NHK日曜討論は長谷部恭男を出せ、TBS報道特集は最高裁元判事を出せ

c0315619_1725582.jpg先週(6/4)の憲法学者3名の国会でのハプニング以来、安保法制の論議はすっかり憲法問題に収斂された。1年前と同じ言論状況に戻り、集団的自衛権の行使が憲法上許されるのかという争点になった。今週、時の人となっているのは、先週の憲法審査会で与党側の参考人として呼ばれた長谷部恭男だ。6/8のNEWS23、6/9の報ステの映像インタビュー、6/9のTBSラジオの生出演と、報道番組に出ずっぱりで、この国の憲法学の権威として、政府による集団的自衛権行使を合憲化する詭弁論法を一刀両断で斬り捨てている。安保法案に反対する市民としては頼もしいかぎりで、ここ数日はテレビのニュースが愉しい。政治戦は憲法論議として構図が固まった。少なくとも、衆院での強行採決があるまでは、ずっと、法案が憲法違反になるのかどうかに注目が集まり、論点として動かず、長谷部恭男を代表とする憲法学者vs政府与党(安倍・菅・高村・北側)という図式で論戦が応酬され、国民の関心が高まり続けるのは間違いない。すなわち、これから会期延長の攻防を挟んで月末までの3週間、マスコミと国会とネットで憲法論議が詰められていく。四つのことを期待して見守りたい。一つは、NHKの日曜討論で特集が組まれ、長谷部恭男が生放送に登場してディベートで論陣を張ることである。



c0315619_17251613.jpgこの討論は誰でも見たい。政府側は、高村正彦と北側一雄と西修の3人が揃った形が一番よいだろう。憲法学者側は、長谷部恭男と小林節と笹田栄司でいい。その6人でテーブルを囲み、島田敏男と中川緑の司会でNHKのスタジオから放送すれば、視聴率は間違いなく通常の2倍以上を稼ぐことができるだろう。NHKの中で、この企画で動こうとする者もいるのではないか。NHKも本来はオードクシーの府である。芦部憲法学を法文1号館で学んだエリートが中枢に携わる(べき)機関だ。言わば、この国の枢要な統治機構の一つである。正統の府であり、正統的に運営されるべきNHKが、何かの間違いでファシストに乗っ取られ、狂気と暴走の片棒を担いで国家と国民を破滅に向かわせている。長谷部恭男は東大の法科大学院の院長まで務めた権威で、10年前にNHKが不祥事を起こしたときには、副会長とお詫び番組に出演してヘルプしてやった経緯のある恩人だ。2年前の秘密保護法案の政局のときは、政府側に立って「視点・論点」に出演し、法案を正当化して世論工作する任務まで引き受けている。今回の安保法案をめぐる議論で、NHKが長谷部恭男を出さないという選択はおかしいだろう。6/14でも、6/21でも、日曜討論は必ず安保法制をテーマにしなくてはいけない。それは憲法論議に焦点を当てなくてはならない。長谷部恭男の出演が必須だ。

c0315619_17252831.jpg二つ目の期待は、安倍晋三が出席する次の集中審議で、志位和夫が立って憲法論議で政府側を粉砕するカタルシスの場面である。現在の状況と特別委の進行を考えると、(月末の)強行採決の前の締めくくり総括質疑とは別に、また、政府側が来週あたりに予定していた参考人による賛否意見聴取の前に、安倍晋三を引っ張り出す局面が出現しそうな気配が漂っている。中谷元の弁論能力と面の皮の薄さでは、憲法解釈の政府答弁は維持できないだろう。破綻が大きくなっていく。それは、報ステやNEWS23による批判報道に燃料を投下する結果となり、反対世論のボルテージを高める効果にしか導かない。安倍晋三が集中審議に出れば、政府側は、総理が異例の特別追加出席までして野党の要求に応じたのだからという理由づけで、法案審議の日程を前に進め、採決を正当化する根拠を補強できる。政府側にとっても、これは一つのカードだ。しかしながら、そうして、安倍晋三が出て来れば、そこには天敵の志位和夫が待ち構えていて、閻魔大王の前で裁かれる罪人のように萎縮し、塩をかけられたナメクジのように惨敗する醜態をテレビでさらさなくてはいけない。選挙で議席を増やした共産党は、集中審議で1時間の枠を取れるようになり、見せ場作りに十分な質疑を設計できるようになった。志位和夫が憲法論議でどう政府側を論破するかは、まさしく全国民が注目するところだろう。

c0315619_17253790.jpg砂川判決と72年の政府見解から捏ね上げたところの、政府側の集団的自衛権合憲化の論理は、討論における劇的で決定的な論破の形で、世間の前で破綻を証明しなくてはいけない。そのロジックの欺瞞と破綻を、例えば古館伊知郎が、どれほど分かりやすくフリップに整理して説明しても、それは、その場で反論の出ない一方的な議論であり、単に正論の批判が置かれただけにすぎない。必要なのは、その場に政府側の論者がいて、批判側の論者が抗弁しながら完膚なきまで論破され、議論に窮して沈黙し潰走する絵を見せることである。言論のバトルで批判側が圧勝することだ。討論のゲームで政府側を攻略し降服させ、法案に反対する側の正義を証明することである。その政治を作らないといけない。それは、NHKの日曜討論もあるけれど、日曜討論では司会の邪魔が入る。ニュートラルを偽装した司会者による、長谷部恭男の正論の説得力を殺ぐ狡猾なオブストラクションが予想される。だが、国会質疑はまさに弁論の決闘の場であり、誰かが割って入って勝負を邪魔する余地はない。安倍晋三と中谷元と岸田文雄を相手にして、志位和夫が政府の組み上げた詭弁の積み木細工を解体する展開になれば、中谷元と岸田文雄は下を向いて黙るしかないし、安倍晋三も反論できずフリーズするしかなくなるだろう。横畠裕介が救援に出れば、論理の攻防で完敗する事態となり、政府は取り返しのつかない大火傷を負うことになる。

c0315619_17254612.jpg三つ目の期待は、前回の記事でも提案したが、マスコミ報道が最高裁元判事の意見をサーベイして紹介することだ。この企画と取材は、特にTBS報道特集の金平茂紀が役目として適当と思われる。憲法学者の反旗のハプニングが発生して以降、この政局で劣勢となった自民党は、反論の根拠として(物言わぬ)最高裁にすがりつき、合憲か違憲かを判断するのは最高裁であって憲法学者ではないという主張で防戦するようになった。であれば、最高裁元判事に「違憲だ」と言ってもらえばいい。それで政府与党を撃破できる。リバースをかけられる。自民党側の想定は、最高裁の元判事がマスコミで口を開いて憲法判断などするはずがないという計算だろう。しかし、元判事たちは70歳を超えたリタイアの身であり、法曹の重鎮として自由に発言できる立場の者たちだ。その中には、柳澤協二や阪田雅裕や大森政輔のような良識派が必ずいるはずで、発狂した政府権力に歯止めをかけるべく勇敢に立ち向かう者が出現するに違いない。そのことは期待できるし、希望を持ってよいだろう。憲法学の大御所たちが批判論陣の先頭に立ち、憲法学者の総勢が法案は違憲だと正面から抗議しているのに、学説を学んで昨日まで法曹界の頂点で活躍し、現在は後進を指導する者たちが、それを合憲だと言って政府側に与することができるだろうか。そんな逸脱が許されるだろうか。最高裁元判事たちは態度決定しないといけないし、司法の良識を国民の前によく示す責任がある。

c0315619_17255937.jpg四つ目の期待は、小林節の果敢な行動を見倣って憲法学者たちがデモに出ることだ。法案を単に机の上で批判していればいいわけではない。政治戦に勝ち、政府が法案を撤回しなければ、憲法学者たちの異議申立は功を奏さなかったことになり、要するに敗北したことになる。反対運動をマキシマムに盛り上げ、国民的な力を爆発させるためにも、憲法学者が街頭に出て市民にダイレクトに訴える挑戦をするべきだ。そうすれば、必ずマスコミは絵を撮るし、映像を見た市民が心を動かされ、憲法学者を助けようと路上に出るだろう。憲法学者の次は政治学者の番である。彼らも態度決定を迫られる。Twで名前を並べてみたが、いわゆる保守派・体制派のスタンスとカテゴリーの著名な学者たち、藤原帰一、山内昌之、加藤陽子、御厨貴、佐々木毅、北川正恭、五百旗部真、なども、いずれは態度決定を迫られ、安保法案を是とするか非とするか、自らの立場を決めなくてはいけないときが来る。長谷部恭男を筆頭に憲法学者のほぼ全員が違憲だと言い、不当だから撤回すべしと抗議している法制法案を、これらの政治学者が積極的に容認することが果たして可能だろうか。正当化の論拠を見出して国民の前に説明できるだろうか。普通に考えれば、長谷部恭男の言い分に肯いて、消極的にせよ(皆と一緒に)右倣えする行動を模索するのが自然な対応だ。彼らに態度決定を迫らなくてはならない。衆院で強行採決がある前に、政治学者たちにも反対派の陣営に入ってもらう必要がある。

週初(6/8)のマスコミ報道で驚いたことは、谷垣禎一が安保法制を宣伝する街頭演説を行ったことを報じたスポーツ紙の記事で、反対派の市民が押しかけてプラカードを掲げた写真を大きく載せて伝えたことだ。記事は明らかに反対派の目線からの論調になっていて、この法案に反対する国民の立場を代弁している。反対する学者と市民が善、法案に拘泥する自民が悪と、そういう一般表象が出来上がっている。


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by yoniumuhibi | 2015-06-10 23:30 | Comments(7)
Commented by 愛知 at 2015-06-10 23:26 x
もしもマスコミの方で、こちらのブログをお読みの方がおられれば、良心に従って行動して下さい。私は砂川事件最高裁破棄判決の少し後に生まれました。そんなことまで言いたくありませんが、職業上、何十回も地裁に証人出廷しており、自分が関与した判決だけはコレクションしています。恥ずかしながらですが、砂川事件最高裁の棄却判決全文は昨日、最高裁HPで読みました。「噂には聞いていたが」みたいな感想です。この判決には、それ以上の感想はありません。途中で読むのがしんどくなります。法理も科学も何もない単なる米国から押し付けられた力学に四苦八苦した10人読書感想文というか、それ以下ですね。私は凡人ですから、昭和34年なんて、そんなものだったろうなたという同情さえします。こんな昔から司法は死んでいたんだと。一度だけ、最高裁判決に関わったことが。地裁、高裁勝訴で、最高裁は棄却。最高裁判決を導いたのは重過失だと。今、想っても、あれは何だったのかと。本当に長谷部先生に解決して頂きたい。民事訴訟の最終審として最高裁の棄却はあったはずなのに、意味不明。私は最高裁で棄却された判決の最高の罪人だと。あなたたちマスコミが用意されたのは、「報道」の特等席。誰一人来ませんでしたが。
Commented by 若葉 at 2015-06-11 00:59 x
今日の委員会の様子はネトウヨツール?のニコニコ動画で視聴しました。
来場者数、5万くらいカウントしていましたね。コメントも意外とバランスよく入っていました。

今日のハイライトは、
①憲法を法案に合わせる発言の中谷大臣の撤回
②菅官房長官の、合憲の判断の憲法学者はたくさんいます発言炎上(1人、2人、たくさん?)をかわすために「数が問題ではない」ことにすり替え論法
③横畠法制局長官のロジックに亀裂が入り論破目前まで追い詰められた。特に72年政府見解の、個別的自衛における①②の前提で帰結の③を変容させて今回合憲根拠としていることについて。

ニコ動民たちは、結構な人数が志位さん(ニコニコ内では「C」もしくは「C言語」)登場を待っているようです。カタルシスが待望されているのがコメントに伝わっています。
そして、何人も入れ替わりで同じ重箱の隅をつつくような質疑には飽きてきている。論理的に喝破するような、丁々発止なディベートが求められているのです。

憲法をめぐる議論が広まりつつあることにようやく重い腰を上げたNHKニュース7が久方ぶりに共産の委員の質問場面をオンエアしてましたね。
報ステは本日のコメンテーター中島岳志で簡潔にしっかりと阪田氏と宮崎氏をインタビューに入れていて反論の論客もちらっと出してよくできたコーナーでした。

ネット民たちは、安倍氏の登場とNHKでの中継をとても心待ちにしているようです。でも、たとえ放送されてもニコ動に集まると思う。デモ活動に行く代替なのかもしれない。
安保討議ではあっても、今の大学生はデモ活動あまりしませんものね。今、この時こそやるべきだと思うのですが……




Commented by 長坂 at 2015-06-11 01:31 x
朝日の鯨丘仁とか言う記者のTW
一方、「戦争法案」とか、そういう言い方で国民をあおる左派の姿勢には、全く賛成できない。過去のビジネスモデルを現代にそのまま適用しようという発想に、進歩を感じないし、いただけない。私の懸念は、憲法の最高法規としての規範性を失ってしまうという点だ。立憲主義は民主主義の根幹だからだ。
出た!頭でっかちの勘違い男。日本が又道を誤るかもしれない重大な局面に立たされているのに、「過去のビジネスモデル」とか「進歩を感じない」とか。メディアの戦争責任、朝日の戦争協力忘れたのか!こんな男が記者なんて、朝日は本当に落ちぶれた。潰れろ朝日!
Commented by kuma at 2015-06-11 18:33 x
人文系の学部が消えます。
http://newclassic.jp/23916
Commented by mori at 2015-06-11 19:24 x
国会会議録検索システムで少し検索しただけですが、ご参考まで。
字数制限により質問者の発言等省略した箇所があります。全文についてはご検索を。探せば他にも事例があるかもしれません。
平成11年2月9日安全保障委員会、塩田晋委員の質問に応える高村正彦外相の言。

塩田「(憲法九条を引用して)国家固有の権利としての自衛権、それとこの憲法九条との関係についてお伺いいたします」
高村「国際法上、国家は個別的自衛権に加えて集団的自衛権、すなわち、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を自国が直接攻撃されていないにもかかわらず実力をもって阻止する権利を有しているものとされています。(略)しかしながら、憲法第九条のもとにおいて許容されている自衛権の行使は我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することはその範囲を超えるものであって、我が国の憲法上許されない、こう考えております」

(塩田委員の質問は省略)
高村「主権国家でありますから、国際法上主権国家に当然認められている自衛権、これは個別的自衛権だけじゃなくて集団的自衛権も有しますが、日本国国民自身がみずからの憲法をつくって、それは行使しないと、その集団的自衛権の方は行使しないと決めたわけでありますから、当然日本国政府はそれに縛られる、こういうことだと思います」

塩田「国際的な同盟関係の常識は、自国と密接な関係にある外国が直接攻撃を、自国が直接攻撃をされていない場合でも自国に対する攻撃とみなして実力をもって阻止する権利が集団的自衛権だと一般的に理解されているのではないでしょうか(後略)」
高村「何度も申し上げますが、日本は国際法上一つの主権国家として、個別的自衛権のみならず集団的自衛権を有している。しかし、日本国国民は、憲法第九条というものをつくって、その行使について縛りをかけた。そして、その縛りは伝統的に集団的自衛権は行使しないんだというふうに解釈されておりますし(後略)」

さて高村氏、「憲法九条は集団的自衛権の行使に縛りをかけている」との過去のご発言との整合性如何。
Commented by kuma at 2015-06-11 20:56 x
人文系の学部が消えると、思想界と法曹界が消える。法曹は法科専門学校で十分。思想はいらない。経済・経営学は理系である。実学で産業を発展させる。すべて戦う準備。現代は、言論統制や言論弾圧など必要ない。理系の支配。
Commented by at 2015-06-12 04:50 x
2014年5月6日の安倍晋三によるOECD閣僚理事会基調演説。『~(中略)私は教育改革を進めています。学術研究を深めるのではなくもっと社会のニーズを見据えたもっと実践的な職業教育を行なう。そうした新たな枠組みを高等教育に取り込みたいと考えています。』

コメントにありましたが、これからは理系の支配だと。しかしその結果が小保方氏、笹井氏の事件。皆さん、お忘れですか?世界の三大捏造事件の一つが日本で行われたことを。

過去の日本、理系で名を馳せた方々は文系に造形深く、またその逆も然り。安倍はご存知ないのですね。

報ステの憲法学者へのアンケート最終結果に注目しております。


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