英国の英断と英明 - 反中右翼と自尊自愛しか売れない日本の言論市場

c0315619_18532948.jpgAIIBには50か国を超える国々が参加した。参加しなかったのは日本と米国だけで、国際経済の外交戦として見たとき、まさに中国の圧巻の勝利である。パーフェクトゲームで日米を制圧した。モニュメンタルな歴史的勝利であり、米国の完敗だ。今回のAIIBの結果は、鬩ぎ合いを演じた中国と米国の予想を超えて、画期的なニュースに発展し、時代が大きく変わったことを象徴的に印象づける事件となった。1971年10月の国連総会での、アルバニア・アルジェリア決議案の採決の場面を思い出す。背広姿の黒い肌をしたアフリカ諸国の代表たちが、議場で小躍りして体を揺らしていた。今回、AIIBへの加盟が雪崩を打つような怒濤の動きになったのは、3月12日に英国が突然の豹変で参加を表明し、3月17日にドイツ、フランス、イタリアなどG7各国が続いて、「バスに乗り遅れるな」的状況が現出したからだ。米国と最も親密な同盟国である英国が、米国に相談することなく独断で、言わば裏切りの抜け駆けをして中国AIIBの陣営に与した。英国という国は老獪だ。そして、世界中で最も金融の動向に精通していて、情報の収集と分析に長けている。それを素早く政策決定に反映させ、国力の維持に努めている。英国の強かさとしなやかさ、そのソフトパワーの説得力と存在感は、毎年、世界の人々に感銘を与えている。



c0315619_1853435.jpg一昨年、英国は米国のシリア空爆に同調しなかった。世界が固唾をのんで見守る中、議会で徹夜で討論を重ね、賛成と反対の意見を出し合い、多数決で反対を議決、その結果を首相が即受け容れ、政府として最終判断を発表した。見事なデモクラシーの絵だった。昨年のスコットランド独立の動きも同じだった。世界から熱い注目を集める中、住民投票の結果が出たが、世界の人々が感動したのは、市民が賛否両論を渾身の議論で戦わせ合い、同意と共感を集めるべく草の根が粘り強く運動し、投票で結果が出た後は清々しく一つの方向で纏まったことだ。政治の対立と闘争のエネルギーを、禍根を残すことなく、高い次元と段階に持っていく英国民主主義の姿に学ばされた。今年、三たび英国は世界の前で華麗に身を躍らせ、その政治センスの切れのよさと、老いた国とは思えない身の軽さと大胆な決断力を示し、世界の人々の舌を巻かせた。国のブランド価値を高め、「さすが英国」と溜飲を下げさせた。英国が、その老獪さで世界の政治と経済をリードしている。3月12日の英国の衝撃の決定は、実に周到なタイミングの戦略発動で、残された3週間の時間を睨み、3月末までの間にドミノ現象が起きることを計算し抜いた上でやっている。(博打の)結果が自分の決断を成功へと導き、その政策の正当性を確定させることを分かっている。英国らしい。

c0315619_18535483.jpg米国は、一昨年のシリア問題での脱落と離反に続いて、再び英国に煮え湯を飲まされた格好になった。ホワイトハウスからは特にコメントが出ていない。オバマの沈黙が、屈辱の敗北に打ち拉がれた内情を示している。英国が米国を振り切り、中国のAIIBに積極的にエンドースを与え、米国の孤立化を露骨に演出する策に出たことは、世界のマネー市場のプレイヤーにとって一つの確信と納得が得られたことに等しい。それは、今後、人民元(CNH)が国際決済通貨になり、貿易取引と資本投資の主要通貨となり、人民元建て債が魅力的な金融商品になるというフォーキャストの確立である。先週、貿易決済を人民元に切り換える企業が続出している事実を見たが、(1)貿易決済に続いて、(2)中国市場への投資に人民元が使われ、(3)海外の人民元債券市場にマネーが集まる流れが加速するだろう。英国政府がAIIBを率先して承認する挙に出たことは、シティの金融資本が人民元マネーの成長と挑戦にコミットした意味に他ならない。いわゆる戦後のブレトンウッズ体制、ドル一極支配の国際金融体制の秩序に対して、英国が反旗を翻し、新しい展望を示唆した戦略姿勢として了解される。となれば、英国がお墨付きを与えた人民元(CNH)の信用は増し、華僑や中東や欧州の投資機関のポートフォリオ・ミックスの中に、人民元マネーが一角を占めて構成されるのは必然だろう。

c0315619_18561428.jpg7年前、リーマンショックが起きたとき、中国は人民元国際化のプロジェクトを宣言し、ドル支配体制を代替させる新しい基軸通貨の秩序と構想を訴えた。それから7年、私はその実務の進捗を追跡することなく、ただ時間が流れたが、中国は着々と通貨金融スキームの創設と改革を進め、有言実行の努力で目標を達成していた。オフショア人民元とか、クロスボーダー人民元という用語(概念)は、当時は全くなかったものだ。今は金融世界でホットな言葉になっている。AIIBの事件を契機に、中国の人民元戦略の経過と現状を確認し、そのアウトラインを概ね把握することができた。そして、日本経済との比較に関心が向き始め、前回、きわめて悲観的な想定ながら、15年後に中国経済は日本経済の10倍の規模になり、一人当たりGDPがイコールになるという将来図を直観した。今、この予測は、右も左も政治的立場の別なく、誰もが聞いて荒唐無稽に感じられる極端な珍説だろう。15年後の2030年、中国の一人当たりGDPが日本のそれと並ぶと断言するのは、現時点の経済予想としては相当に跳躍した想像力を必要とする。非常識な予言だ。だが、前回の記事を書いた後、私はさらにこの数字に自信を深めるようになり、その前提で未来を考えるようになった。この着想は、前回の記事を書きながら途中で出たもので、私の中では次第にアイディアからコンセプトのレベルになりつつある。

c0315619_18562333.jpgマスコミだけでなくネットも、今の日本の言論は、中国経済についてはとにかく頭から貶める反中右翼の誹謗中傷だけが溢れ、日本経済については異常な自惚れと自己満足の言説だけが流行っている。経済の議論というのは、客観的合理的に思考し分析して試論を提示する世界だが、今の日本人は常軌を逸した病理の中にあり、中国と日本の彼我を冷静に認識することができない。そうした右翼的な反中論と自尊論の言論でないと市場で売れないのだ。お客が読んでくれないのであり、イイネボタンをクリックしてもらえず、ツイート数が増えず、リツイート数が大きくならないのである。無料受発信のネット言論の世界でも、書き手の各記事は市場的に評価されている。ツイート数やFBのイイネやシェアの数は、読む者にとって価値の大小を判断する材料であり、書く者にとってモチベーションの上下に影響するものだ。どれほど、それを無意味だと悟っていても、完全に無視しきれるものではなく、ツイート数とイイネ数やアクセス数の強迫心理から精神を隔離することは容易でない。テレビ番組制作者が視聴率を気にするほどではないが、そこに「市場」があることは間違いなく、そこに大衆の関心の実態があることは否定できない。「数字」を稼げないということは、記事が大衆の関心をグリップしていない証拠だ。中国や韓国の問題を言論し、右翼批判の態度を貫き、転向を拒否する者は、必ずジレンマに襲われる。

c0315619_18563354.jpgリベラル系論者がテレビ論壇から放逐されている問題について、それを安倍晋三のファシズム権力の暴挙として批判したり、そんなことはないとテレビ局を擁護して反論したりと、議論が流れているが、まず前提として、マスコミの情報の受け手である大衆が、長年の洗脳と感化によって決定的に意識を右翼化(反中嫌韓化)させてしまっている現実がある。マジョリティの思考と感性が右翼化している。ウソだと言うのなら、一つの材料で反駁したいが、20年前、あの村山談話が出たとき、マスコミを始め、誰も文句は言わなかったのだ。自民党の幹部が率先して賛成し、国民的な共感と賛同を得て政府声明された。無論、不満を言っていた「正論」や「諸君」の連中は一部いた。日本社会の中で10%ほど、右翼の異端分子として存在した。今、その10%が過半数の勢いになっていて、極右の代表が総理大臣に就き、極右のメンバーを閣僚に並べ、国民から50%の支持率を得、2年間で3度の選挙に圧勝しているのだ。この状況が右傾化や右翼化でなくて何であろうか。小熊英二や内田樹が言っている浮薄な戯れ言は、全く呆れる自己欺瞞であり、右翼に対する過小評価であり、人々を誤解に導く無意味な幻想だ。どれほど言論市場が右翼化しているか、本屋の店頭に立てば分かる。本屋の店主が右翼だから右翼本を売るのではない。売れる商品だから販売しているのだ。右翼の知識と情報が売れるのである。社会の支配的な思想だから。

左翼リベラルは、大衆の右翼化の事実は認めないくせに、大衆が「反知性主義」になったと言っている。真実は、「反知性主義」などと大仰に言説化するものではなく、単に大衆が痴呆化しているということだ。お笑いテレビを見て、池上彰のテレビに漬かって、バカになっているから、右翼の言論に靡き、右翼の発想と思考に染まるのであり、多少とも右翼が嫌いな者の場合は、右でも左でもないと脱構築を愛好して依拠するのである。日本経済で何が起きているのか。一つの重要な指標として、家計貯蓄率の低下がある。ドイツはずっと横這い傾向が続いているが、嘗てはドイツより高かった日本の貯蓄率が、90年代以降どんどん下がり、米国よりも低くなり、遂にはマイナスの線を突破した。この指標と現実について、国内のマスコミはほとんど報道せず、警鐘を鳴らそうとしない。日本人の多くが経済的に窮乏化し、嘗てのホモエコノミクスの生き方ができなくなったことが、日本人が正常な理性を失い、痴呆化と右翼化を強めている大きな要因だと私は考える。


c0315619_18564720.jpg

[PR]
by yoniumuhibi | 2015-04-06 23:30 | Comments(6)
Commented by 長坂 at 2015-04-06 21:53 x
中国人民解放軍海軍が、イエメン在留10カ国の国民225人の避難支援とか、王毅外相がモスクワを訪問して、イエメンを軍事攻撃したサウジとその同盟国に対抗するため、ロシアと共闘して行くとアナウンス。中国の存在感が増すことで、中東情勢も変わって行くでしょうね。
Commented by 愛知 at 2015-04-07 01:12 x
松岡洋右⇒吉田茂⇒麻生太郎・・・大行天皇は松岡がお嫌いだったそうですが。国連脱退からAIIB不参加まで、バカザンスの壁かと。教科書検定が話題ですが、第1次大戦から第2次大戦までの歴史こそ、歴史の集約であり、教科書で徹底的に教えるべきだと思うのですが。星新一だったか筒井康隆だったか、大昔、短文小説でテレビの弊害を喝破してみえました。題名が思い出せません。不思議な箱は耳触りの良いことしか言わず、人が痴呆に陥ると。ソウル出張で夜の8時9時、KBS、MBCの反日番組を見ていると、それからコンビニ行くのも怖くなります。韓国語はわかりませんが、昔の映像(旧日本軍の日本語だらけ)見てりゃ、どれくらいの反日番組なのか想像はつきます。ぶん殴られるのを覚悟でコンビニに行っても、ありふれた日常しかないのですが。毎度毎度些少な体験ですが、大方の韓国人は極めて普通です。日本人の白痴化というのは、そうなったというより、そうさせられたというべきと思います。選挙でも寝ていてくれれば良いと、そう思う人たちが作り上げた理想郷なのでしょう。(日本人にとってのですが)平和はバランスの上で成り立っていると思います。
Commented by ロシナンテ at 2015-04-07 02:56 x
当たり前の事ですが、中国人口14億人。内10億~8億人(2050年迄)が労働人口。

V48気筒エンジンに匹敵するパワーです。
そのエンジンの駆動系が整い車輪を回すようになった。
反中を呟いても、このチカラは事実です。

中国がこのチカラをどこに向けるつもりなのか。
アメリカがこのまま舞台から降りるのを良しとするのか。

日本人は、狡猾さ、したたかさ、しなやかさ、が本質的に欠落してますから、
残された道は、戦わず、真面目に、清廉潔白に、博愛主義で世界貢献、
古き良き時代の日本人像で生き残るしか、術が無さそうです。

ダサい言葉ですみません。
Commented by 半覚醒状態 at 2015-04-07 13:58 x
今回のAIIBの英国の参加劇。英国はモサデクを追い落として奪ったイランを革命で失っても、拘泥することなく手放しました。米国なら執着し続けたでしょう。長期的視点に立った損得勘定に長けていて現実的。アフリカに目をつけている中国も同様です。アフリカに医師団始めとする援助をすることで米国をかわしたカストロの様に、米国は戦争以外の手段ではいずれ存在感を示せなくなると感じます。日本は現実逃避、空想優位のまま、米国の飼い犬として生きていくのか。それも国民自らが選択した道ですが、今ならまだギリギリ間に合うと感じるのですが…
Commented by ローレライ at 2015-04-07 14:31 x
中国はロシアとの対立を止め、ロシアとイランも協力を始めた時点で世界の流れは変わりました。
Commented by デ・ユーレ at 2015-04-07 22:51 x
いつも興味深く拝見させて頂いております

ツイートの短縮アドレスからここに飛ぼうとすると、
「警告:このリンクは安全ではない可能性があります」
が出るようです。確認お願いします


カウンターとメール

最新のコメント

左派が、前原をほめるなど..
by 前原より小池 at 21:21
続き: ◆ 視点をアメリ..
by NY金魚 at 12:35
数カ月前の当ブログに「慰..
by NY金魚 at 04:11
細野氏の三島後援会の会長..
by 一読者 at 19:15
優れた日本型システム ..
by 優秀な日本型システム at 16:12
本当に仰る通りだと思いま..
by liberalist at 00:12
そうでした。「民主」と言..
by 長坂 at 23:45
私たちの世代(60代)に..
by ametyan at 11:04
稲田が辞任しましたね。晋..
by ロシナンテ at 13:19
TWされている通りだと思..
by 長坂 at 11:47

Twitter

以前の記事

2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月

記事ランキング