審議時間が消化されてゆく焦躁 - プロレスの民主党、動かない日弁連

c0315619_15411721.jpg週末、テレビで何度か百田尚樹の問題の場面を目にしたが、気持ち悪くて見ていられない。公共の電波に流す素材としてつくづく不具合で不適切であり、コードに抵触した放送事故を見せられている感覚がする。その口上は、路上で威嚇の怒声を張り上げている迷惑な街宣右翼そのものだ。市民社会の良識や理性とはおよそ相容れない、野蛮で凶悪な政治ゴロの姿である。こんな毒性の強い政治映像をテレビで見ながら成長する現代の青少年を不幸に思い、そこから免れることのできた自らの幸運をしみじみと感謝する。けれども、よく考えてみれば、百田尚樹の猛毒のコンテンツはこの市民社会のそこら中にバラ撒かれているのであり、WILL、WEDGE、Voice、SAPIOなど、駅の売店や駅前の書店などに夥しく並んでいて、日常空間に犇めいている密度の濃い政治主張なのだ。私自身がそれを避けて見ないように努めているから、なるべく意識的に隔絶して生活しているために、それに拒絶反応することができるのであり、極右異端であると定義づけて排斥する態度を維持できているのである。客観的に見れば、このイデオロギーの病弊は社会のかなりの部分を覆っている。だから、百田尚樹にしても、あの自民党の右翼議員連中にしても、それを暴言とは思わず正論だと確信して平然としているのだ。あのゴロツキ風の自民党議員たちは、選挙で当選した「国民代表」なのである。



c0315619_15412832.jpg安倍晋三の陣笠であり小型ロボットであるあの右翼議員たちの集合、彼らこそが今回の戦争法案の担い手であり、戦争法案を人格に体現したものに他ならない。彼らが権力を握り、そのイデオロギーの動機と目的に従って戦争を始める。PRCとCPCを潰すために国策としての戦争を遂行する。戦前の大政翼賛会の右翼壮士と同じように、日本の国民を戦争に駆り立てる。そして、どれほど悲惨な破滅の結果に終わっても、戦前の右翼権力者たちと同じように彼らが戦争の犠牲になることはないのだ。一介の弱い庶民ではないのだから。百田尚樹を担ぎ、百田尚樹と意気投合して気炎を上げる自民党の右翼議員の人品骨柄の怪しさは、戦争法案の立法内容の不全さ面妖さと本質を同じくしている。人品骨柄の怪しい規格外の議員たち、粗悪な不良品としか言いようのない彼らが、どうして国会議員になってしまうのか。中選挙区制の時代であれば、このような不逞の者たちが議員になる条件はおよそなかった。小選挙区制になり、候補者はすべて党本部が決定する仕組みになってしまったから、安倍晋三のチルドレンが一回の選挙で虫がわくように繁殖してしまう。中選挙区制の候補者選定では、地元の論理と党本部の論理が緊張関係で成り立っていて、地元が候補を育てて中央に押し上げるという契機が強かったが、小選挙区制になって、候補者はある日突然、疎遠な者が有権者の前に立ち現れるようになった。

c0315619_15415956.jpg有権者は、候補として立った者の中から選ぶしかないから、候補者が決まった時点で選挙は半ば終わっている。小選挙区制は、選挙区の有権者が候補を育てるという民主主義政治の重要な要素を剥奪してしまった。小選挙区制を導入したのは、25年前の山口二郎の「政治改革」のムーブメントによってである。最近になってようやく、小選挙区制が政治家の資質を悪化させ、政治の劣化と不全を招いたという認識が一般に広がり始め、小林節なども反省を言い始めている。だが、「政治改革」を扇動した張本人である山口二郎に対しては、誰も批判の言葉を投擲しようとしない。口を噤んでいる。どうして山口二郎が免責されるのか、指弾されないのか、私には全く得心がいかないが、この国の常識として断言できるのは、「政治改革」に関する代表的著作を一冊挙げよという現代史の試験問題が出たなら、その正答が1993年刊の岩波新書『政治改革』だという事実だろう。「政治改革」を唱えた政治学者の代表が山口二郎であることは誰も否定できない。「政治改革」は市民が要求したものではなかった。小選挙区制を導入してくれと、民衆が請願してデモ行進や署名運動したことは一度もない。消費税と同じで、上から下りてきた政治であり、支配層が言い出し、それをリベラルの朝日と岩波が積極容認して推進し、左派が切り崩されて実現した法制度だ。消費税やTPPと同じで、反対する論者はマスコミから締め出された。

c0315619_15414836.jpg反対する論者も何も、当時のテレビ報道の中で最もラディカルな反政府言論の砦であった久米宏のニュースステーションが、「政治改革」の強力なプロパガンダ基地になっていて、毎晩のように山口二郎と内田健三を出演させ、二大政党制にしたら金権腐敗を一掃できるからと、小選挙区制と政権交代を執拗に宣伝して視聴者を洗脳していたのだ。もともと、小選挙区制の導入は自民党が改憲のために画策した謀計で、ハトマンダーもカクマンダーもその目的を隠さなかったし、右の陣営から旗を振った小沢一郎や大嶽秀夫や舛添要一もまた、「普通の国」の目標を堂々と据えて議論していた。ところが、なぜか戦後民主主義の拠点のはずの岩波と朝日が、売り出し中の山口二郎を旗頭にして左から「政治改革」を引っ張り、左側で抵抗する反対派を切り崩して国民的合意にして行ったのだ。「政治改革」の結果生まれた民主党が、護憲とは一線を画し、改憲を方針にしていることはこの事情を鑑みれば怪しむに足りない。「政治改革」の教祖である山口二郎が、集団的自衛権に反対する学者の看板のような位置で威勢よく出張っているのは、過去の経緯からすれば何とも皮肉な光景である。自己批判は必要ないのだろうか。「政治改革」の責任への反省や総括は要らないのだろうか。立ち回りの巧い厚顔無恥な者だけが出世し、欲得の業界世界でしぶとく生き残る。思い返せば、2007年に消費税増税の旗を左から振ったのも山口二郎だった。

c0315619_15413850.jpg「文化芸術懇話会」の問題が表沙汰になり、言論弾圧だと批判が上がった6/26は、安倍晋三はそれを私的な勉強会だと言い逃れ、言論の自由は認められるべきだとして問題にしない態度を国会答弁でも貫いていたが、翌6/27になって急に青年局長の木原稔を更迭するという方針転換を見せた。土日(6/27-28)に進行中のマスコミの世論調査が気になったのだろう。更迭が効を奏したのか、昨日(6/28)出た日経の世論調査では、内閣支持率は47%の高い水準でとどまっている。この数字は意外であり、失望と不安の気分にさせられる。1か月前と較べて3ポイントしか下落していない。秘密保護法のときと同じパターンであり、法案への反対が支持率の低下に直結していない。前に週刊誌も書いていたが、この法案の強行採決の判断基準となるのは支持率40%のラインだろう。この線を上回っていれば強行採決、下回っていれば解散総選挙、そういう戦略設定になると予想される。この日経の数字は、安倍晋三に強行採決に自信を与える材料になったに違いない。6月末までに、いかに論点のレベルで安倍晋三を追い詰めるかは重要な問題だった。その点で本当に不思議なのは、民主党が国会で本格的な憲法論議を作戦しないことであり、その能力を持っている枝野幸男を委員会に登壇させないことだ。辻元清美、寺田学、岡田克也が出てきて、手ぬるい散漫な質疑を続けている。見ている方は、かったるい馴れ合いのプロレス中継にしか見えない。

c0315619_1542922.jpgこういう民主党のプロレス質疑こそが、与党側に思惑どおりの審議時間消化を遂げさせ、政府与党に「議論は平行線のまま」「論点は出尽くした」「野党は批判ばかりで対案を出さない」と採決を正当化する口実を言わせ、NHKや読売や産経にその工作フレーズを宣伝報道させる原因を作っているのである。審議を止める厳しい追及をしようと思えばできるのに、民主党はその努力をしようとしない。憲法学者が提供した論点素材を活用して論争を深く斬り込むことを試みない。岡田克也のヘラヘラした態度にあらわれているのは、法案を絶対阻止しようとする意思ではなく、法案を通させて自公への国民の反発を高め、来年の参院選での好環境を得ようとする姑息な本音だ。民主党のプロレス態度以上に不思議なのは、前々からずっと提案しているところの、最高裁元判事による違憲判断の表明が登場しないことである。稲田朋美や高村正彦が、憲法学者の批判に反論して法案の合憲性を言う根拠にしてきたのは、「憲法の番人」は憲法学者ではなく最高裁だという主張だった。それなら対策は簡単で、最高裁元判事の判断を示して屈服させてやればいい。どうして、何週間経ってもそれが出て来ないのか。最高裁元判事たちは、今は市井で弁護士を営業している。日弁連がアプローチすればよいではないか。憲法学者がコンタクトすればよいではないか。東京新聞、赤旗新聞が取材すればよいではないか。なぜ遅々として実現しないのか。怠慢としか思えない。

c0315619_15422035.jpgこんな簡単な政治の対抗策は、私でなくても誰でも思いつくものだろう。動ける地位と身分にある者が、どうして勇気を出して効果的な動きをしないのか。今回、デモの出足は非常にいい。強行採決の前の段階の6/24の平日に、雨の中、全国から3万人の抗議市民が集まった図には驚かされた。画期的な動員だ。一昨年、秘密保護法のときは、デモを仕掛けなくてはいけない運動部隊が法案の勉強会ばかりに血眼になり、市民にデモを促すのが遅れた痛恨の失敗があった。その反省からか、高田健あたりが今回は精力的にフットワークしていて、連日、各地で数え切れないほど抗議集会が開かれている。それはよい。だが、足りないものが幾つもあり、それは特に、憲法学者が斬り込んだ論点(敵にとっては傷口)を深く大きくすることで、法案の破綻と逸脱の広がりを日々のニュースとして人々に拡散することである。傷口を深くさせ、深くなったことを分かりやすく見せなくてはいけない。そのことで、自民党や保守マスコミが言うところの、「議論は平行線のままで煮詰まった」「論点は出尽くした」「野党は批判ばかりで対案を出さない」の言論工作を無力化できる。「まだあるじゃないか」「これはどうなんだ」「きちんと答弁しろ」と言い返す材料を掘り起こしていく必要がある。その決定打となるものが、最高裁元判事の違憲判断の会見だろう。安倍晋三が衆院の強行採決に打って出てきたとき、支持率を30%に落とすことのできる、大きな世論材料が要る。

反対派に決定的な正義を与え、マスコミ論者に安倍批判の勇気を誘導し、デモに出る市民を鼓舞する武器が要る。その一つが、待望の最高裁元判事の出現だ。


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by yoniumuhibi | 2015-06-29 23:30 | Comments(6)
Commented by 愛知 at 2015-06-29 20:45 x
百田尚樹に対する正鵠を得た論評、「永遠にゼロ」から―――多くが「感動した」という。私はすっきりしない。(中略)本はよく売れ、映画もヒットした。私はその状況と、ヘイトスピーチなどの排外的社会現象や集団的自衛権は無関係ではないと思う。現代社会は戦後69年にして、凄惨な死を忘れ、単純で美しいものにあこがれているのかもしれない。であるなら、現在はもはや戦後ではなく、すでに「戦前」ではないだろうか。太平洋戦争におけるアジア各国への加害も含め、亡くなった尊い犠牲の上に、私たちは平和憲法を手にし、現在の日常が成り立っているのである。「戦争を永久に放棄する。」私はこの永遠の誓いに勇気づけられ、誇りを感じる―――日本福祉大学主催第12回高校生福祉文化賞第4分野、最優秀賞、盈進高校2年生、川上明莉さんの『永遠のゼロ』への感想文から引用。御ブログ2015年4月14日記事、池澤夏樹の転向ー「新聞記者、ジャーナリズムの転向から始まる」への小員コメントより再度。「みるく世がやゆら」与勝高校3年生、知念捷君に続く。
Commented by 私は黙らない at 2015-06-30 03:17 x
「文化芸術懇話会」の件、あまりの稚拙さに大変驚き、にわかには信じられませんでした。以前、ブログ主様が言っておられた日本国民の「劣化」の現実に驚愕いたしました。一体、この若い議員達の頭の中はどうなっているのでしょう。なんで、こんな人達が国民の代表になれたのでしょう。あまりにあきれた事態に、もしかして、自民党内の反安倍派が、しかけたプロットかとも思いましたが、そんな陰謀さえ図れるほどの頭脳を持った人もいなさそうな気がしてきます。だいたい、こんな百○なんて、いかにもイカサマっぽい輩を国会議員の勉強会なんかに普通連れてきますか?このチンピラみたいな若造達、なんとかなりませんか?日本の政治のあまりの惨状に、将来が本当に思いやられ、憂うつでしかたありません。
Commented by 私は黙らない at 2015-06-30 03:25 x
世論調査の支持率が思ったように下がらないことにも、とてもあせりを感じます。どうしてでしょう。巷には、反安倍の声も満ち満ちているというのに。日経の数字、信じてよいのでしょうか。戦後最悪と言ってもよい現政権、それなりに支持率を保っているのは、好景気のせいでしょうか。だったら、反則技かもしれませんが、ギリシャ危機を契機に、株価がドーンと下がって、それにつられて内閣支持率もドーンと下がらないかと半ば本気で思ってしまいます。一時の経済の落ち込みより、今の日本を「正気」に戻すことの方がはるかに重要だからです。
Commented by 若葉 at 2015-07-01 03:21 x
愛知様のコメントに出てきた感想文を書いたのは我が地元の盈進高校の学生ということで心強い限りです。
やはり、国会議員の質の劣化は「小選挙区制」にありますよね。以前は選べる幅があったものが、絞り込みすぎて誰にも投票したくない感覚が続く現象もそのせいかと。
それから、ただでさえ◯◯チルドレンなので自分の思想信条よりも党議拘束にかかりやすくて権威にすぐひれ伏す、そんな議員が増えたように思えます。
今回、もしも解散なんてやったらまたも同じこと
繰り返されます。まずは不信任案、総辞職の路線で野党が共闘してくれることを願っています。
Commented by at 2015-07-01 22:23 x
プロレスと倣われたコメントがありましたが、興行なら戦争法案などという非人道的な法を審議するところではないのではないでしょうか?国会という立法府は・・・民主も重箱の隅をつついて開期に乗ることではなくて、「そもそも」法案自体が立法府に提出できるものでないことを、何故強固に批判しないのでしょう?そこを言っているのは共産党と、辻元議員ぐらいですよね?参考人の多くが「違憲」と言い、小林先生に至っては街頭に立って安保法制案に反対の意思表示をなされているのですから・・・増してや憲法学者の200人を越える方々が、学者の6500人を越える方々が廃案にするべきだと署名され益々増加の一途を辿っていることは衆知のことです。公明党の後方支援の学会の人たちは、ナチスがハーケンクロイツを錦の御旗としたように、旭日旗を再び掲げようとしているのでしょうか?平和を叫んでいた宗教団体が大政翼賛会に変身するのでしょうか?今こそ学会が大挙して戦争法案に「違憲」だとの声を上げるべきではないのでしょうか?何故学会員は音無しいのでしょうか?そこを突かない野党の政治家も官僚のように自身の年収と老後の経済に備えているのでしょうか?国体を憂えず、市場経済の資本主義に踊らされる笹舟にのって、叡智ある国民の目を誤魔化せるとでも思っているのでしょうか?安倍総理の支援団体の文化芸術懇話会のメンバーのような議員を選んだ地元の責任は追及されるべきだし、前にもコメントしたのですが、国会議員立候補資格の試験を課すべきです。沖縄の歴史事実を、ポツダム宣言とサンフランシスコ条約の日付も中身も知らない議員が国会議員で、年収3000万円も税金を奪い、中学や高校の生徒会や自治会にも劣るディベートをプロレスとして興行していることに我慢なら無いのです。自民党と公明党の協力を崩し、自民党が分裂し、主様の言われるリベラルなパルタイが生まれることが日本国民を救う国家を樹立できると期待するのですが・・・怖いのです、歴史がまた繰り返すのが。期待もまた虚しいのです、裏切られるのではないかと。
Commented at 2015-07-06 12:05 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。


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