戦争法案を批判する言葉のなかった姜尚中と田中優子の無能と無関心

c0315619_1715665.jpg梅雨の季節。5/27に始まった安保法制の衆院特別委は、6/1までに4日間の審議を終えた。このうち、5/29の審議は午後に野党が退席して閉会になっており、丸一日審議が行われたのは、安倍晋三が出席してNHKの中継が入った3日間(5/27、5/28、6/1)である。審議は週3日のペースで行われ、今週は6/5が予定されているが、野党側が議事進行に反発していて不透明な状況にある。与党側は来週に参考人質疑を計画していて、それを消化させれば次は地方で形ばかりの公聴会を開催、そして最後は安倍晋三を呼んでテレビ中継入りの締めくくり総括質疑をやり、6月末には強行採決という腹づもりなのだろう。自民党国対委員長の佐藤勉は、80時間ほどの審議時間で衆院を通過させると言っており、6月末から7月初が一つの大きなヤマ場になると思われる。ポイントは、6/24に会期末を迎える国会の会期延長で、安倍晋三がG7サミットから帰国した来週から、会期延長と法案処理の政局の駆け引きが始まるはずだ。今は静かにしている後藤謙次や田崎史郎や藤岡信夫がテレビの表で跳梁を始め、カレンダーを指さしながら、政局予想と称して安倍晋三の思惑をそのまま撒き散らし、空気を一つの方向に誘導するだろう。中立を偽装した薄汚いマスコミの政局屋が、安倍晋三の手足となって蠢動を始める。



c0315619_17151898.jpg一方、安倍晋三と距離を置く総務会長の二階俊博は、5/275/30の二度にわたって慎重な審議が必要だと発言、強行採決に反対の意向を示している。与党内にも確実に慎重論の姿勢の者がいる。世論は、毎日の世論調査では、安保法制に「反対」が53%、「賛成」が34%。日経の世論調査では、法案の今国会成立に「反対」が55%、「賛成」が25%で、今国会での成立に反対が賛成の2倍も多い数字になっている。共同の世論調査では、法案について81%が「説明不足」とする結果が出ていて、これは野党側の追い風になるものだ。この法案は欠陥が多く、法理的に破綻していて、政府側が説明できない無理な仕組みのまま上程されている。まともに審議をやろうとしても、答弁は矛盾しまくって立ち往生の繰り返しにならざるを得ない。つまり、最初から丁寧な説明をするつもりが微塵もなく、問答無用の強行採決で成立させることが前提された法案だ。10本の法案を1本に固めるという強引な立法処理をしているため、修正ということも簡単にはできない。衆参二度の強行採決で成立させるか、成立を断念して先送りにするか、政府側は二つに一つの選択と針路しかない。妥協の余地がなく、最後までその戦略を貫くしかない。安倍晋三の性格そのままの手法だ。国民に考える時間を十分与えず、数(多数決)で押し切ろうとするところが橋下徹と共通している。

c0315619_17153374.jpg国会で審議を続けても、議論が深まるとか、法案について国民の理解が進むということはないだろう。むしろ、紛糾と混乱が甚だしくなる。問題は、そのときの政治である。安倍晋三が狙っているのは、国会で審議しても混乱するばかりであり、国家の安保政策の整備は一刻の猶予も許されないものだから、少し強引でも早く決めた方がいいのだという空気の醸成だ。文句ばかり言っても一強多弱の野党は何もできず、国家防衛の責任を果たせず、日米同盟を正しく保全強化できず、日増しに強まる中国の脅威に対抗できないのだから、足を引っ張らずに黙ってろという開き直りの主張である。今回の安保法制の政局で、安倍晋三がマジョリティの保守に向かって強行採決を自己正当化できるのは、この過激な独裁の論理と扇動の弁法しかないだろう。安倍晋三のゴールはここであり、それは2か月後の想定である。安倍晋三たちの戦略の狙いは、この安保法制は分かりにくい問題だから、考えても無駄なのだと、抵抗する国民を思考放棄させるところにある。この問題を理解することを苦痛に感じさせ、抵抗の意思を殺ぎ、思考の拠点と回路を潰すことだ。時間はあっと言う間に経つ。衆院で強行採決される。そのとき、多くの人々は納得していないけれど、秘密保護法案のときと同じ進行と状況になれば、結局、仕方ないと渋々受け入れる態度になってしまう。

c0315619_17154963.jpgこの安保法制がどれだけ非論理的で、取っかかりにくく、輪郭が見えにくく、人をして正面から考えせしめないよう周到に細工されたものかは、内閣官房のサイトで公開されている「『平和安全法制』の概要」と題したPPTの資料を見てもよく分かる。普通なら、重要でありながら分かりにくい法制・法案であり、よく分からないと苦情が殺到しているのだから、政府はなるべく国民にサービスする素振りをして、少しでも分かりやすい(と評価される)説明や表現のアリバイ営為を試みるものだ。どれほど誠意のないポーズだけのものでも、政府としての立場上、言い訳となるサービスを用意する。ところが、この資料は、誰が書いたのか不明だが、締まりがなく不明瞭で、要点が整理されておらず、とても官僚が作成した文書とは思えない粗悪な品質に仕上がっている。こんなものをよく内閣官房の資料として公開できるものだと、プライドはないのかと関係官僚の厚顔無恥に呆れる。宮家邦彦と礒崎陽輔が面倒くさそうに下書きした腐ったメモを、下っ端が嫌々ながらPPTのフォイルにして、それを金正日たる安倍晋三にレビューさせ、さらに醜悪に溶け崩れてドロドロになってしまったという代物だろうか。下痢便のようだ。分かりやすい資料の対極に位置する、落第点の見本のような落書きだ。安倍晋三の脳内が透けて見え、あまりの惨めさに本人と関係者に同情する気分にさえなってしまう。

c0315619_1716339.jpgわれわれが注意し警戒しなくてはならないのは、法案の分かりくさが媒介するところの徒労感と無力感であり、そこから来る精神の粘りの消耗である。この法案に対する批判を行おうとすると、論点があまりに多すぎ、法案そのものが杜撰すぎ、ヘドロのように腐って固まっていて、掴みどころがない対象性に苦労させられる。この法案の政治の粗暴さと取りつく島の無さに辟易とさせられる。国内法制を無視し超越した日米ガイドラインが先に細かく制定され、安倍晋三のDC詣でで8月までに国会を通す約束がされているということにも脱力させられる。そして、憲法9条の正常な世界から果てしなく遠く、法案と9条の間に横たわっている茫漠たる地平の距離感にも呆然とさせられる。二つの間は気が遠くなるほど離れていて、異次元的であり、理性の力で二つの関係性をよく捕捉することができるのか自信を持ちづらい。志位和夫の質疑に感動したのは、そういう絶望的な気分に支配されそうな中で、あれほど完璧な国際政治学の講義をもって対抗した知的英挙で、頭脳の優秀さだけでなく、精神の粘りというか、難問に立ち向かう勇敢さを褒め称えなくてはいけないだろう。その志位和夫の精神の粘りと全く逆の愚かな姿をさらしたのが、5/31のサンデーモーニングに出演した姜尚中と田中優子だった。5/31のこの番組は、5/27、28と集中審議があった後のテレビ報道の機会で、この政局全体において重要で貴重な場面に違いなかった。

c0315619_17161663.jpgそこに姜尚中と田中優子をセットで出したことは、関口宏のアレンジであり、この法案を批判的に解説させ、集中審議の論戦について批評と総括を与えさせようとしたものだ。関口宏の代弁者として論陣を張らせ、この戦争法案に反対の世論を興隆させようとした動機からの起用だろう。それは多数世論を反映させた言論であって、関口宏も官邸に遠慮なく敢行することが可能だった企画である。また、安倍晋三の暴論と醜態があり、ネットで評判になった志位和夫の秀逸な議論があり、法案に反対の議論を公共の電波で提供する上では、関口宏にとって格好の材料が揃った一瞬のタイミングだった。だが、期待した視聴者を前に、姜尚中は意外な愚論を言い始め、国会審議なんて単なる消化試合だから無駄だと言い、こんな細かい議論なんてやる必要はなく、集団的自衛権が抑止力になるかどうかだけに絞って議論をやれと、全く期待外れの妄言を吐いてコメントの時間を潰した。横に座っていた関口宏の表情が曇り、そんな発言をさせるために呼んだんじゃないと言いたげに、途中で制止と方向転換のシグナルを出していた。安倍晋三にとっては消化試合だが、われわれ市民にとっては決してそうではないのだ。単純に多数決をされれば可決成立で押し切られるところを、民主党の後藤祐一などもそうだが、必死になって反撃と攻勢の糸口を探し、政府答弁と立法要件の矛盾を引き出させ、法案を不成立に終わらせようと尽力している。成立を阻止すべく、法案の急所に食らいついている。

c0315619_17162530.jpg報道番組のコメンテーターに出た者が、まして法案に反対の立場の者がするべきことは、議論の要点を整理し、法案とその問題点を分かりやすく視聴者に説明し、今後の世論に影響する有効な論点を提示することだった。ところが、姜尚中のやったことは、国会論戦の全体を否定し、民主党など野党の議論を無意味化して貶め、面倒だからやめちまえと卓袱台をひっくり返す行為だった。姜尚中は、法案も読んでないのであり、国会論戦の新聞記事もまともに目を通しておらず、つまりは全く予習してなくて、法案について解説する知識を持ち合わせてないのだ。そして単に、この国会審議についての私的な鬱憤を言い、酔っ払った外野席の観客のように、面白くないからやめろと素人の野次を飛ばしただけなのだ。姜尚中は自分が言ったことの意味が分かっているのだろうか。野党の議員が、それじゃ集団的自衛権が抑止力になるかどうかの議論をしましょうなどと言い、そんなプリミティブな討論に持って行けば、安倍晋三はこれ幸いと滔々と(おバカな右翼でもできる)持論を並べ、日米同盟強化の意義なり、中国の軍事的脅威なり、北朝鮮の核とミサイルなり、もはや一国のみでは自国の安全を守れないの常套句なりを延々と繰り出し、まさしく不毛な抽象論のオンパレードで委員会の審議時間が潰されたことだろう。要するに、姜尚中は何も考えてないのだ。この戦争法案に関心がないのであり、全く危機感がないのだ。反対する言葉がなく、抵抗する意思がなく、碌に考えてもいないのだ。

c0315619_17163674.jpg姜尚中は、世間ではリベラル系論者と目されてるタレント文化人であり、リベラル派の認識や主張の代弁が期待されている男である。しかし、5/31の放送で現出したのは、戦争法案について知らず、言葉がなく、特に関心もなく傍観しているだけというこの男の正体だった。まさに、志位和夫とは対照的な無責任な姿だったと言える。本来なら、戦争法案について姜尚中が提起した論点が、Twで注目されてトレンドに拾われ、翌日以降も話題になって波紋が広がるという展開になっておかしくなかった。関口宏が期待したのは、そういうコメンテーターの役割と能力と効果だっただろう。空振り三振もいいところで、姜尚中の無能が露わになった瞬間だった。田中優子も同じだ。安保法制・戦争法案のコメントが求められているのに、姜尚中の与太話をそのまま引き継ぎ、抑止力なんてありませんなどという場違いな一般論で済ませた。久しぶりの出演で、ファンも多いのに、全く予習をしておらず、この問題について見解を準備していない。雑談の延長程度の軽薄な感想で済ませ、聞いていて失望させられた。田中優子も何も考えてないのだ。関心がなく、他人事で、法案を研究しておらず、国会論戦を検証していない。視聴者の期待を裏切るコメントだった。法政大総長という学校経営者の身になり、文科官僚を接待するホステス稼業が忙しく、安保法制どころではないのだろうか。安倍晋三以上にだらけきった、知性の欠片もない、緊張感のない、テレビ芸人として馴れきった、2人のリベラル文化人の愚劣なコメントだった。

私は、一人一人の市民が、6月末の衆院での強行採決までに、説得力のある論点を懸命に探し、切り口を問題提起し、真剣な議論を深めることが最も大事だと思っている。その知的な努力の積み重ねが、強行採決の直後に爆発的な反対運動を生む原動力になり、法案を粉砕するエネルギーの圧縮に繋がることだと信じて疑わない。


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by yoniumuhibi | 2015-06-03 23:30 | Comments(7)
Commented by 愛知 at 2015-06-03 23:36 x
宮内庁のホームページをぜひぜひご覧下さい。今日、6月3日の陛下のお言葉が収録されています。私のようなパソコン苦手の方でも簡単。ヤフーで「宮内庁」と入力。トップページの新着情報から、「天皇陛下のおことば(国賓フィリピン大統領閣下のための宮中晩餐:平成27年6月3日)」をクリック。想像でしかありませんが、官僚の作文ではなく、陛下がお考えになられたであろう「おことば」が見えます。本当に簡単にすぐ見えますから、あえて引用は差し控えますが、そのお心―――閣下が、御就任以来、国民の声に真摯に耳を傾け、貴国の平和と発展のため、貧困対策を始めとする諸課題に取り組んでいらっしゃることに、深く敬意を表します―――国家分け目の今であれば、なお胸に染みて。比例、小選挙区ともに戦後最低の投票率を記録した昨年12月の衆議院選挙。日本国憲法第一章第一条は、天皇について「日本国の象徴であり国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく。」と規定されています。安倍の戦争法案に反対する私たちには陛下という大きな味方がついています。前にも書きましたが、私は皇室マニアでも、皇室ファンでもありません。率直に申し上げて、大行陛下の時代、その真逆でした。今上陛下のおことばが、どうか一人でも多くの方のお目に留まるよう切実に希望いたします。多くの方の願いは、きっときっと叶えられます。
Commented by 私は黙らない at 2015-06-04 04:54 x
 日本にはなんで国民投票がないんだろう。こんな重要な問題、国民投票かけるべきじゃないか。スコットランド独立、EU離脱でイギリスが国民投票するみたいに。国民に直接投票させれば、世論調査でも反対派が多数なのだから、この法案通るはずがない。もう、国会議員、マスコミの論者が国民の声を代弁しないのであれば、それしか方法ないじゃないか。
Commented by 長坂 at 2015-06-04 09:58 x
携帯を手に持った黒人少年を射殺しても正当防衛な国の軍隊と地球の裏まで"殺し" "殺され"に行く。レストランじゃあるまいし、「俺の9条」のつもりか!あの男はこれ迄一体どんな外交努力をしてきたのか?パククネに会うためにオバマに仲介させ、習近平には福田や二階に親書を持たせ土下座させ、金正恩は外務官僚に丸投げ。嫌な事、嫌な相手はぜ~んぶ人任せ。どこが積極的平和主義なんだ。こんな小心者のペテン師野郎に「おまえの存在が憲法違反だ!」と。
Commented by インコ at 2015-06-04 10:09 x
今の状況は、2年前に麻生太郎副総理が言った、「(日本の改憲も)ドイツのワイマール憲法がいつの間にか(ナチス政権のいいように)変わったことに学んだらどうか」のごとく進められているように思えます。
それというのも、別の記事で、私は黙らないさんが書かれていたように、私の職場で、小学生の子供をもつ親世代の女性たちからも、安保法制の話題を聞くことがないからです。
安保法制がどのように変わるのか、与党協議の頃は、それでもワイドショーでも取り上げて解説をしていましたが、国会の審議に入ってからは、朝の情報番組でも、お昼のワイドショーでも見る機会がなくなりました。
たまたま私が見たときにやっていなかっただけかもしれませんが、新聞のテレビ番組欄の項目にも書いてないので、取り上げていたとしても、ほんの少しではないでしょうか。
ニュースや新聞を見るヒマもなく忙しくしている人や、ワイドショーくらいしか見ていない人にとっては、ワイマール憲法のように「知らない間に変わっていた」になりかねません。
しかし、一応は見て知っていたとしても、頭の中の関心事がバブル時代とさほど変わっていないような人は、そこを敢えて利用しようとしている政府やマスコミと同罪かもしれませんね。日本という国を情けなく感じています。
Commented by 愛知 at 2015-06-05 03:05 x
学者センセイは勲章目指して右往左往なのでしょうね。情けない。まるで風見鶏大勲位。貴下記事でご指摘の行動する学者センセイは見当たらず。本当に最後は平和を希求する全世界市民からのパワー。絶対に負けない、この気力だけが道を開くと思います。
Commented by nyckingyo2 at 2015-06-05 11:34
ひとつ上のコメントの「長坂」さん! 在米されていた時代からのコメントファン(?)です。きょうもハギレよく、ブログを立ち上げられたら「きっこ」さん顔負けの人気ブロガーになりそう。きょうのコメントのように5-10行の超短いものがすっきりしていいかも。
いまだに「携帯を手に持った黒人少年を射殺しても正当防衛な国」に住んでいて、ご発言に胸がスキッといたします。
Commented by 長坂 at 2015-06-05 21:45 x
NY金魚さ~ん(この場をお借りして)、お元気ですか?ご無沙汰しております。こちらのコメント欄を私物化し、言いたい放題、馬鹿なコメント、品は落とすはで、「世に惓む日日」愛読者の皆様には大変ご迷惑をおかけしています。すみません。


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