共同の世論調査で護憲派が60%に - 民意を正しく議席に反映する政治へ

c0315619_1747187.jpg共同通信が7/22に発表した世論調査が興味深い。「憲法改正」の是非を問うた郵送方式の回答で、「このまま存続すべきだ」が60%になり、「変えるべきだ」の32%の2倍の結果になった。この数字には驚かされる。感無量だ。護憲派が国民の中の圧倒的多数となった。改憲派が完全な少数となった。日本国憲法の普遍性は、歴史の中でこうして危機になると真価を発揮する。力強く生命力が甦る。100年や200年では終わらない不滅の価値があることが確認される。日経が2004年から2015年までの世論調査をグラフにした記事があり、護憲と改憲の比率の変化を見ることができるが、護憲派は2000年代後半からどんどん増えて行き、とうとう改憲派の2倍のボリュームに達した。世の中全体が右傾化しながら、反中反共のイデオロギーが空気中で毒々しく濃密化しながら、その思想傾向とはパラレルに、政治現象としてパラドクシカルに、護憲派が勢いよく増えている。日経が調査を始めた小泉内閣時の2004年、護憲は28%、改憲は55%であり、ダブルスコアで改憲派が圧倒している。10年前は確かにそうだった。10年の間に人々の意識が変化している。憲法の価値を再発見し、いのちとくらしを守るものとして積極評価する方向に変わった。今回の共同の調査に反映された意識の変化は、おそらく一過性のものには終わらないだろう。



c0315619_17471374.jpg10年前と言えば、Blogを始めた頃だが、10年後に護憲派が60%になり、社会の多数派になる日が来るとは想像もできなかった。共同の記事によれば、20年前の1994年の調査では、憲法を「このまま存続」が55%で、「変える」が34%だったとある。そのとおりで、1994年といえば村山談話の1年前であり、河野談話の1年前の時点である。この数字でなければ、河野談話も村山談話も政府から出ることはないのだ。今から20年前は、まだ<鼓腹撃壌>の要素が社会に残存していたマイルドな時代だった。新保守・新自由のイデオロギーも、社会の中で現在のようなマジョリティの信者を獲得していなかった。護憲vs改憲の世論バランスが20年前に戻り、20年前の比率を超えて護憲に大きく傾いた事実には驚嘆させられる。俗世のイデオロギー状況は、ネクタイ幅の変化のように循環と回帰の運動をするのだろうか。この20年間、護憲派はマスコミと論壇の世界で市民権を奪われ、異端の烙印を押されて辱められ、報道の空間から乱暴に排斥されてきた。護憲派がマスコミ空間で罵られるときは、必ずそこに革新という言語がセットにされ、護憲=革新のシンボルが操作されて言説されてきた。護憲=革新=社共は、惨めな歴史の負け犬として表象され、頑迷固陋な「絶滅危惧種」の配役を押しつけられ、田原総一朗や岸井成格によって生放送の番組で恫喝されまくっていた。

c0315619_17472352.jpg特に1990年代半ばから、小選挙区制の導入以降、護憲=革新叩きのプロパガンダ攻勢がマスコミで激化し、護憲派は言論空間で生息する余地がなくなって、思想的正当性を訴える場がなくなった。民主党は改憲派の政党である。小選挙区制になり、二大政党の両方が改憲派の政党になったため、理の当然として改憲が国民世論の支配的立場となる。田中康夫などが頻繁にテレビのディベート番組に登場し、「古い冷戦時代の二項対立は終わった」の言説を振り回し、護憲=革新は時代遅れだと嘲り、改憲が常識だと繰り返し説教していたのを思い出す。護憲の主張には「古臭いイデオロギー」のレッテルが貼られ、矮小化されたイメージが無前提に塗りつけられ、抗弁の機会(討論時間)もろくに与えられないまま、政治番組の悪役として袋叩きにされていた。叩かれ役の定番タレントで出演していたのは、「ですう」の語尾で弱気に口をすぼめて改憲派に媚びる仕草を見せ、護憲派を異端にする言論工作に貢献していた福島瑞穂である。そういうテレビの政治討論が10年続き、護憲=革新=古い過去のイデオロギーという悪質な刷り込みが無限に反復され、2005年の世論調査(日経)の結果になっていたのだ。自民と民主以外の左の政党は無責任政党と決めつけられ、言論の公民権が強引に剥奪された。国民は自民か民主かを選ぶしかなく、改憲派に改宗せざるを得ない境遇に追い立てられた。

c0315619_17473654.jpgどうして護憲派がこんなに増えたのか。第二次安倍内閣発足以降の、2013年春の3分の2ハードル変更の改憲策動、2013年冬の秘密保護法、2014年夏の集団的自衛権の解釈改憲、そして今回の安保法制と、うち続く極右改憲政策、戦争準備政策に対する拒絶感と危機感だけが人の意識を変えたのだろうか。それは重要な要因だろう。が、人がトレンドだった改憲から離れ、世間で異端とされていた護憲の立場に戻るにおいては、もっと他に要因があるように思われる。それは二つある。一つは両陛下で、もう一つは沖縄だ。2010年代も半分が終わったが、2010年代前半の日本の政治において、人が右翼のイデオロギーを相対化して正気に戻る上で、きわめて大きな役割を果たしたのが、両陛下と沖縄の存在だったと言える。特に両陛下の影響は決定的で、右翼の論者やマスコミも両陛下を正面から叩くことはできない。2年前、2013年の誕生日の所感において、皇后陛下は「五日市憲法草案」に言及し、ベアテ・シロタと高野悦子に追悼の言葉を手向けている。「五日市憲法草案」が日本国憲法の源流だと賞賛し、関心を向けよと国民に諭している。自分がこのことを言うのは、この年に改憲騒動があって憂慮したからだと率直に理由を説明している。「五日市憲法」とベアテ・シロタ。果たして、今のマスコミで、ここまで強く踏み込んで護憲を説得できる論者(コメンテーター)がいるだろうか。誰もいない。

c0315619_17475017.jpg皇后陛下の主張と立場は、今のマジョリティである右翼からすれば、きわめてラディカルな政敵の左翼リベラルであり、官邸からすれば目の上のたんこぶの厄介な障害だろう。相手が普通のマスコミ論者であれば、テレビ局に手を回して番組を降板させたり、圧力をかけた上で買収したりが可能だが、残念ながら皇室に対してはそれはできず、国民の信頼と尊敬を集める両陛下には右翼も一切手を出せない。少年期に戦争を体験し、戦後、憲法と共に成長した天皇陛下の護憲の意思と信条は固く、そのメッセージは政府の妨害を突き破って国民に発せられる。そのことで、マジョリティである保守層も含めた広範な部分に刺激が与えられ、危機感が共有され、世論調査で護憲が多数という数字に繋がったのだろう。今日、両陛下は護憲のシンボルになっていて、憲法の価値と意味を国民に教育するエバンジェリストになっている。沖縄について言えば、この5年ほど、この国の中で沖縄の存在感は実に大きくなった。無視できない力と地位を得た。今、この国の政治でよく野党の存在感を示し、暴政の防波堤となって国民全体を守っているのは、沖縄と皇室と外国人記者クラブの三つである。国会の中に野党はいない。マスコミも政府与党をチェックしていない。政府の沖縄に対する態度は、NHKのそれを見ることでよく分かる。慇懃無礼。否定したくても否定できず、妙に「寄り添う」態度を演出してうわべで機嫌をとろうと屈折したポーズで面妖に応対する。

c0315619_1748255.jpgさて、結論として言いたいことは、この護憲vs改憲の民意のバランスが正しく国会に反映されなくてはいけないということだ。憲法を守るのか変えるのか、この問題はまさにこの国の政治の基本のイシューであり、常に論議され論争されているテーマである。また現実には、すべての重要政策の対立がこの基本軸に沿って配置される構図になっている。護憲と改憲の対立は、簡単にイデオロギー表現で置き換えれば、戦後民主主義か新保守・新自由かという分類で整理することができるだろう。問題なのは、こうして世論では60%が護憲なのに、国会には護憲派が10%しかいないという事実だ。国会の衆参の議席は改憲派が90%を占めている。小選挙区・二大政党制という悪魔の仕組みによって、このような非民主的な政治が実現してしまっていて、常に民意とは逆の政策が法律と制度に化けてしまう。憲法や安保法制だけではない。2013年の特定秘密保護法は、国を揺さぶる激動の政局となったけれど、日経の調査結果ですら、反対が50%、賛成が26%で、反対派が賛成派の2倍だった。原発再稼働の世論調査でも、社によって多少差はあるが、ほぼ賛成が反対の2倍の数字になっている。国の重要政策なのに、国民多数が嫌がる、少数派が支持する政策の方が問答無用で採用される。消費税増税も同じだ。もう、こんな異常な政治状態を続けるのはやめないといけない。選挙制度と政治システムを変革し、民意が正しく国会に反映される仕組みに直さないといけない。

護憲派が改憲派を数で逆転し、20年前の正気に戻ったことは画期的で、この正気を政治システムで勢力として実現し、多数意思を堅固に保全する仕組みにしないといけないだろう。私は、立憲党の提案をしたが、立憲党による政権運営と同時に、中選挙区制に移行回帰させることで、民意による政策選択がストレートに議席に反映される正しい政治体制にすることを強く訴えたい。自民党と民主党の二大政党制は不毛だった。それは有権者を政治から疎外し、民意を国会から遠ざけるだけの無意味な劣化システムだった。護憲を求めているのに、選挙になれば、選挙区に改憲派の候補しか立たない選挙が押しつけられた。選挙区の二人の候補は、二人とも政策に差がなく、揃って改憲派で、TPPに賛成で、消費税増税に賛成で、辺野古新基地に賛成で、原発再稼働に賛成の候補だった。口先では少し違ったことを言っても、永田町に戻れば選挙の公約をすぐに忘れる政治家だった。中選挙区制に戻し、立憲党の長期安定政権の下で憲法が安心に守られる恒久システムを構築したい。


c0315619_17481863.jpg

[PR]
by yoniumuhibi | 2015-07-24 23:30 | Comments(4)
Commented at 2015-07-24 19:57 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2015-07-24 21:49 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 愛知 at 2015-07-25 00:08 x
御ブログにて再度ご紹介の―――皇后陛下お誕生日に際し(平成25年)宮内庁―――を読み返し。憲法論議について陛下は「主に新聞紙上でこうした議論に触れながら」と仰り、胸が詰まります。「五日市憲法草案」について、「基本的人権の尊重や教育の自由の保障及び教育を受ける義務、法の下の平等、更に言論の自由、信教の自由など」「市井の人々の間に既に育っていた民権意識を記録するものとして、世界でも珍しい文化遺産ではないかと思います。」と続き、両陛下のご労苦と気高い理想に深く首を垂れます。7/20、両陛下は那須町の公民館で入植者と懇談されたため、NHKニュース7でのお声を期待していたのですが。最後。相撲の前にチラッと。NHKさん、本当にひど過ぎ。まるで「左」も触りだけ、みたいな。「暴政の防波堤となって国民全体を守っているのは、沖縄と皇室と外国人記者クラブの三つである。」貴下ご教授のままです。パロディ版ひげの隊長云々を探していて昨夜偶然見つけたお宝映像がYouTubeにあった―――不破哲三 前共産党議長 戦後70年を語る―――です。BS11の約42分のインタビューで、昨夜は視聴回数750回程度、さきほど確認で987回でした。御ブログでご紹介の京都での演説もすばらしく感動いたしましたが、こちらの42分では戦後の政治史をきわめて科学的に、論理的に解説されており、発見も多く貴重な勉強でした。いかにして全権委任につながる2大政党制を産む小選挙区制が実現したのか、そのバーターが何であったのか。御ブログ記事のように極めて明瞭です。政党助成金の問題も、鼓腹撃壌の平凡なる吾身には驚きでした。もっと聞きたかった共産党が多数派となったときの構想、連合政府。貴下ご提唱の「立憲政府」に通じるものであると心躍りました。ご教授の市民を守る三つにAMラジオ、文化放送「ニュースパレード」も加えて頂けたらと思います。報ステで知りましたが、多くの自治体も戦争法案NOと発言と。勉強することに溢れる記事の配信に深謝申し上げます。
Commented at 2015-07-25 00:22 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。


カウンターとメール

最新のコメント

週刊新潮、私も購入。文芸..
by 愛知 at 03:38
(2の2) 豊田真..
by 七平 at 00:02
(1の2) 以前、..
by 七平 at 00:00
>究極のポピュリストで、..
by liberalist at 02:53
自民党の河村元官房長官が..
by ポー at 19:44
twitterに豊田の桜..
by ポー at 15:25
地方在住者で、東京都民で..
by きく at 00:19
橋下徹が安倍内閣に入った..
by エドガーアランポー at 17:57
今度の都議会選挙は小選挙..
by liberalist at 00:03
一番問題なのは、逮捕状ま..
by 私は黙らない at 07:13

Twitter

以前の記事

2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月

記事ランキング