丸山真男を守らなかった「丸山学派」 - 全共闘事件と「ある日の津田博士と私」

c0315619_18364555.jpg前回の記事で、7/19に放送されたNHKの丸山真男特集の番組に小さな誤りがあることを指摘した。誤謬というよりも、瑕疵といった方がいいかもしれないし、制作したスタッフは、それを重大な誤りだとは認識していないだろう。助手となった丸山真男が日本政治思想史の研究を始めたことが、本人の意志と選択によるものではなく、南原繁の指示と計画によるものだったこと、その点をNHKは省略して説明を飛ばしたのだが、NHKにすれば、90分しかない番組にその経緯と事情を詰め込んで説明を膨らませるのは、全体の構成の時間配分から考えて不具合で、面倒だから端折ってしまえという判断がはたらいたのに違いない。しかし、一般向けの丸山真男論の教科書を作るときに、この事実を概説内容から落とすことは、私には到底容認できないことだ。山口二郎が言っていたように、戦後は、まさしく丸山真男(たち)が作ったから始まったのだけれど、それは実は戦前から始まっていたのであり、あのファシズムの暗黒の時代空間の中に、それに抵抗するアンチテーゼが生命体として胚胎されていたのである。そのシンボリックな契機こそ、南原繁と丸山真男の出会いのドラマであり、特高体験を持った学生を庇護し、右翼の圧力に抗して新設の東洋政治思想史講座をリベラル・アカデミーに確立するべく立ち向かうという、知識人の意地と大胆不敵な挑戦に他ならない。われわれはその歴史に負っている。だから、この物語を割愛してはいけない。



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by yoniumuhibi | 2014-07-25 23:30 | Comments(5)
Commented by NY金魚 at 2014-07-26 10:27 x
昭和14年、津田左右吉博士への右翼の攻撃を、毅然と庇う丸山真男。この武勇伝は、当時歯向かえる者のまったくいなかった状況のなかで、ぼくたち現代人の眼には、かれがまるで天使のように映ります。

30年後の全共闘の吊るし上げは、さらに不可解です。本来、丸山の弟子であるべき、民主主義という共通のイデオロギーを持つべき集団が、丸山を襲う。直系の弟子・某々が丸山を庇うなど、全然期待できないが、攻撃したわれわれのファナティックな世代に憎悪が奔ります。

安倍の暴走を止めるため、本来共闘すべきふたつのグループがいがみ合った、今年冬の都知事選の悪夢がここでも甦ります。
狂信(ファナティシズム)は何ものをも生まない。
Commented by H.A. at 2014-07-26 14:29 x
昨日、再放送で番組を見ました。三つの感想にまとめます。

1)番組の方針なのか、明治から戦前までのシリーズと違い、人物の思想に、限界もあったといいたいようだった。

2)学問上の直接の弟子は、師匠より小物になると改めて思った。孫弟子は違う方向に行き、真の弟子は地方や在野にいる。また、別のところから現れる。

3)人は生きた時代での経験をどう消化・昇華するかが大事だ。そしてのちの時代に生きる者に伝えていかないといけない。

番組のなかで紹介されていた、丸山真男の言葉を、聞きながらメモして、自分に言い聞かせていました。

(附)折原浩氏が自身のHPで番組の感想を書かれていました。

Commented by 芝ちゃん at 2014-07-27 01:10 x
1930年生れ、60年アンポに参加した83歳になる老人です。南原繁は存じていますが、お書きになれた学者たちの大半を存じません。
しかし10年後の70年アンボを迎えたとき、東大教授丸山真男が、全共闘の学生たちによって吊るし上げになった事件は、当時の『朝日ジャーナル』を読んでいて、非常に怒った記憶があります。
怒りは、全共闘の学生たちに対してですが、朝日新聞社の発行する『朝日ジャーナル』の【全共闘を擁護する】一方的な報道が、あまりにも暴力是認であったのに、【売れれば、何でも書く】という朝日新聞社に対する怒りもあったのです。
丸山真男だけでなく、東京医科歯科大学の作家・加賀乙彦教授も吊るされております。
70年代の全共闘母とは何だったのか……。上に掲げられた写真で『造反有理』の文字があります。諸橋轍次の『大漢和辞典』に、『造反』とは≪子供が騒ぐ≫という意味もあることが、載っています。

Commented by NY金魚 at 2014-07-27 12:13 x
アメリカでは到底観れないだろうと諦めていた、Eテレの「戦後史証言プロジェクト 日本人は何をめざしてきたのか・第3回 丸山眞男と政治学者たち」が、ネットで全編公開しています。
http://www.dailymotion.com/video/x21si19
この前半45分も貴重ですが、「戦後民主主義の虚妄」からはじまる後半が秀逸でした。
「私自身は、どんなに差し引き勘定をしても、『大日本帝国の実在』よりは、『戦後民主主義の虚妄』の方に賭ける」 —丸山眞男。
ブログ筆者とおなじ個所で、不満点はありましたが、丸山眞男論として全体的によくできていると思いました。
この週末は第二回の「鶴見俊輔編」とともに、どっぷり観てしまいそうです。
いま、世に倦む日日さんがツイッターで論評されている「司馬遼太郎編」も、後日ネットで公開されるのではないかと期待しています。
ジョンの言ったように、TVセットがなくても反戦番組はちゃんと観れる。

Commented by ヒムカ at 2014-07-29 22:57 x
孤高の人

私も南原繁に深く傾倒しました。丸山眞男が南原繁を師とし、そうして家永三郎、大塚 久雄と同志的な関係であったとは倖せであったと思います。

とはいえ、70年安保闘争では凄惨な暴行を受け、そうして群衆の卑俗なる欲求から毅然として袂を分かちました。世俗の欲望の一切を捨てるとは並大抵のことではないと思います。生活の糧の保証というものを失うのですから。
東大闘争の後、きっぱりと大学を退職したのは、丸山眞男先生と日高六郎先生ぐらいではなかったでしょうか?

『世を倦む日日』さんが、こちらで詳らかに歴史を語ってくださって有難いと思います。真実と真相が、素朴な人々にも垣間見えたと思います。

NHKの特集番組で「庶民大学」などの全国を巡る講義の場面を肉声で聴き、見れたことは収穫でした。また、最後に数学者である息子さんのインタビューが収録されていて、身に染みて感じることができました。東大教授の多くは我が子を学際のエリートコースに乗せようと必死になっていた(いる)のですが、丸山眞男という人の人生がいかに清く、潔い「つつましい」ものであったかを知りました。


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