞悪なサプライズの手法は、安倍晋三らしい邪悪な毒気に満ちている。支持率が低落を続ける中で、国民に不評の安保法案を押し通さないといけない身で、よくこんな世論の反発を買う横暴をやるものだと強気に呆れるが、ふてぶてしい面構えを崩さない安倍晋三には自信と勝算があるのだろうか。



c0315619_16441385.jpg安倍晋三は1年前、広島での式辞をコピペにするという非常識な侮辱の挑発をやり、マスコミと世論から叩かれる一幕があった。今回はおそらく、そのことに根を持った意趣返しが動機の底にあるのだろう。それとまた、これまでは安倍晋三への礼賛と服従で一色だったところの、北朝鮮型のマスコミ報道の姿勢が次第に変わり、岸井成格などが遠慮なしに政権批判を言うようになったことに苛立っていて、溜まったストレスを発散する反撃の一発をかましたかったという心理もあるだろう。しかし、重要なのは、やはり安保法案が成立するかという時局で、原爆の日の政府式辞から非核三原則堅持の文言が落とされたという事実で、その作為の持つ象徴的意味の恐ろしさである。この件を批判する報道機関の言論は幾つかあるが、核武装に動く布石だというところまで踏み込んで意図を指弾しているものはない。国是である非核三原則を崩すということは、当然、その先に核武装の狙いがあり、悪魔の国策のパースペクティブとスケジュールがある。今回の事件は偶然ではなく、核廃絶と平和を望む被爆者や国民に対する嫌がらせだけではないのだ。安保法制が国会を通ったら、次は核武装と徴兵制と憲法改定の番だ。今年10月、国連安保理で非常任理事国の改選があり、日本が議席を占めることが確定している。

c0315619_16442658.jpgこの機に、おそらくフジの反町理や平井文夫の政治番組で、日本の安保理常任理事国入りの野望が再び派手にキャンペーンされ、P5に加わるのならそれに相応しい安保能力と責任分担をというプロパガンダが撒き散らされるだろう。NHKの討論番組にまたぞろ岡本行夫や森本敏が登場し、米国だけでは世界の秩序を維持できないからと、日本の軍事的な役割分担と貢献を言い、核は国連常任理事国の必須の資格条件だと本音を言い始めるに違いない。こういう悲観的な推測を警告の意味で論じ始めると、ただちに右翼や左翼リベラルの方面から、日本の核武装は米国にとって脅威だから絶対に認めることはないという反論が返ってくる。米国は容認しないから、それは根拠のない妄想だという見方である。この点はどうだろうか。私も従来はその認識と立場だった。だが、このことは、逆に言えば、米国さえゴーサインを出せば日本はすぐに核保有国になるという構図の裏返しでもある。ある意味で、昔の「瓶の蓋」論の延長のようなものだ。さて、それでは、当の米国の判断はどうだろうか。ここで参考になるかなと思うのは、戦後冷戦期の英国とフランスの核保有の歴史である。本来、核は米国が一国で独占すべきものだったが、ソ連が核武装した後、それへの対抗上、米国はP5の一員で同盟国である英国とフランスの核保有を認めている。

c0315619_16443735.jpg子細に見ると、歴史は少し複雑で、英仏の事情は同じではなく、英国の1952年の核保有については、米国が技術支援をしたという情報があり、フランスの方は単独での核開発を経てのドゴールによる1960年の核保有だ。フランスの場合、ソ連に対抗するという以上に、ドゴール主義の覇権維持・勢力維持の国家目的があり、特にアルジェリア独立戦争に対して鎮圧の道具として完成させ実験したという真相が浮かび上がってくる。そして、技術開発について言えば、マンハッタン計画の時点で多くのフランス人科学者が参加しており、そもそも、キュリー夫妻以来の伝統と蓄積を持つフランスは初発から世界における核技術大国で、核研究の本家本元だったという背景と事情がある。フランスが原発大国であり続けている事実と重なる。が、いずれにせよ、東西冷戦という状況があり、ソ連の核戦力に対抗する必要上米国がそれを認めて利用した事実は否めない。今、まさに世界は新冷戦の図式に変わりつつあり、米国と中国がアジア太平洋地域で覇権を競い、テリトリーの攻防をめぐって衝突する一触即発の環境が現実のものとなりつつある。米国の安保戦略が変われば、日本や韓国をNPT体制下に拘束するという管理方針も変わるだろう。英国とフランスの核保有について、米国がそれを脅威に感じて懸念を覚えるということはない。イスラエルについても同じだ。

c0315619_1644491.jpg米国の、特にタカ派の視線からは、今の日本が核保有国になることは、その米国にとってのリスクはイスラエル以上に低く、逆に米国のアジア政策(中国封じ込め)に活用できて有益なものという評価になっておかしくない。もし、現実に日本が核武装する場合には、米国からそれを大金で購入して配備するという形になり、さらに、国内のどこかに地下発射基地を建設するというリスクの高い固定配備ではなく、潜水艦に装備して深海を航行しながら中国本土を狙うというモバイルな作戦方式になるだろう。日本の核戦略そのものが、米国の指揮下で米国に依存したものとなり、米軍の代行で中国を脅すという位置づけになるはずだ。そうなると、核の開発にせよ実験にせよ装備にせよ、100%自前の必要はなく、これまでのどの国の核武装とも違う形のものになる可能性がある。北朝鮮やインドやパキスタンのような、大々的な示威効果を狙った発表の必要はなく、ある日、閣議決定がされ、その前後にマスコミのリークで海自の潜水艦への装填がひそひそと伝えられ、右翼系論者によって内幕が披露され、既成事実化されるという、そういう隠微で泥縄式の核武装になるのではないか。日本には45トンのプルトニウムが保有され、うち9トンが国内にある。これを核兵器に転用するのではないかという疑念はずっと言われてきた。

c0315619_1645147.jpg最も驚いたのは、野田政権時の2012年6月の、原子力規制委員会設置法と原子力基本法の改正だ。このとき、政府は原子力の利用について「わが国の安全保障に資することを目的とする」という文言を入れている。2012年の6月と言えば、ちょうど官邸前で反原発デモが盛り上がっていた時期だった。そしてまた、8月6日と8月9日の2か月前のことでもある。だが、この件は報道では取り上げられたけれど、国内で大きな反対世論が起きることはなく、民自公の合意であっさりと法文化されて国会を通過した。それから間もなく、尖閣国有の政局となり、中国国内で大きな反日デモの嵐となった。今、思うと、日本の核開発と核装備は相当に進んでいて、情報が表に出てないだけではないかという疑念を覚えてならない。民主党政権のときに、しかも福島原発事故から1年後の局面で、原子力を安全保障に利用するなどという国策方針が決定されるのはどう考えても異常だろう。私は、この国の支配者であるジャパンハンドラーズと右翼は、中国に対する(謀略発動の)開戦を計画していると考えている。今回の安保法制も日米ガイドラインもその一環だ。もし日本が中国と戦争を始めるとなれば、当然、核武装した上で開戦に踏み切るはずで、核戦力での作戦というカードを手に入れた上ででないと冒険には出られないだろうと思われる。

c0315619_16451312.jpgこっちにも核があるぞ、いざというときは使うぞという脅しの軍事能力を手中にして、その威嚇の効力を最大限に利用して、南の海と島を作戦範囲にしたコンバットを始めるだろう。2002年5月、小泉内閣の官房副長官だった安倍晋三は、早稻田大学での講演で「自衛のための必要最小限度を超えない限り、核兵器を保有することを憲法は禁じていない」と明言、核武装を堂々と肯定した。今の補佐官の礒崎陽輔の「法的安定性なんてどうでもいい」よりも、その中身からしても地位からしても、はるかに重大な問題発言のような気がするが、更迭の動きは出なかった。SEALDs批判で注目された武藤貴也は核武装論者だ。衆院で当選2回組のいわゆる安倍チルドレンには、核武装肯定派の右翼がかなりいると思われる。ネットを検索で掻き回すと、2005年か2006年の毎日新聞の衆院議員アンケートで、全体の17%に上る83人が「国際情勢によっては核武装を検討すべきだ」と回答していたらしく、その中に、麻生太郎、下村博文、小池百合子、高市早苗、城内実が含まれていたという情報に出くわす。10年経ち、肯定派の比率はもっと増えていることだろう。昨日(8/9)、TBSのサンデーモーニングを見ていたら、米国の専門家が出てきて、次に核武装しそうな候補国として、イラン、エジプト、サウジアラビア、アルジェリア、トルコを挙げ、東アジアでは韓国と日本を挙げていた。

あやまちは二度と繰り返しませんと言いつつ、もう十分に繰り返すところに至っているのではないか。


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by yoniumuhibi | 2015-08-10 23:30 | Comments(6)
Commented at 2015-08-10 18:45 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 愛知 at 2015-08-10 20:40 x
「安倍晋三が非核三原則について言及しないという事件が起きた。」ご指摘の通り、まさに「事件」であると考えます。本来、新聞社は「号外」を出すべきです。法制局長官の交代、沖縄の2紙を潰せ、法理上、核の輸送は可能、主権在民は誤り。私はこれまでいくらでも新聞社が「号外」を出すべき話題はあったと思います。ご教授の通り「泥縄式」の核武装は、戦争法案とは無関係に成立しそうな状況です。新聞社の良識ある諸君は、「号外」の輪転機を回せ。「号外」の鈴を鳴らせ。
Commented by 愛知 at 2015-08-10 23:19 x
貴下前ブログには熱いメッセージが寄せられていました。かくいう私もその一人です。原爆の悲惨には言葉を失いました。しかし日本は単なる被害者なのでしょうか。自身、気道熱傷で入院経験があり、「死ぬより辛い」を経験しました。その前、日本市民兵がニューギニアやグアムで何をしたでしょうか。刑法上「死体損壊」であり微罪かもしれません。硫黄島、東京以下、全国大空襲、沖縄、広島、長崎、そしてく福島まで。全市民が謝罪の祈りを捧げるべき慰霊の日です。「原発のなかとかじゃ、日本の経済は成り立ちゆかんごたるね。」少数意見を排除しませんが、どうぞ生きて靖国へ。子や孫は連れていかないで。
Commented by NY金魚 at 2015-08-11 08:44 x
◆ 長崎の平和式典を観ようと、おおぜいの方々とアッパーウエストのチャーチに集まったのですが、被爆者代表・谷口稜曄さんの誓い言葉の途中でプッツン。サテライトTVの電波障害のような状態で、とうとう最後までこの放送は観ることができませんでした。あとで家で観たら、谷口さんのすばらしい「集団的自衛権の痛烈な批判」の直前で切れてしまっていたのです。この部分書き出し:谷口「戦後日本はふたたび戦争はしない、武器は持たない、と世界に公約した『憲法』は制定されました。しかしいま集団的自衛権の行使を押しつけ、憲法改正 を押し進め、戦時中の時代に逆戻りしようとしています。(拍手)いま政府が押し進めようとしている安保法案は、被害者をはじめ平和を願う多くの人びとが積みあげてできた核兵器廃絶の運動・思いを根底から覆そうとするもので、許すことはできません。(大拍手・アベの悲痛な顔のアップ)核兵器は残虐で人道に反 する兵器です。廃絶すべきということが、世界に圧倒的な声になっています。」…続く…
Commented by NY金魚 at 2015-08-11 08:45 x
…続き…◆ この「長崎市英語音声放送」は100%同時通訳の英語音声で、世界に発信していたのですが、この部分から切れるのはどう考えてもおかしい。だれかが故意に削除したとしか考えられません。英語圏のひとは、谷口さんの安保法制の批判の言葉を聞いていかったと思っています。昨年の被爆者代表・城臺さんのカッコいいタンカも、政府に提出する草稿には削除を恐れて入れていなかったので、草稿を直訳した英語放送には出てきませんでした。日本の市民の真摯な声を、正確に世界に発信することが必然です。
◆ 主催者がi-phone から小さな画面に接続してくれたNHKワールドの画面には、見たくもないアベが映り、広島での非難をかわすため、とってつけたように「非核三原則」を語っていましたが、まったく真逆のことを平気でウソつきつづける、オオカミだよぅ少年のなどもはやだれも信じるわけはない。フラストレーションいっぱいで会場のチャーチをあとにしました。
◆ 参院:「秘書官が何度も原稿をチェックしてるのに、非核三原則の発言しなかったのは何故ですか?」という蓮舫議員の質問に、アベ:「私の判断です」 と白状した。ふざけんな!

Commented by 長坂 at 2015-08-11 11:34 x
「日本が核武装?」「アメリカが許すわけないじゃん」と今回のブログを読むまで高を括っていました。アメリカが軍事費を削減するとアジア諸国が自己防衛で、核保有をめざすと懸念する声もある一方で、、、オーストラリア、日本、韓国はアメリカの核の傘から出て自分で核武装しろと。中東と違い民主国家、シビリアンコントロールが効いている、テロリストがいない(核保有合格だって)。中国北朝鮮には核兵器で対峙、力の均衡で地域の安定をと核兵器の奨励。核兵器廃絶なんて夢のまた夢、新たな冷戦ですか?
あれだけ凄惨な事が起こっても何も学ばず、口先だけ「唯一の被爆国」と言い早く終わらせたい長崎でのスピーチ。アメリカ議会での熱のこもった演説とは大違い!


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