金与正を侮辱し悪罵し人格否定する日本のマスコミ - 右翼の焦り

c0315619_15030279.jpg日本のマスコミ報道の金与正バッシングが凄まじい。無理やり悪女に仕立てて口汚く叩いている。昨夜(15日)のプライムニュースでは櫻井よしこが出演し、金与正を「死臭の漂う女」と言って貶めていた。ある程度の罵倒は予想していたが、そこまでの悪口は非常識に過ぎるのではないか。三浦瑠麗の「スリーパーセル」の発言もそうだが、日本のマスコミ空間で、北朝鮮に対する誹謗中傷なら何を言っても構わないという風潮が蔓延している。北朝鮮に関わる存在を全否定して攻撃するための粗探しや虐待の言説に拍車がかかっている。まさにリンチそのものだ。若い女性が国際政治の大舞台で孤独に頑張っている姿を見て、個人として、もう少し内在的な視線を送ることはできないものか。少し視点を変えて公正に金与正を見てやれば、彼女はいつ金正恩に殺されてもおかしくない人物だ。この重要な外交でヘマをやった場合、韓国側との交渉過程で、あるいは宿舎での挙動で、少しでも兄に不信を買う態度を疑われて怪しまれた場合、即、告発され粛清されておかしくない立場にある。事実上のNo.2で白頭の血統という地位と身分であるからこそ、平壌での本人は常に危険な境遇に置かれているのであり、その緊張と精神的重圧は想像を絶するものがある。

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# by yoniumuhibi | 2018-02-16 23:30 | Comments(2)

三浦瑠麗の騒動と古川勝久の「北朝鮮制裁法」 - 戦争の地固め

c0315619_17150083.jpg先週、国連安保理北朝鮮制裁委員会専門家パネル元委員の古川勝久が、テレビに出て「北朝鮮制裁法」の説法をしているのを見た。どの局の何の番組だったか、よく覚えていない。BSフジのプライムニュースではなく、夜10時台のBSの番組だった覚えがある。最近、テレ朝の報ステが粗悪で、内容がNHKのNW9と同一で、ワイドショー以下の水準に劣化しているため、途中でリモコンに手を伸ばしてBSの1ch、4ch、7chなどを移動し徘徊するようになった。それらのどれも不満で、見続けているのが面倒になり、途中で飽きて切り上げるのだが、その中のどれかで古川勝久がその議論をしているのに出くわした。風貌からして異様で、テレビ向けの一般様式ではない。その容姿で敢えて堂々とテレビに登場する意図や背景について何事か不穏なものを想像させる怪人だが、プロフィールを確認すると、やはりと納得させられる不吉な情報が並んでいた。今は、この男(北朝鮮)とか、小泉悠(ロシア)とか、小原凡司(中国)とか、不吉系オールスターズが、マスコミで外交安保を解説する中立標準の専門家だ。戦前日本そのもの。身の毛もよだつ光景。もし、90年代前半に生きている日本人をタイムマシンで連れてきてテレビを見せたら、彼は何と言うだろう。久米宏や筑紫哲也の報道に毎晩接し、河野談話や村山談話を横目で見ながら普通に暮らしている日本人を、この環境に置いたらどんな反応を示すだろう。

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# by yoniumuhibi | 2018-02-14 23:30 | Comments(2)

不当な政治利用かどうかはIOCが判断することだ - 血は水よりも濃い

c0315619_16344509.jpg血は水よりも濃い。北朝鮮が遮断していた板門店の南北直通電話の回線が再開され、連絡が繋がったという報道があったのが1月3日だった。古いWindows XP の画面の上に電話のアイコンが表示され、韓国側の担当者がPCの画面を見ながら受話器を握っていた。そこからわずか1か月。あっと言う間に準南北首脳会談がソウルで実現する運びとなった。北朝鮮は、最高会議委員長(国家元首)の金永南と金正恩の実妹で特使の金与正を代表団として五輪開会式に派遣、翌日、青瓦台で3時間にわたる会談が和気藹々とした雰囲気の中で行われた。2泊3日の代表団の滞在中、文在寅夫妻はつきっきりの対応に努め、9日の各国首脳レセプションと五輪開会式、10日の大統領府での会談と昼食会、さらに江陵での晩餐会と女子アイスホッケーの試合観戦、11日の三池淵管弦楽団のソウル公演の観覧と、ずっと一行に密着してもてなし続けている。幾度も金与正と文在寅の映像がテレビで流れ、平昌五輪のニュースは金与正を主役にした南北融和外交の時々刻々で一色となった。全く予想していなかった事態だ。最初に板門店の38度線が北側から踏み越えられ、「青筋」の異名をとる李善権が「平和の家」に入ったのが1月9日である。

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# by yoniumuhibi | 2018-02-12 23:30 | Comments(2)

天木直人氏との対談 - 「安倍首相に憲法9条を改憲させてはいけない」

c0315619_15280342.jpg元外交官の天木直人氏と対談する機会をいただき、都内で1時間ほど撮影して動画を配信することになった。初めての経験だ。天木氏と私とは共通点が二つある。一つは、憲法9条に強くコミットする政治的立場にあることで、憲法9条を基軸に据えた日本の政治と外交でなくてはならないという信念と主張を持っていることである。天木氏は新党憲法9条という政党まで立ち上げて活動されている。ここまで強烈に憲法9条にコミットし、憲法9条の価値と意味を訴えている論者は他にいないだろう。この点は、9条改憲の政局が進行している今日の状況を鑑みたとき、特に注目され刮目されるべき事実だと思われる。憲法9条が変えられようとしている現実政治への危機感から、私たちは対談の席を持つことになった。その冒頭でも申し上げたが、天木氏はいわゆる左翼とか左派の世界に身を置く人ではない。左の地平にオリジナルのバックグラウンドを持った人ではなく、左の論壇業界にキャリアとネットワークを持つ人ではない。いわば純粋の霞ヶ関の元エリートというか、外務官僚としての人生を歩んで来た経歴の人だ。敢えて単純な表現を試みれば、ニュートラルなリベラルのステイツマンであり、イデオロギーフリーな良心的で職人気質を持った日本国の外交官という表象が妥当だろう。

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# by yoniumuhibi | 2018-02-09 23:30 | Comments(10)

9条改憲と安全保障について - 二つの言説に対する反論

c0315619_15092416.jpg昨夜(30日)、NHKのニュースで9条改憲についての安倍晋三の国会答弁を報道していた。2項を残して3項で自衛隊を明記する持論を語り、委員会席に座っている2項削除論の石破茂に向かって鞘当てする映像を流していた。さらに、高村正彦がどこか国会外で喋っている絵を映し、2項削除では公明党の賛同が得られないから、公明党に合意させるために3項追加を自民党の正式案にするのだと補足までさせた。安倍晋三の意向に即した、あからさまな世論工作の報道だ。今国会の中心テーマが9条改憲の問題であることは言うまでもない。が、本来、この政治争点は、9条を変えるか変えないか、9条を変えていいのかどうかという根本問題が基本であるはずなのに、マスコミは、2項削除か2項維持かという選択に仕立てている。9条を変えて自衛隊を明記することについては、もう既に決まったことのように報じ、国民的な了解が得られているかの如く問題を説明している。安倍案か石破案か、どちらなのかという政治構図にし、幅広い国民の合意を得られるのは安倍案だと宣伝している。3月の自民党大会に向けて、石破案と安倍案の二つの改憲案が競い合うので、レースの行方を注目しようという報道になっている。9条改憲を前提にした、9条改憲を既成事実化する偏向報道だ。

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# by yoniumuhibi | 2018-01-31 23:30 | Comments(10)

「反日」と「愛国」の言葉 - NHKスペシャル「赤報隊事件」を見ながら

c0315619_16062796.jpg「インターネット上には赤報隊が繰り返し用いた『反日』という言葉が飛び交っている。意見や立場の異なる相手にレッテルを貼り、排除する際に使われている」。28日に放送されたNHKの赤報隊特集番組の結語で、伊東敏恵の渾身のナレーションが響いた。この言葉は重い。勇気を出してよく言ってくれたと思う。スタッフに拍手を送りたい。今や「反日」という語はそこら中に溢れていて、市民社会の言論空間の普通語になっており、われわれは感覚をすっかり麻痺させられている。テレビの番組でも「反日」という言葉は当たり前のように使われ、例えば、池上彰のニュース解説番組でも頻繁に登場する。韓国や中国の立場や主張を「反日」と決めつけて批判する議論は、池上彰が毎晩やっていて、そのため、一般国民にとってその言語と言説は標準的な観念になっている。「反日」批判のイデオロギーは、書店の店頭に横溢し、テレビを通じて茶の間に散布され、インターネット上に氾濫し、もう誰もその言語に接して違和感や抵抗感を覚えない状況になってしまった。昨年、韓国の大統領選に出た野党候補の文在寅に対して、関口宏がサンデーモーニングで「反日政治家」だと決めつけて揶揄する場面まであった。だが、本当は、「反日」は普通語ではないのだ。市民社会で普通に使われる言葉ではなく、右翼が使う特別な政治言語なのである。

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# by yoniumuhibi | 2018-01-29 23:30 | Comments(2)

毎日新聞の裏切り工作 - 三択方式に仕様変更された9条世論調査の怪

c0315619_17043199.jpg憲法改正の政治戦で、安倍晋三がマスコミを使って布石を打ってきた。巧妙に先手を取られた感がする。世論調査で攻勢を仕掛けてきた異変にお気づきだろうか。具体的に説明しよう。まず、1月3日の東京新聞の世論調査を見てみよう。9条改正について「必要がある」が41.2%、「必要はない」が53.0%の結果になっている。改憲の国会論議について「急ぐべきだ」が28.8%、「急ぐ必要はない」が67.2%とある。この記事が今年初めて見た憲法に関する世論調査であり、東京新聞の数字だからこんなものかと思いつつ、一方、今年は憲法の決戦の年だという覚悟で緊張していたため、新年にマスコミが出す憲法関連の報道が気になっており、この数字を見て安堵を覚えたものだった。幸先のよいスタートを切ったという感想を抱いた。ところが、そこから3週間後の産経の世論調査を見ると、全く逆の結果が出ている。「国会は憲法改正に向けた議論を活発化させるべきか」の質問に対して、67.2%が「思う」と答え、「思わない」の29.6%を大幅に上回っている。産経が出す世論調査だからということで、数字そのものは割り引いて考えてよいだろうが、右からこうした一撃が出たことで、3日の東京新聞の楽観的な世論報道は相殺され、正月のお屠蘇気分は吹き飛ばされてしまった。

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# by yoniumuhibi | 2018-01-24 23:30 | Comments(2)

日本で過小評価されすぎている米国と北朝鮮の和平合意の可能性

c0315619_16022915.jpg北朝鮮と米国との緊張について、少し見落としている点があるように思われる。和平に転ぶ可能性について、日本国内ではあまりにその見方が少なすぎるのではないか。この点は私自身も反省しないといけないが、トランプの北朝鮮政策について、攻撃論一辺倒の観測に偏りすぎていたと思う。マスコミの論調に影響されたためだ。最も重要なポイントは何かというと、11月の中間選挙に勝つため、トランプは北朝鮮をどうすればよいかという問題設定である。従来、私も含めて、支持率が低く苦戦が予想されているトランプが、ロシア疑惑を受けた劣勢を挽回するべく、北朝鮮に軍事攻撃を始めるのではないかという悲観論にとらわれる思考が強かった。米国民の関心を北朝鮮との戦争に向け、米国内の空気を変え、戦果を勝ち誇って選挙に臨むという想定である。トランプが北朝鮮問題を自らの政権維持に活用していることは明らかで、国内での政治的立場を有利にするべく北朝鮮問題をカードにして使っている。が、ということは、よく考えれば、米朝が直接交渉で何らか合意して、北朝鮮が核とミサイルの挑発をやめるという結果が得られれば、それは成果になり、トランプが中間選挙で国民にアピールする材料になることを意味する。米国民は評価するはずだ。

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# by yoniumuhibi | 2018-01-22 23:30 | Comments(1)

リベラル文化人は朝鮮戦争を目の前になぜ沈黙し傍観しているのか

c0315619_16544607.jpg慰安婦問題の新方針について、ようやく健全な議論がマスコミに出て、北原みのりが2年前の日韓合意を批判する見方を週刊誌上で示している。今回、政府とマスコミが一色に染まって韓国政府を糾弾する図はファシズムそのものだが、それに異を唱えて抵抗する論者が皆無なのは、自称リベラルの著名文化人たちが、2年前に迂闊に日韓合意を歓迎し賛同するコメントを残してしまっているからだ。自己批判する勇気がないから、韓国挺身隊と文在寅政権を悪者にし、安倍晋三と同調し、今回の件は黙って知らんぷりして、影に隠れたまま問題の関心が薄れてゆくのを待っているのである。あの日韓合意が問題解決にならないこと、一歩前進でも何でもないこと、問題をより複雑で厄介なものにするエラッタ外交であることは、正常な知性と倫理観をもって判断すればすぐに分かることだった。あの合意がすぐに破綻することが、どうして彼らに察知できなかったのだろう。あの合意をエンドースすることが、安倍晋三に与する誤った行為であるということが、なぜ彼らに理解できなかったのか。リベラルを自称する文化人たちから、今の左翼リベラルから、村山談話の精神がすっかり消えてしまっている。フェミがどうのこうのではなく、村山談話の忘却と違背が問題なのだ。

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# by yoniumuhibi | 2018-01-19 23:30 | Comments(3)

平成天皇が訪韓して元慰安婦に言葉を - それが最終的で不可逆的な解決

c0315619_15170655.jpg吉見義明は、岩波新書『従軍慰安婦』(1995年)の結語において、慰安婦問題の解決のため日本政府が行うべき措置として次の六項目を挙げている。(1)政府所管資料の全面公開、(2)戦争犯罪を行ったことの承認と謝罪、(3)責任者を処罰してこなかったことの責任の承認、(4)被害者のリハビリテーションの実行、(5)被害者の名誉回復と個人賠償、(6)慰安婦問題についての歴史教育・人権教育の実施、記念碑と資料センターの設置(P.233-234)。それから15年後、今から8年前の2010年に出版された岩波ブックレット『日本軍「慰安婦」制度とは何か』では、以下の六項目を挙げている。中身は少し異同があるが、基本的な骨格は同じだ。(1)「軍の関与の下に」という主語を曖昧にした表現をやめ、加害の主体が日本軍(日本国家)であることを明確に認めること、(2)戦争犯罪の法的責任を正しく認めること、(3)賠償金を日本政府が拠出すること、(4)政府と公的機関が保有する関連資料をすべて公開し、真相究明を行い、歴史教育・人権教育・平和教育を奨励し、記念館を設置すること、(5)被害者の医療的ケアをすること、(6)官房長官談話ではなく閣議決定を経た首相声明を出し、国会でも決議すること、「戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する法律」を成立させること(P.61-63)。

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# by yoniumuhibi | 2018-01-17 23:30 | Comments(4)

看過できぬ関口宏の嫌韓バイアス - 新方針を袋叩きにする日本マスコミ

c0315619_15114643.jpg14日放送のサンデーモーニングで、慰安婦問題の日韓合意を見直す文在寅政権の新方針が取り上げられていた。予想以上に激しい口調で袋叩きにしていて、見ながら憂鬱な気分にさせられた。コメンテーターの論評に入る前から、司会の関口宏が轟然と非難の口火を切って韓国側の「蒸し返し」を攻撃する扇動を始めたため、続く田中秀征らが韓国政府への罵倒を過熱させるという展開になった。国内の報道番組の中では最もリベラル側に位置するとされるこの番組で、リベラルの代名詞のような関口宏が韓国側を口をきわめて叩くのだから、この件の世論調査で韓国側の姿勢を肯定的に受け止める日本人が絶無なのも頷ける。14日に発表された読売の世論調査では、新方針に「納得できない」と回答した割合が86%に上っている。これは要するに、2年前の日韓合意を歓迎し賛同する者がこれだけいることを意味する。その現実が信じられない。2年前の日韓合意というのは、金をくれてやるからこの問題を蒸し返すのはやめろ、大使館前の慰安婦像をさっさと撤去しろ、という日本政府の要求を、韓国政府がオバマ政権に強請されて合意してしまったという代物だ。吉見義明が喝破しているとおり、問題の解決にはならない中身のものである。破綻と白紙化は時間の問題だった。

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# by yoniumuhibi | 2018-01-15 23:30 | Comments(7)

文在寅政権の新方針を支持する - 歴史問題の外交解決には倫理が必須

c0315619_17174825.jpg昨日(10日)、文在寅の新年の会見の場で、2年前に日本と結んだ慰安婦合意について、「間違った結び目は解かねばならない」と発言、問題解決のためには日本側からの「心からの謝罪が必要」だと表明した。また、「日本が真実を認め、被害者の女性たちに心を尽くして謝罪し、それを教訓に再発しないよう国際社会と努力するとき、元慰安婦も日本を許すことができるだろう。それが完全な解決だ」と語った。これが正論だと思う。私は、この韓国大統領の発言を支持する。2年前、2015年の年末、突然この合意が発表されたとき、私は「慰安婦問題の日韓合意は破綻する - 倫理的主体を欠いた歴史外交は成就しない」と題した記事を上げたが、果たして予想したとおりの展開になった。合意の破綻は見えていた。そもそも、この合意には正式な共同文書がない。日韓の外相の記者発表文があるだけで、しかも別々に発表した内容を並べているだけだ。本来、これほど重要な二国間問題について交渉した合意を発表するなら、首脳会談を開催した上で共同声明を出す形式が当然だっただろう。重要な問題であるにもかかわらず、両国外相が個別に報道文だけを残したということが、この合意の軽さ、コミットの浅さを物語っていて、両国政府の本気度のなさを示唆している。

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# by yoniumuhibi | 2018-01-11 23:30 | Comments(6)

健全な資本主義とは何か - 古田大輔の反共思想と米国の若者との彼我

c0315619_16340716.jpg昨年末のブログ記事で、大塚久雄を復権させようという提案を試みた。現時点で反響は皆無だけれど、我ながら面白い問題提起だと内心で自賛する気分でいる。誰もこれまで発想せず指摘したことのない死角であり、大袈裟に言えば、コロンブスの卵になり得るキーポイント(思想的鉱脈)の発見ではないか。無論、この力業に着手するには若さとエネルギーが要るし、首尾よく成功させるためには経済学と経済史の知識が要る。力の衰えたロートルの専門外の人間が、アイディアと目算だけでなし得る事業ではない。だが、丸山真男や吉野源三郎がこうして復活し、戦後民主主義が生き返った現実を見れば、悔恨共同体の知識人の筆頭格であり、戦後社会科学を主導する二本柱の一つであった大塚久雄が、再び甦って口を開き、われわれに向かって熱い息吹を放つ図を想像しておかしくない。われわれが再び、大塚久雄の中産層の説諭を聴き、健全な資本主義の理念について耳を傾け、その政策論に頷く日が来ておかしくない。大塚久雄のマルクスとウェーバーの基礎理論は、まさに、戦後日本に健全な資本主義を建設するための基本設計の思想であり、その政策論と主体性(人格類型論)を社会に提供するアーキテクチャーのセオリーだった。

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# by yoniumuhibi | 2018-01-09 23:30 | Comments(3)

民進党(民主党)が終わった2017年 - 反安倍側は対抗戦略の一新を

c0315619_16435047.jpg一昨日(26日)、第2次安倍政権から5年というニュースをテレビが流していた。5連勝した国政選挙の絵が順番に並べられ、NHKもテレ朝の報ステも同じように安倍一強を強調する報道になっていた。支持率が50%もあるのだから、そういう報道になるのはやむを得ない。2年前、安保法制の政治戦を切り抜けて支持率を戻した後、安倍晋三はテレビ関係者への報復に出て、政権に批判的だった古館伊知郎・岸井成格・国谷裕子の3人を降板させる仕置きをやった。テレビはすっかり牙を抜かれ、安倍晋三に媚びて礼賛する番組ばかりになったが、今年の衆院選の圧勝を経て、さらに朝鮮中央テレビ的な放送私物化の度を増した感がある。見ながら思ったことは、次に選挙をやっても安倍晋三が勝つだろうということだった。多くの視聴者が、親安倍でも、反安倍でも、同じ感想を抱いたのではないか。再来年の夏には参院選がある。あと1年半後だ。あっと言う間に来る。1年半後に安倍政権が続いていたとして、それに対抗できる有力な勢力が存在しているだろうか。選挙で安倍自公に勝てる野党側の環境が準備されているだろうか。素人目にも、それは全く期待できないことが分かる。むしろ逆に、既成野党の方はさらに力を弱め、国民の支持を失って行く方向に向かうだろう。

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# by yoniumuhibi | 2017-12-28 23:30 | Comments(4)

2018年の政治 - ペジー事件とリニア疑惑、改憲と総裁選、北朝鮮

c0315619_17480375.jpg来年の政治の見通しを考えてみよう。気になるニュースが目に入っていて、それはスパコン開発のペジー社をめぐる助成金詐欺事件だ。昨日25日、社長の斉藤元章ら2名が起訴された。容疑は、経産省所管のNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が実施した助成金事業で、虚偽の報告書を提出して4億3100万円を詐取したというものだ。逮捕されたのが12月5日で、このときは大きなニュースとしてテレビ報道で取り上げられた。テレビでは逮捕後に特に続報されず注目されてないが、週刊新潮が20日発売の最新号で記事を書いていて、その題は「『安倍・麻生』ベッタリ記者の『欠陥スパコン』に公金100億円!!」というものだ。「ベッタリ記者」というのは山口敬之のことである。起訴前に検察がマスコミにリークを始めており、不正に受給した金額は、NEDOからの総額35億2400万円に加えて、文科省所管のJST(科学技術振興機構)から52億円があり、総額で100億円の巨額になると報道されている。取り調べが進んでいて、おそらく他の公金詐取分も追起訴されるだろう。日刊ゲンダイの12月7日の記事を見ると「経産省関係者」なる者が登場し、「受給した税金は総額で100億円以上になるのではないか」と言っている。早くも逮捕の時点で、霞ヶ関では事件の全体像と捜査の先行きを見通した観測が流れていて興味深い。

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# by yoniumuhibi | 2017-12-26 23:30 | Comments(1)

大塚久雄を復権させよう - われわれの目指すべきは一億総中流社会だ

c0315619_15221461.jpg今年は、新年のときに立てた目標を何も実現できないまま終わった。計画への着手はすべて来年以降に持ち越しとなった。政治を変える、政治を変える動きを作るという点では、何もできず、敗北に終わるしかない「野党共闘」を黙って見ているだけだった。ただ、何も成果がなかったかというとそうでもないように思われる。負け惜しみを、強がりを言っているように聞こえるかもしれないが、一つ成果なり実績なりを上げると、左翼リベラルの中での「新9条」の見方が変わってきた現実がある。昨年までは、「新9条」論は左翼世界のデフォルトと言ってもいいほどの地位と威勢を持っていた。何と言っても、東京新聞の佐藤圭が中心になって主導し、しばき隊とSEALDsが賛同・推進し、朝日新聞が論壇紙面でキャンペーンした政治言説だから、左翼世界のメインストリームに位置する政論だったと言っていい。昨年から今年前半までの空気感では、左翼世界は、2項を削除して自衛隊を明記せよという「新9条」 の方向性でほぼ固まりつつあった。この動きに対して、一昨年の時点から、私は激しく批判を展開して論陣を張ってきたが、今、ようやく功を奏してきたというか、イデオロギー戦の戦場で敵を後退させることができたという感覚と自信を得ている。「新9条」論、すなわち左からの9条改憲論は、支持を失って退潮を始めた。

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# by yoniumuhibi | 2017-12-23 23:30 | Comments(1)

『君たちはどう生きるか』と格差・貧困問題に対する日本人の態度

c0315619_14320911.jpg生活保護費削減の問題は、あいかわらずテレビ報道で取り上げられない。19日に議員会館で抗議集会が開かれているが、テレビ撮影は入ってなかったようだ。新聞記者は来ている。主催者はテレビ局に取材要請をしたのだろうか。集会には共産党と立憲民主党の議員が参加している。立憲民主党の議員の名前は載っていない。立憲民主党と枝野幸男のツイッターを確認したところ、やはり生活保護費の問題について一言もコメントを発していなかった。厚労省が「1割削減」を発表して2週間経つが、野党が目立った反対行動を起こしておらず、マスコミの関心が著しく低い。昨日(20日)になって、ようやく日弁連が「生活保護基準について一切の引下げを行わないよう求める会長声明」を出したが、記者会見を開いておらず、マスコミも記事にしていない。立憲民主党がこの問題に対して無視と沈黙を続けるのは異常だが、そうした立憲民主党の姿勢に対して、しばき隊や左翼界隈が何も言わず、黙認したまま素通りしているのも理解に苦しむ欺瞞的な光景に映る。普通であれば、例えば森友加計問題のときの民進党のように、党本部に官僚を呼びつけ、マスコミにカメラを回させ、糾弾する絵を夜のテレビで撒かせて人気取りをするものだ。

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# by yoniumuhibi | 2017-12-21 23:30 | Comments(4)

テレビが生活保護費削減の問題を報道しない - 有識者が声を上げない

c0315619_13531336.jpg生活保護費削減の件、厚労省が12月8日に発表(リーク)して10日以上経つのに、テレビ報道が一向にこの問題に焦点を当てない。17日放送のサンデーモーニングでも寸毫も触れられなかった。他の番組は無視しても、この番組だけは取り上げるだろうと期待していたので、裏切られた気分で暗鬱にさせられる。先々週から先週にかけて、テレビが毎日騒いでいたのは、年収850万円以上の会社員が増税になるという税制の問題だった。毎日毎日、同じ話題を同じパネルで長々と説明し、後藤謙次が、昔は自民党の税調が強かったが今は官邸が税制を仕切っているなどと、どうでもいいくだらない政界漫談を垂れて「解説」に代えていた。平日夜に生活保護の問題を取り上げるなら、報ステしかないだろうと思い、テレビの前で待っている。が、いつまで経っても放送されない。パンダの話と貴乃花の話で埋め、自民党の憲法改正案に少し触れて、残りは北朝鮮の話で流し、今年は納めにするのだろうか。生活保護費の問題は、憲法25条に関わる問題だ。国が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」が切り下げられようとしている。国民生活にとってきわめて重要な問題なのに、テレビ報道の関係者が故意に目を背けている。異常な風景と言うしかない。

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# by yoniumuhibi | 2017-12-19 23:30 | Comments(2)

敵基地攻撃能力から核武装へ - 安倍晋三の前に屈服して沈黙のマスコミ

c0315619_16473905.jpg射程900キロ超の長距離巡航ミサイルの導入を防衛省が決め、来年度予算で調査費を計上した件が報道され、マスコミで少しだけ話題になっている。これは敵基地攻撃能力の保有であり、自衛隊の専守防衛の逸脱ではないかと懸念を示す声が、ほんの少しだけ微かに聞こえる。具体的な装備の内容は、F35Aに搭載する射程900キロのミサイルで、現在の自衛隊機のミサイルの射程の5倍を超える距離になり、北朝鮮の大部分と中国の沿岸部が攻撃範囲に入ることになる。小野寺五典は、これはあくまで日本を防衛するための装備で、敵基地攻撃を目的としておらず、専守防衛に反するものではない、と言っていて、懸念を打ち消す発言をしている。報ステの後藤謙次は、議論が少なすぎるとコメントしていた。国会で議論がなく政府の説明が不十分だと後藤謙次は言いたいのだろうが、国会で議論がないのなら、どうしてマスコミがこの問題を詳しく特集して問題提起しないのだろうと、テレビの前で苛立つ気分を押さえられない。明らかに、今回の措置は敵基地攻撃能力保有の第一歩であり、改憲保守側の長年の悲願であった政治目標の達成であり、自衛隊の専守防衛という国家原則の破壊なのに、その恐ろしい政治的意味についての指摘と警鐘がない。

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# by yoniumuhibi | 2017-12-14 23:30 | Comments(6)

素直に喜べないノーベル賞 - 暴論の誹りを承知で敢えて違和感を言う

c0315619_17115809.jpg昨夜(12/11)の報ステでは、ノーベル平和賞の授賞式で演説したサーロー節子が大きく取り上げられ、オスロでの単独インタビューの映像が紹介された。今日の朝日には13面に講演の全文が載り、39面に会場を取材した関連記事が載っている。1面には「核兵器は必要悪ではなく絶対悪」だというサーロー節子の言葉が見出しで載り、16面の社説もこの問題を書いている。サーロー節子のスピーチはとても感動的で、そして歴史的なものであり、文科省が後で何らか教材にするかなとも思ったが、NHKがニュースで全く取り上げずに無視したことを考えると、政府の姿勢が窺え、安倍政権では無理だろうなとも悲観する。昨夜放送されたインタビューでは、核兵器廃絶がどれほど遠い理想だと言われても、そこへ一歩一歩近づくことができるのであり、現実を変えて行くことができるのだから、それを信じて一人一人が努力することが大切なのだと視聴者を励ましていた。力強い訴えであり、そして、丸山真男の「現実主義の陥穽」のロジックを思い起こさせる真理の主張で、聞く者の心に勇気と律動を与える言葉だった。サーロー節子のことはこれまで全く知らなかった。突然、登場した感がある。90年代になって突然出て来たベアテ・シロタのようだ。救世主が出現したように感じる。

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# by yoniumuhibi | 2017-12-12 23:30 | Comments(6)

親友を庇って官憲から守った思想犯の吉野源三郎 - 古在由重の証言

c0315619_18090008.jpg吉野源三郎が、『君たちはどう生きるか』を出す6年前、治安維持法違反で逮捕された経歴の持ち主であることについては、12月2日の朝日の天声人語でも簡単に触れていた。丸山真男は「回想」の中で次のように書いている。「吉野さんには、私の場合などとは比較に絶するような特高体験があります。吉野さんが取調べの際に、まったくのフィクションを供述用に『創作』してまで、親友に特高の手がのびるのをくいとめた、という話は(略)、私は古在(由重)さんから直接うかがって感動しました。(略)けれども、それほど毅然としていた吉野さんでさえ、はじめ陸軍少尉として軍法会議にかけられたときには、どこまで自分がこの試練に耐えられるかに深刻に悩まれたようです」(岩波文庫 P.323)。吉野源三郎は、東京帝大を卒業した後、1925年(26歳)に陸軍の近衛野砲兵連隊に一年志願兵として入隊している。一年後に除隊したが、予備役だったため、1931年(32歳)に逮捕されたとき、通常の刑事司法手続きではなく軍法会議にかけられ、1年半の間、陸軍刑務所(現在の渋谷公会堂付近)に収監された。沖縄の米兵が性的暴行事件を起こすと軍法会議にかけられて判決を受ける。憲法9条が改正され軍法会議が設置されると、こうした戦前の日常が復活し、予備役は裁判所ではなく軍事法廷で裁かれる点を留意すべきだろう。

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# by yoniumuhibi | 2017-12-07 23:30 | Comments(1)

池上彰や斉藤孝が『君たちはどう生きるか』の宣伝に便乗する欺瞞

c0315619_16374505.jpg12月2日の朝日の天声人語に『君たちはどう生きるか』のことが書かれている。朝日は11月3日の社説でもこの本を取り上げていた。マガジンハウスが出したマンガ本は、現在100万部の売れ行きとなっていて、この本の人気は社会現象になっている。私は前の記事で、本がブームになっている割にマスコミで話題になってないと書いたが、その認識は間違っていたようで、TBSの「王様のブランチ」(11/18)やNHKの「おはよう日本」(11/26)などのテレビ番組で紹介されていて、それが宣伝効果となってさらに販売部数を伸ばしているようだ。私がどうしてこの本のブームについてマスコミ報道の不足や無視を感じたかというと、日頃接しているテレビ番組である、NW9、クロ現、報ステ、サンデーモーニング等々に取り上げられてなかったからで、きっと官邸の監視統制の目が光っていて、報復を恐れて避けているのだろうと疑っていた。どうやらそれは邪推だったようで、いずれこれらの番組でも特集されるに違いない。だが、今のこの本のブームと出版マスコミ業界の便乗と喧伝には、私は率直なところ首を傾げてしまう。池上彰とか斉藤孝とか掘江貴文とか、この戦後民主主義の古典とは真逆の陣営に属するところの、まさに敵の思想の猛者である俗物たちが、ぞろぞろと登場して囃し立てている風景は異様で我慢できない。

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# by yoniumuhibi | 2017-12-05 23:30 | Comments(2)

補遺 - マルクスの「生産関係」と「交通形態」、平田清明の「交通」論

c0315619_12565865.jpgマルクスの生産関係の概念は、所有と階級の契機を含んだタテの社会関係の意味を持つ。吉野源三郎が『君たちはどう生きるか』で論じている「生産関係」は、平面的なヨコの繋がりで、商品の中に凝縮された社会的分業の総体を意味している。が、丸山真男は「回想」での解説において、これぞ「資本論入門」の極意であり、見事な説明の表現であると絶賛していて、「生産関係」の概念の異同については特に触れていない。それはなぜだろうと考え、前回のような仮説を立ててみた。その仮説にたどりつく前に想起したことは、もともとマルクスの生産関係の概念が、あの史的唯物論の公式 - 『経済学批判』の序言に示された「導きの糸」 - として完成する前には動揺と変遷を遂げており、「交通形態」という言葉が使われた時期もあったという理論史の事実だった。初期の『ドイツ・イデオロギー』では、「交通形態」という語が頻出し、そして同時に「所有形態」という語も登場する。国民文庫版の訳者である真下信一が、序文で次のように解説している。「マルクスとエンゲルスによって仕上げられた理論の若干の基礎概念をあらわすために、『ドイツ・イデオロギー』のなかでつかわれた用語は、その後彼ら自身によって、それらの新しい概念の内容をもっと精確にあらわす別の用語に取り換えられた」(P.11)。


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# by yoniumuhibi | 2017-11-30 23:30 | Comments(1)

『君たちはどう生きるか』における「生産関係」の問題について

c0315619_12465271.jpg『君たちはどう生きるか』の中の「生産関係」について、一点、指摘をしておきたい。この言葉は、作品全体の中できわめて重要なキーワードで、主人公が「コペル君」というニックネームを持った理由と密接に関係している。その物語の経緯については、あらためて紹介する必要もないだろう。コペル君が発見して名づけた「人間分子の関係 編み目の法則」の直観と報告が、おじさんによって概念的に整理され、それが経済学の「生産関係」であり、社会科学で一般的に使われている術語であることが説明される。丸山真男は付録の「回想」でこう書いている。「コペル君が小さい頭で、いかにも幼いコペル君にふさわしい推論を積みかさねて『法則』に到達する過程が、すこしも『大人』の立場からの投影という印象を与えず、きわめて自然に描かれているのにも感心しますが、おじさんがこの手紙を承けて、そこから一方ではコペル君をはげましつつ、他方で『人間分子の法則』の足りないところを補いながら、それを『生産関係』の説明まで持ってゆくところに読みすすんで私は思わず唸りました。これはまさしく『資本論入門』ではないか。(略)資本論の入門書は、どんなによくできていても、資本論の入門書であるかぎりにおいてどうしても資本論の構成をいわば不動の前提として、それをできるだけ平明な表現に書き直すことに落ち着きます」(P.312-313)。

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# by yoniumuhibi | 2017-11-28 23:30 | Comments(1)

『君たちはどう生きるか』のブーム - 若者にはこう読んでもらいたい

c0315619_14332614.jpg吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』がマンガ化され、ベストセラーになっている。amazonの総合ランキングで1位になっていて、岩波文庫のオリジナルの方も文庫のランキングで上位に入っている。先日、宮崎駿が新しいアニメの題名を「君たちはどう生きるか」にすると発表したことも、このブームに拍車をかける一因となった。若者の間での宮崎駿の影響力は圧倒的だ。ただ、出版の世界で大きなトレンドになっているほどには、マスコミがこの状況を話題にしていない。テレビの報道番組で本が紹介される機会に接しない。やや奇妙な感じがするし、安倍晋三と菅義偉が統括支配する世界だから不思議ではないなと思い直したりもする。この古典は、日本の戦後の教育の根幹に位置する作品だ。戦後民主主義を担う精神のカーネルを養成するべく、中学生になる子どもに読ませてきた教育書で、倫理を学ぶ物語である。われわれの世代において、子どもの頃、この本は空気のようなもので、周囲には「おじさん」のような教師が少なからずいて、われわれにコペル君のような精神的成長を促していた。私もその教育過程の通過儀礼を受けた一人だけれど、当時、この本に特に大きく影響を受けたという実感はない。なぜなら、周囲の環境が、学校も、マスコミも、悉く「君たちはどう生きるか」的であり、吉野源三郎の思想を基調とし骨格とした倫理的空間だったから。

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# by yoniumuhibi | 2017-11-25 23:30 | Comments(3)

山口二郎による護憲派の罵倒 - 不当に貶められてきた護憲の立場

c0315619_16160794.jpg前回、山口二郎が2004年に日本政治学会で発表した基調報告の一部を紹介した。その中で、山口二郎は社民党(社会党)の護憲の主張を罵倒し、共産党については存在の価値のない政党だと斬り捨てていることが確認された。山口二郎のこの20年間の言論を見ると、護憲の立場に対する悪罵と侮辱に徹し、憲法9条を守れと唱えてきた社会党や戦後民主主義に対する軽蔑と排斥で一貫していることが分かる。一つ一つ検証して証拠を挙げよう。手元に2004年刊の岩波新書『戦後政治の崩壊』がある。その冒頭、こう書いている。「2003年秋の総選挙では(略)土井たか子が敗北の責任をとって社民党党首を退いた。(略)土井の挫折は、憲法第九条をめぐる帰依と怨念の両面の風化を意味している。『頑固に護憲』を貫いた土井は、九条に対する信仰を体現した政治家であった。戦後憲法ができて間もない五十年代、左派社会党の指導者が『青年よ、銃を取るな』と叫べば、平和を求める国民から澎湃たる支持が沸きあがった。ところが、実際に青年が銃を持って海外に出動している今、社民党は見る影もなく衰弱している。護憲というメッセージが国民に対する訴求力を失ったことは明白である」(P.ⅰ-ⅲ)。「もはや憲法は政治家がおのれの信念をかけて論ずべき崇高なテーマではなくなった」(P.ⅳ)。

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# by yoniumuhibi | 2017-11-22 23:30 | Comments(2)

共産党を排除した山口二郎 - 「政治改革」とは何だったのか

c0315619_17100184.jpg11月17日の朝日新聞オピニオン面に「ロシア革命100年」と題した不破哲三のインタビューが載った。その中でこんなことを言っている。「80年に一部の野党が『共産党を除く』という原則を唐突に打ち立てました。(略)共産党排除という異様な政治体制が34年続きました。それ以前はマスコミでも、ひとつの政党として自然体で見られてきました」。この事実認識は具体的にどういう中身を指しているのだろうか。もし、「34年続きました」という指摘が現在も進行中であるという意味なら、「80年」は83年ということになり、「80年」ではなく「80年代」とするのが正確だったという説明になる。もし言葉どおりに「34年続きました」の起点が1980年であるなら、その共産党排除の政治体制は2014年で終了したという捉え方になる。2015年夏に安保法制の政治戦があり、それを契機に「野党共闘」の政治が始まる経過があるので、不破哲三はその文脈で時間軸を整理しているのかもしれない。80年に共産党を排除した「一部の野党」とはどの政党を指すのだろうか。社会党だろうか。確かなことは、この時期に自民党政権に対抗する野党の共闘態勢のあり方が変わり、社共の革新統一戦線が崩壊し、社公民路線にリプレイスされたということである。不破哲三はその事実を言っているように聞こえる。

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# by yoniumuhibi | 2017-11-20 23:30 | Comments(4)

小選挙区制に八つ当たりして失敗の責任を転嫁する内田樹と中野晃一

c0315619_15424044.jpg14日の毎日の記事で内田樹が総選挙を総括する意見を上げている。「まず感じたのは小選挙区制という制度の不備である」と書き、小選挙区制に対する不満をぶちまけている。この主張は、投票結果が出た直後に中野晃一が言っていた。どうやら、安倍晋三が圧勝した結果に苛立っている文化人たちの間で、小選挙区制に対する批判が共通の問題意識になっているようだ。昨年、トランプが勝利した米大統領選の報道を受けて、文化人たちの間で、没落した中間層に夢を抱かせないよう上から説教を垂れようとした思想運動が起こったことを思い出す。ユニクロを着て鍋をつついて我慢せえと清貧の心構えを垂れていた。年末から正月にかけて、上野千鶴子、小熊英二、長谷部恭男、杉田敦などが、この線に沿って同じ言説をマスコミで披露した。アカデミーの世界は狭い。どこかで身内で顔を合わせて世間話をしているうちに、こういう安易で傲慢な認識と結論になったのだろう。トランプ的なポピュリズムとファシズムを阻止するためには、大衆に幻想を抱かせてはならず、中産層に復活の夢を諦めさせなくてはいけない、われわれ岩波文化人が愚かな大衆を教導して自覚を促そうと、そういう「使命感」で一致したのに違いない。今回は、安倍圧勝の総選挙を受けて小選挙区制の見直しが主題になり、年末から年始の大手紙のメインの論調になるのだろうか。

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# by yoniumuhibi | 2017-11-16 23:30 | Comments(2)

ロシア革命から100年 - 20世紀の資本主義国の庶民を守った防波堤

c0315619_15014624.jpgロシア革命と社会主義について、もう一つ論じておかないといけない問題がある。それは、20世紀にその存在があったから、われわれは幸福な人生を送ることができたという間接的意義だ。世界が二つに分かれた片方の内側は、どうしようもなく悲惨で暗鬱なもので、その住人に苦難と忍耐と絶望を強いるものだった。スターリンの恐怖支配と暗黒政治の犠牲者は2千万とも3千万人とも言われている。毛沢東とポルポトを足せばどれくらいの数に上るか分からない。ゴルバチョフが登場してすぐの末期ソ連を旅した経験があるけれど、そこで目撃した人々の疲労感と苦悩と憔悴の表情を忘れられない。ソ連の統制と欺瞞と貧窮に疲れ果て、社会主義を厭うて恨んでいた。あのとき、渓内譲は岩波新書の新刊の中で、ソ連が崩壊することはないだろうと楽観的な予想を書いていたが、現地を見た私は間もなく終焉が近いことを確信した。20世紀後半、そこに、私の人生の半分があり故郷がある。小学校社会科の教科書では世界地図は二つに色分けされ、青色と赤色に塗り分けられていた。社会主義の体制下で生きる人々は塗炭の苦しみを強いられ、われわれはそこから自由で、人生に希望の持てる時代を送ることができたけれど、真実を直視し意味を総括すれば、彼らの犠牲のおかげでわれわれは幸福な環境を与えられたと言い得る。

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# by yoniumuhibi | 2017-11-13 23:30 | Comments(3)

ロシア革命から100年 - 資本主義が続くかぎり社会主義も生き続ける

c0315619_17173669.jpg丸山真男は今から60年前、論文『「スターリン批判」における政治の論理』の中でこう言っている。「フランス革命についても、歴史学的な解釈こそ今日でっも盛んに行われているが、そうした学問的論争が直接に政治的意義を帯びた時代はとっくに過ぎ去った。フランス革命とそれにつづく干渉戦争の過程で冒された数多くの愚行や残虐をどんなに力をこめて弾劾する人々も、人権宣言の諸原則が今日文明世界の公理として通用していることを承認する(略)。ところが、ロシア革命とその諸々の連鎖反応については、残念ながら今日の世界はまだその与えた心理的ショックから回復するだけの時間的距離をもっていないようである。それは革命後四〇年というような自然的時間についていうのではない。(略)むしろ問題はロシア革命が投げかけた挑戦に対して、今日の世界が - ソヴェート同盟を中心とする社会主義世界を含めて - いまだに十分な決着を与えていないこと、従ってそこに含まれた諸々の争点が今日なお生々しい現実性を帯びてわれわれの全存在を揺るがしていることから来ている。(略)ラスキのいうロシア革命の『莫大な成果』と『莫大な代償』はいまだにひとびとの心の中に適当な平衡点を見出しえず、利害と立場と局面の衝撃とに応じて、あるいはプラス面が心理的に自乗され、あるいはマイナス面が大映しにされる」。(『現代政治の思想と行動』 旧版 P.306-307)

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# by yoniumuhibi | 2017-11-10 23:30 | Comments(5)


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