日本の左翼リベラルの米国認識の錯覚と幻想 - 米国の国益と本性

c0315619_169713.jpg日本の左翼リベラルは、米国の東アジア戦略の真相と内実について根本的に見誤っていて、無理に楽観的なバイアスでそれを認識して説明している。オバマ政権の対日政策や対中政策を、実際よりも自分の立ち位置に引き寄せて解釈し、恰も自らとオバマ政権とが一体であるかのような意識で問題を捉えている。寺島実郎のテレビでの発言が典型的にそうだし、売り出し中の白井聡も本の中でそのような発想を示している。ネットの左翼系の多くも同じで、この見方に牽引され支配されている。簡単に図を描けば、安倍晋三は真っ黒で、オバマの米国は真っ白で、自分は米国と同じで、それが良識的な立ち位置で、米国は安倍晋三の極右路線に不信を抱いていて、その観点から日米は決して一体ではないのだという言説である。米国は、日本を飛び超えて、経済重視の国益志向で中国と接近する動きに出ていて、日米同盟の意味は次第に相対化し、時代遅れの冷戦思考にしがみつく安倍晋三の日本だけが孤立する形になっているのだと、そう寺島実郎や内田樹は力説する。この説明に左翼リベラルの多くが頷いていて、現状、左翼リベラル系の共通認識になっている。だが、この認識や態度は本当に正しいだろうか。一度でも辺野古に足を運び、ゲート前の国道脇に腰を下ろして座り込みをすれば、この米国認識が根拠のない誤解であることに気づくだろう。



c0315619_1691732.jpgそのナイーブな米国認識が片思いの錯覚であり、その東アジア安保環境論が米国を過度に美化した幻想であることを理解するに違いない。キャンプシュワブから車で遊びに出かける米兵たちは、左折のハンドルを切りながらこちらに顔を向けてケラケラ笑っている。助手席には、家族なのか友人なのか、日本人女性が座っている。「おしん」のドラマの後半で見た、田中裕子が田中好子の頬をビシッと叩き、田中好子が全身で号泣するあの名場面を思い出す。沖縄は軍事植民地であり、この国の支配者は米軍なのだと、そのことをザッハリヒに教えてくれる。何事も率直で分かりやすいところが米国人の美質だ。辺野古の新基地建設は米国の強い要求であり、安倍晋三の方が要求して米国に応じさせたわけではない。そこは勘違いしてはいけない。大浦湾に海兵隊の巨大軍港を整備するのは、中国の太平洋進出を牽制・阻止するためで、第一列島線を踏み越えてエクスパンションを図る中国に対して、喉元にナイフを突きつけて脅すためのものだ。辺野古の弾薬庫には核がある。辺野古へ行けば、米国の意思が何か、米国の東アジア安保政策が何かがストレートに悟られる。それをどう論じるべきか、どう論じてはならないかが分かる。日本の左翼リベラルの所論は、奇妙にねじれて矛盾している。

c0315619_1692698.jpg例えば、辺野古の問題でTBSの報道番組がエルドリッジの所業を暴露したときは、左翼は米国の植民地支配の真実を言って憤慨するのだけれど、寺島実郎らが件の「安心理論」を言い出せば、途端に共鳴してオバマ政権への期待を言い出し、米国をリベラルのバラ色に染め上げ、頼りがいのある自分の味方に描いて持ち上げる。米国と自分たちが一緒になって安倍晋三と対峙しているような構図を説き、リベラルの願望を米国に投影する。まさに、植民地根性丸出しの歪んだ言説ではないか。米国政府の東アジア政策の推移を直視すれば、寺島実郎らが説く「安心理論」がどれだけ不毛な気休めであるかが分かる。米国が安倍晋三に対して最も懲戒的なシグナルを発していたのは、2013年春のときから2013年末の靖国参拝のときまでだった。安倍晋三の政権発足は2012年の12月。2013年の春には慰安婦問題の騒動があり、安倍晋三の河野談話否定や侵略否定の国会答弁があり、サキが会見で釘を刺したり、米議会の報告書が出たリと、米国の側からのリベラルな視角からの牽制と攻勢が目立った。この2013年には6月に習近平が訪米してオバマと会談している。カリフォルニアで2日間合宿した米中首脳会談は異例で、米中の蜜月とG2時代の到来が世界中に喧伝され、日本の右翼を大いに慌てさせた一幕でもあった。

c0315619_1693570.jpgもう一つ、ケネディが訪沖して稲嶺進と会談という政治もあった。2014年2月、わずか1年前のことだ。この関係と空気が続いていれば、寺島実郎や左翼リベラルの手前勝手な「安心理論」も説得力を持続させられたと言える。だが、2014年に入って状況は一変する。最も大きかったのはウクライナ情勢で、さらにイスラム国情勢が加わり、米国が国際政治に関わる姿勢と方針も大きく変わった。リベラルホークが台頭して強硬な路線に戻って行った。結果的に、ロシア問題と中東問題が強く影響して、オバマ政権は日本の自衛隊の武力を必要とする動機が前に出るようになり、安倍晋三の極右路線への牽制と対策はフェイドアウトしてしまう。逆に、中国に対しては踵を返して冷淡な態度で臨むようになった。2014年12月に北京で習近平と会談するが、米国と世界が歓迎するのは自由な中国だというような発言をし、破格の待遇で接待に出た習近平を不愉快にさせた。2014年を通じて米国は変貌し、簡単に言えば、嘗てのブッシュ政権のネオコン外交に回帰し、リベラルでマイルドな性格はどんどん退潮して行った。その上で2015年の現在の米国がある。客観的に見て、米国の外交戦略の舵取りは、日を追ってネオコンの影響力が強まっていると判断するのが正しく、希望や期待とは逆の右傾化と戦争の方向に動いている現状は否定できない。

c0315619_169475.jpgここで簡単で重要なことを言いたいが、われわれは日本人であるため、どうしても日本の政治を中心に世界の動向を見てしまう。自分中心に考える。日本の政権が凶悪なファシズムに暴走し、ナチスドイツのように中国と戦争を始めたら、米国もきっと困るだろうと、そういう思考で米国の論理を判断してしまう。安倍晋三は米国の国益と安全にとってリスクであり、手を焼く迷惑な存在だから、我慢できなくなったときは米国が矯正か排除に出てくれるだろうと、日本の左翼リベラルは日米関係をそのような図式で見ている。しかし、この認識は正確だと言えるだろうか。私の見方を言えば、米国はそれほど日本に対して重大な関心を持っていない。米国のコンサーンは、日本がファッショ化して中国と戦争を始めることよりも、中国が東南アジアをテリトリー化して米国を締め出し、中国が太平洋の西半分を軍事的に勢力圏にすることの方にある。そちらの方が深刻な国益のリスクなのだ。つまり、米国の関心は日本ではなく中国の方にあり、その関心の中身は、中国の進出と膨張にどう歯止めをかけ、現在の国際的な地位と秩序を守るかにある。米国にとっての脅威は、日本ではなく中国である。同盟国である日本の政権が極右化して、中国を脅迫する暴力装置として機能することは、むしろ中国のエクスパンションを抑止する効果的な条件として評価できる。

c0315619_1695677.jpg米国にとっての国益とは何か、リスクとは何か、その定義と確認において日本の左翼リベラルは根本的に間違っていて、リアルで透徹した認識ができていない。自らの甘い理想主義を米国に被せ、DCを自己の代理人の如く錯覚してしまっている。自己と同一化させた米国の存在の虎の威を借りて、安倍晋三の非を批難したり、安倍晋三を矮小化したりし、それを政治の正論として論壇で振り回している。考えなくてはいけないのは、戦後世界の支配者となった米国の歴史と行動パターンだ。米国は常に敵を作り、敵と戦い、自らを危うくする脅威を排除して、その地位と秩序を守ってきた。1945年から1990年までの45年間の敵はソ連で、軍事的経済的な封じ込めで内部崩壊に導いた。冷戦に勝利し、一極支配の超大国となった。1988年から1998年頃までの10年間の敵は日本経済で、日米構造協議の策謀と調略を仕掛け、日本のバブル崩壊をビッグバンとグローバルスタンダードの自壊と洗脳に導き、弱体化した日本経済を植民地従属させることに見事に成功した。宮沢イニシアティブは潰され、日本は完全な属国への道を歩んだ。敵が消えた2002年からは、新しい敵が必要となり、イスラム潰しの戦争を始めて今日に至っている。米国には常に敵が必要で、敵と戦って勝利する物語が必要で、その過程で世界の支配者としての地位を維持し、支配の秩序を強化している。

その米国の前に新しく現れた本格的な敵が中国だ。中国のチャレンジは、米国にとってはまさしく存立に関わる問題で、共産中国に世界の覇権を許すことは、米国という国家のレゾンデートルの崩壊に等しい。自由と民主主義のイデオロギーを奉じて君臨してきた米国の破滅に繋がる。この米国の本質的な危機と焦燥について、われわれはもっと内在して直視しないといけないのであって、オバマ政権に安易に安倍晋三叩きの甘い期待を寄せることは意味のない議論なのだ。


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by yoniumuhibi | 2015-03-27 23:30 | Comments(3)
Commented by インコ at 2015-03-28 14:11 x
左翼リベラルや右翼などといった思想傾向には疎い私の持つ印象ですので、ピント外れな部分は読み飛ばしていただければと思うのですが。
アメリカにとって中国は、アメリカを脅かす存在になられては困る、大いに気になる存在ですよね。
逆に、日本とは日米同盟もあり、(これまでの政権は)全てを従わないにせよ、歯向かう存在でもなかった。
で、その日本(これまでの政権)が、中国と友好関係を築こうとすると、何故かその政権が倒されてきた。
それは、同盟関係がありながらも、アメリカに対して従順な面だけではない日本(その時の政権)に対しての、アメリカの不満(嫉妬)と、書かれているような「敵」の存在を必要とすることにおいて、不都合だったから?
そして、現政権は、小泉政権以上にアメリカに従順な態度をとり、アメリカの期待に応えることで(個人的な)名誉を得られると勘違いしているようですが、アメリカにとっての日本の役割は、自国の負担なしで自国の脅威を抑えるための、ただの便利な駒としか見ていないのではないでしょうか?
もし、このままを進めて自衛隊がアメリカ軍の代わりをしたとしても、日本という国としての存在は、利用価値がある間だけの存在で、望まれるまま軍事力やお金を負担した後に国力が弱まれば、アメリカにとっては、さらに好都合で、USAの日本州になるということなのでしょうか?
Commented by 愛知 at 2015-03-29 23:17 x
昨年、ベトナム人通訳女史との打ち合わせで「たったひとつだけ知っているベトナム語があります。マッチャンニャントクヤイフォンミェンナムヴィエトナム。」と話したところ、こちらが思っていた以上に相当驚かれ、何で知ってる?と。「大昔、大好きだったタケシ・カイコウという作家の本で読んで。若い時の記憶は薄れない。」と。私が小中学生の頃、朝刊一面は毎日のようにベトナム戦争。同じように北爆という単語も頭にこびりついてます。ひとつ覚えのベトナム語は南ベトナム解放戦線ですが、小学生か中学生の時、語呂がいいので自然に覚えました。今も無慈悲な欲のための殺戮というと、真っ先に浮かぶのがベトナム戦争。ご指摘の識者の米国認識の錯覚と幻想ですが、識者はわかっていながら生業のため口をつむぎ、誤った情報を流布しているのでは。批判すれば失業の憂き目だと。だとすれば民に対する戦争犯罪。真相に口をつむぐだけでも重罪ですが、知りつつ真逆に近い説を垂れ流しているのであれば、もはやA級戦犯では。個人的に思い返せば名犬ラッシー、コンバット、第七騎兵隊、鬼警部アイアンサイド、スタートレックと米流ドラマで育ったような。ルーツというのもありました。後で思えば、先住民であるインディアンを悪に仕立て、バンバン撃ってた第七騎兵隊なんて、とんでもない代物だったのですが。白状すれば子供の頃は楽しみで。黒人奴隷を扱ったルーツも単純に、すごいと興奮して読んでました。しかし普通、人は社会に出て裏や表を知り、金の流れを知り、人間を理解できるようになれば、多少の差はあれ、その記憶の過ちにも気付くと思うのですが。安倍の場合、そういう気付きがないんでしょうね。マスコミが助長する戦前への回帰は加速度的に進み、この分だと東京オリンピックよりも前に、犠牲となり軍神と崇められる自衛官が誕生するのでは?A級戦犯識者は生業で甘い見込みを垂れ流すな。ヘラヘラしながら、やってることはどこかの副機長と同じ。狂ってる。
Commented by バンシルー at 2015-04-01 14:06 x
本日(2015/4/1)の琉球新報の社説を読み、そしてこの記事を思いました。
軍隊は住民を守らない。
正にそれが沖縄戦であったのに、最近では「いざという時はアメリカ軍が守ってくれる」「日本と中国の戦争をアメリカは望んでいない。だから日本と中国の戦争はおきるはずがない」と考えるようになっていた自身の思考に愕然とします。心のどこかで安心していたかったのでしょう。
アメリカと手を結んで「まさか」を平気で行ってしまう、それが現政権です。だまされてはいけませんね。

4年前に93歳で死去した祖母は、沖縄戦の経験を死ぬまで語ることがありませんでした。厳しい表情で涙ぐみ、ただ一言「絶対に戦争はしてはいけないよ」とだけ。何故語らないのだろう?とずっと疑問でした。
祖母死去後、NHKの特集で沖縄戦を経験した人達の深刻なPTSDについての番組を見「ああ、これだったのかもしれない」と腑に落ちるような気がしました。祖母は語らないのではなく、語れなかったのでしょう。傷があまりにも深く、ずっと癒えていなかった為に。戦後こんなに時間が経過しているのに、です。沖縄戦を生き延びた方々も未だ多くご健在です。その傷も癒えぬうちに同じ愚を犯そうとしている、この国の権力者。

しかしここはどうか踏み止まって、日本とアメリカは中国と協力する道を模索し歩んで欲しいです。祖母と同じような傷を持つ人をこれ以上一人でも増やしてはいけない。


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