安倍晋三と橋下徹による巻き返し - 7月解散総選挙を早期警戒せよ

c0315619_14423794.jpg昨夜(6/14)、安倍晋三と橋下徹が会談をした。菅義偉と松井一郎も同席している。マスコミ報道では、維新が安保法制で対案を提出する方針で、自民が修正協議に応じるとある。安倍晋三の巻き返しが始まった。当初、橋下徹が大阪都構想の住民投票に敗れて松野頼久が代表に就いたとき、維新は民主との連携を深め、安保法案の今国会成立には反対だと明言していた。法案を先送りにさせると言い、年末までの民主との野党再編を方針に掲げていた。ところが、いつの間にか橋下徹が出てきて、対案提出と修正協議という話にすり替わっている。つまり、維新の内部で大阪組と松野組との権力闘争が勃発し、大阪組が奪権に成功して松野頼久が失脚したという意味だ。先週、BSフジの番組の中で(右翼の)反町理が、維新が与党と共に法案に賛成した場合は「僕らの世界では強行採決とは言いませんよ」と言っていた。この場合は、2年前の秘密保護法案と同じ形の採決になる。6/4の憲法学者3名によるハプニング以降、安保法案の情勢は安倍晋三に不利に旋回、憲法論議で窮地に立ち、世論調査では法案の今国会成立に反対の声が圧倒的多数となっていた。会期末の6/24が迫り、政局は会期延長が攻防の焦点となっている。一説には、衆院の再議決規定を睨んで9月上旬まで大幅延長というもある。いずれにせよ、会期延長が決まったときが衆院での採決日程を見通したときだ。



c0315619_14424919.jpg橋下徹と手を握った安倍晋三は、これから法案の政局の主導権を握り直すべく、修正協議をマスコミ報道の関心の前面にせり出し、憲法論議からフォーカスを外す工作に出るだろう。憲法問題が論点として据えられたまま論議が深まれば、法案反対の世論は高まるばかりで採決・成立は断念せざるを得なくなる。巻き返しの策として、維新に形ばかりの修正案を出させ、修正協議と合意という芝居を打ち、その報道をマスコミ(後藤・田崎・藤岡)に流させ、憲法論議を脇役に追いやるのである。さらに、修正協議に民主も入って来いと誘い、民主の分断も狙うつもりだ。民主が修正協議に応じないなら、与党と維新で6月末に採決、民主が乗ってくれば7月中旬まで修正協議、そういうシナリオが思惑されている。自公と維新が協議を重ねて法案修正で合意する展開になれば、民主の右派が協議に乗るべしと蠢動するのは確実で、民主党の中が動揺し、現在の対決路線が怯んで後退する形勢になるだろう。NHKで中継していた特別委の集中審議を見ても一目瞭然だったが、民主の特に右派の議員は法案に反対していない。集団的自衛権の行使に賛成であり、解釈改憲にも反対ではないのだ。前原誠司と長島昭久の質疑は、明らかに法案推進の立場からのものだったし、細野豪志の質疑もまた、法案成立を前提とした上での、現地で民間人を射殺する自衛隊員の法的ケアを要求する戦慄のものだった。

c0315619_1443060.jpg昨夜(6/14)、安倍晋三と橋下徹は何を話し合ったのか。おそらく解散総選挙の相談だろう。自公と維新で修正合意ができ、民主に協議参加を呼びかけ、それが拒否されて衆院で採決可決した直後に、安倍晋三が解散総選挙を発表するのである。解散風のブラフは、民主に修正協議を呼びかける際に、安倍晋三の手下の政局屋たちを使って徐々にテレビで流させるだろう。この戦略は、10年前の2005年に小泉純一郎が放った奇策の成功体験に倣ったものだ。暑い夏だった。あのとき、自民党が分裂して参院で法案否決にまで至った郵政民営化は、事前の世論調査では反対多数となっていた。ところが、なお一定の支持率を保っていた小泉純一郎が、「郵政民営化に賛成か反対か、国民に問いたいッ」と言って解散を宣言した直後、郵政民営化(=「改革」)を支持する世論が急騰し、情勢が一夜でひっくり返り、選挙は一気に小泉劇場のフィーバーとなって転んで行く。キツネにつままれたような政治の進行だった。安倍晋三と橋下徹が狙っているのは、安保法案が憲法違反かどうか国民に問いたい、と言って選挙に持ち込む図式である。憲法学者と民主・共産は違憲だと言っている、政府与党と維新は合憲だと言っている、議論は平行線で煮詰まったままだから、どちらが正しいか国民の一票で決めてもらおうと、その提案で正面から支持を受けることだ。安保法制を争点にしたシングルイシューの解散総選挙を打つ。

c0315619_1443971.jpgこの決着方式を呼びかけられたら、民主・共産は応じざるを得ない。当然、積極的に受けて立つ構えになる。特に、議席(現21議席)を倍増、3倍増させる可能性のある共産は、喜んで選挙を引き受ける姿勢になるだろう。共産は、この選挙で比例で40議席を取り、比例議席で民主を抜いて野党第一党になる可能性がある。だが、問題は民主で、法案が争点になった選挙になった場合、公約をどうするかで党内が揉めて割れる不安が生じる。1年前、集団的自衛権行使が閣議決定で解釈改憲された後、1年間、民主の中ではこの政策を議論してきたが、例によって右派と左派が対立し、結論を集約できず、党として基本方針を纏めることができなかった。今もその延長線上にある。現在の岡田克也と執行部の立場は、安倍政権の下での集団的自衛権行使には反対で、この問題で安倍政権とは協議しないというものである。党として集団的自衛権に賛成か反対かは棚上げしている。安倍晋三と橋下徹はここを衝くのであり、どっちかはっきり態度を決めろと迫るのだ。その際の民主党の動揺と分裂は、当然ながら選挙にも影響する。候補者調整で迷う。マニフェスト作りで揉める。基本的に、多くの地場(選挙区)の民主党支持層は、法案には反対であり、選挙は自治労が支えている。昔の社会党の繋がりだ。だが、候補者は中央が人選するのであり、元官僚、元法曹、元マスコミ、外資系金融、松下政経塾と、ネオコン・ネオリベ族が並ぶ。

c0315619_14432099.jpg本当なら自民党公認で選挙区から出て政治家になりたい、野心ギラギラのネオコン・ネオリベ系の若僧が、選挙区では自民党の世襲貴族が蟠踞していて割り込む隙間がないから、民主党本部に売り込みをかけ、前原誠司や岡田克也や安住淳に気に入ってもらって公認候補の座を射止めるのである。票を入れる有権者は左だが、議員バッジをつけるのは右という、民主党のねじれた伝統の倒錯パターンがある。民主は、勢力挽回が期待された4月の地方選でも負け、来年の参院選の準備すらままならないのが実情だ。今、国民の圧倒的多数は法案に反対で、法案の成立制定を望んでいない。だが、この争点で総選挙になったとき、現実の選挙結果はどうなるだろうか。基本的に言えることは、小選挙区に立つのは、自民、民主、共産の3党の候補者だということである。そして、民主と共産が共闘しないかぎり、小選挙区で自民の候補者を倒すことはできない。上げ潮の共産は小選挙区でも確実に票を伸ばす。小選挙区で共産が候補を下ろす理由はない。民主が共産と政策協定を組み、候補者調整までやる自公型の本格的な協力関係(=民共同盟)にならないと、共産は小選挙区の票を民主に流し込むことはしない。果たして、民主が全体としてそこまで左に寄れるだろうか。常識で考えれば無理で、前原誠司や長島昭久は乗れないし、おそらく、そうなる前に民主は左右に分裂するだろう。党が分裂するということは、選挙で無力になるということだ。

c0315619_1443302.jpg安倍晋三と橋下徹の戦略はここにある。例えば、東京の多摩とか埼玉の選挙区の昨年の結果を見ると、自民と民主と共産の票がどの程度かということが分かる。シングルイシューで安保法案を争点にした選挙と言っても、衆院選である以上、それは政権選択の選挙である。もし仮に、民主が共産と組んで選挙区で候補者を一本化したとなったら、この国のマジョリティである保守層には、その二者択一の選択肢に対してネガティブなインセンティブが働くだろう。自民と民主と共産と3人並んで三択であった方が、中間である民主を選ぶのに心理的な抵抗が少ない。このジレンマは、民主党において常に与件としてある根本的な問題だ。共産と共闘しないと勝てない、が、共産と共闘すると勝てない。結局、ジレンマを克服できない。ジレンマを克服するには、あまりに無能で小粒な人間ばかりが幹部に揃っていて、どうにもブレイクスルーの挑戦と飛躍ができない。マジョリティの保守層にとって、衆院選は政権選択の選挙であり、どれほど争点が単純化され安保法制の賛否に絞られても、やはり景気の問題というのは一番の関心になり、投票時にはその損得利害判断がポイントになる。アベノミクスの信仰も、ひと頃と較べれば衰えたとはいえ、未だに救済妄想にすがっている信者は多く、民主や共産では不安だと言う者も少なくない。こうして綜合的に客観状況を見ると、安保法制で選挙に打って出たとして、必ずしも安倍晋三に不利とは言えないのだ。

c0315619_14434165.jpg無論、私は間違いなく選挙になると予測しているわけではないし、また、面白半分に雑談を政局ネタとして提供しているわけでもない。この政治戦で安倍晋三に勝つためには、安倍晋三の手の内を読まなくてはならず、先読みし、先回りして敵の戦略を封じ、対抗する策を講じる必要があるから提起するのである。趣味の床屋政談を垂れることが目的ではない。相手に勝つためには、相手の身になって考えることが大事だ。解散総選挙は安倍晋三にとって有効な戦略カードであり、解散権は総理大臣が持っている。これをちらつかせることで、攻防で主導権を握って有利に立つことができ、伝家の宝刀を不意討ちで抜くことで民主を無力化することができる。しかも、安倍晋三の相手は選挙にめっぽう弱い岡田克也ではないか。10年前の、小泉純一郎に惨敗したときの惨めで空ろな表情が浮かび、先が思いやられる気分になるのは、私だけでなく民主の支持者も同じであり、法案に反対する全員が共通する心境だろう。解散総選挙は想定に入れなくてはいけない。解散風や抜き打ちがある前に、それを許さないほど安倍晋三に不利な情勢を作って固めることが必要だし、仮に解散に来ても返り討ちにできる態勢を準備することが必要だ。その具体論はまた述べたいが、今はともかく、安倍晋三と橋下徹に主導権を渡さないことが重要で、次々と手を打って攻め続けなくてはいけない。最高裁元判事たちの反論はまだだろうか。高村正彦の外相答弁のテレビ映像はまだだろうか。

効果的な策を一つ一つタイムリーに打たないと、機を逸してしまい、政治戦の進行の中で無意味になってしまう。


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by yoniumuhibi | 2015-06-15 23:30 | Comments(4)
Commented at 2015-06-15 22:43 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 愛知 at 2015-06-15 23:52 x
外務省の青書を見てみました。青書以前、同省トップ頁から二つ目の「日本の安全保障と国際社会の平和と安全」で仰天。その頁トップが「日本の安全保障政策」ですが、(1)日本は適切な防衛力の整備に努め、(2)日米安全保障を堅持するとともに、(3)日本を取り巻く国際情勢の安定を確保するための外交努力や国際平和協力を推進することを安全保障政策の基本としています―――これ、本当に外務省のHPかしら、防衛省と間違えたかも、という順です。それでいながら他の頁では①日米関係の強化、②近隣諸国との協力関係、③日本経済再生に資する云々、また他の頁では従前の①拉致問題、②核・ミサイルの脅威と。ほとんど意味不明、統合性ゼロのHPですが、トップ頁に近い順第1位は軍備。外務省が軍備第1位って。本当に狂ってます。外務省の第1位は(3)の外交努力のはず。野党に岸田の見解を尋ねて頂きたい。日本の外交基本とは何ぞやと。戦争法案、貴下ご指摘の通りと思います。安倍が通すつもりなら、明日にでも通せるでしょう。それがファシズムなんですね。外務省に少しでも憂国の志はいないのか。最後は御名御璽。言い換えれば選挙。
Commented by 若葉 at 2015-06-16 00:40 x
国会審議のネット中継をこのところはよく視聴しています。
今日の委員会審議も、前日の安倍首相・菅氏・橋下徹氏・松井氏の会食があってのことなのでたいへん興味深く視聴しました。

維新の党は、是々非々であると言いたげな論戦でしたね。結局何処に持って行きたいのか不明。
それもそのはず、党の最高顧問の橋下徹氏が今朝の未明から延々と鼓舞してるんだか何なんだか分からないことをしていたわけで。
だからと言って民主党の体たらくも歯止めが中々効かないみたいで、ニコニコ動画では後藤議員のタクシー事件が尾を引いていて、度々の審議中断の意味も伝わりにくいものとなっていました。

そんな今日は、あまりテレビメディアには扱ってもらえないほどのシュールな話題の飛び交う、あの憲法学者お二方の特派員協会記者会見があり、先ほど全編視聴しました。
各方面の学者たちによる記者会見もあったとか。これはもう、17日水曜日に予定されている平和安全特別委員会と党首討論が俄然楽しみになってきました。志位氏の容赦ないであろう追及によって揺らぐこと必至のこの内閣はどうなってしまうのか。この目で確かめたいと思っています。
Commented by インコ at 2015-06-16 11:10 x
「郵政解散」のとき、私は今ほど政治に関心を持つ人間ではありませんでしたが、
いわゆる一般人として持ったのは、『利権に絡む古い体質を敵対視させ、
新しい自民党カラーを打ち出した小泉元総理の演出勝ち』のイメージです。
最近は、安倍総理を筆頭に、菅官房長官、橋下氏とも、どちらかというと、
下降気流のイメージなのに、今の安倍政権に、かつての小泉政権がとったような
効果的なイメージ戦略があるのかどうかは疑問ですが・・・。
そういえば、また取り上げて申し訳ありませんが、
天木直人氏の記事でも、世に倦む日々様と同様、解散・総選挙を予感されていますね。
いくら国民の意思が今の安保法案に反対でも、総選挙になった場合、今の野党では、
どこへ入れるか困る人が多くなりそうで心配です。
とにかく、『安保法案反対!』『安倍政権のやり方に反対!』で、一致団結して国民に示してもらわないと。


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